ひとつ先のシーンでさえ、読み手の予想を上回っていく展開。細部まで計算しつくされたストーリーに定評のある、「ノノノノ」や「極々のブリュンヒルデ」でおなじみ「岡本倫」先生の初連載作品です。


 『エルフェンリート』は思わず目を背けたくなるようなショッキングな描写で話題になり、地上波放映時には大量の残虐シーンを修正・カットされた上で放送されるという伝説を生み出しました。

【※一部、ネタバレの内容を含む可能性が御座います。ご注意下さい。】

■本作の舞台は「鎌倉」

 いつからか、日本各地で生まれたばかりの幼児の頭部に二本の角が生えるという怪現象が起き始めます。それらはディクロニウスと呼ばれるミュータントで、人類を滅亡させる危険性を孕む存在として、一部の限られた人間だけがその存在を知り、そして恐れられていました。ディクロニウスについては完全に機密扱い。
存命する個体は施設に隔離されて研究されていました。しかしある時、その内の1体のディクロニウスの脱走を許してしまいます。

 「ナナ」は研究所が管理しているディクロニウス。7番と呼ばれています。研究所室長の「蔵間」の事を父親だと思っており、逃亡したディクロニウス「ルーシー」の捕獲を命じられ、パパのために健気に頑張るのです。

■人間を襲わないディクロニウス

 「ナナ」は、ディクロニウス特有の頭部に生えた2本の角、ショートカットのピンク色の髪に透き通るような紅い瞳の少女です。
通常、ディクロニウスは人間に対する攻撃本能が強く、些細なきっかけで人を殺めてしまうほど衝動的で不安定。しかし「ナナ」は例外で、とても大人しい彼女は人にベクターを向けることはありません(ベクターとはディクロニウスの持つ見えない特殊な腕のこと。殺傷能力が高く極めて危険。)。性格も明るく一生懸命で、「マリコ」や「ルーシー」などの他のディクロニウスとはまったくタイプが違います。

 蔵間の命令に対し「人は殺せない」と答える通り、善悪の区別もしっかりしており、後に鎌倉海岸で凶暴なSAT隊員「板東」に遭遇した時も、涙を流しながら「人と戦えない」と伝えるなど、非常に心の優しい女の子です。


■健気な少女

 「ルーシー」を捕獲するために初めて研究所の外に連れて行って貰った「ナナ」。可愛いワンピースでおめかしし、ウキウキしてはしゃぐ姿はとても可愛いです。出発する前に「蔵間」が締めていたネクタイが欲しいと言って譲って貰うのですが・・・。何を思ったのかそれを頭に結んでしまいます・・・。その姿はまるで酔っ払い(笑)。彼女にはおしゃれなリボンにでも見えたのでしょうか?その天然さがたまりません。
しかし、「蔵間」の期待に答えようとするあまり、「ルーシー」を深追いして重症を負ってしまいます。人を想う健気さは本作の中でも随一ですね。

■箱入り娘・・・?

 「ナナ」は、一般常識に乏しく、とんちんかんな受け答えをしょっちゅう繰り返します。それに加えて見栄っ張りな性格でもあるので、からかわれることもしばしば。特に「まゆ」とは相性が良いようで、彼女とのかけあいはほのぼのすること間違いないでしょう (まゆは、本作の主人公「コウタ」の住む楓荘に住まわせて貰っている身寄りの無い少女です)。

 そして、怪我を負った「ナナ」は役に立たないと殺処分されることに・・・。
それをためらった「蔵間」によって逃されます。その際、大量の札束を持たせてくれるのですが、彼女にはお金の価値が分からず、鎌倉周辺をふらふらとさまよっていました・・・。

 墓地で犬の散歩をしていた「まゆ」とばったり会い、親しくなります。しかし、お金を焚き木代わりにする「ナナ」の行動にビックリ。「まゆ」に「お金の事を何も知らない」と言われ、むっとして『馬鹿にしないで!知ってるよ、それくらい・・・。』と強がるのですが、「まゆ」に「呪文を知らなければ、寝てる時にお金が合体して襲いかかってくる」という嘘をつかれ、その言葉を本気で信じて「まゆ」に泣きつきました・・・。
余談ですが、後に夢の中で燃やされたお金達に復讐されて裸磔の刑にされてしまいます(笑)。

 『ディクロニウスは人類を滅ぼす凶悪性を持っている。』という大前提を覆すキャラクター「ナナ」。人類を滅ぼすために生まれてきた存在でありながら、優しくて一生懸命な所、ちょっと抜けた天然さに惚れ込んだ視聴者も多かったのではないでしょうか?まだ見ていない・・・という方は、ぜひご自身の目で『エルフェンリート』、そして「ナナ」の健気で一生懸命な魅力をご堪能下さい。

【原稿作成時期の都合により、内容や表現が古い場合も御座いますがご了承下さい】

★記者:真夏日(キャラペディア公式ライター)

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