本サイトでも既報の通り(記事参照)、"異常人気"を誇るTBS系テレビアニメ『けいおん!』が、その勢力を維持したまま放送各地で最終13話を迎えつつある。人気のバロメータは音楽CDの売り上げだ。

高校の軽音楽部を舞台に学園祭のライブを目指すストーリーとあって、主題歌、劇中歌、キャラクターソングCDを連発しているが、いずれもオリコンチャート上位を賑わせている。

 公式グッズの定番ともいえるCDだけでなく、作中でキャラクターが使用する実在の小物までもがファンの注目を浴び、売り上げを伸ばしているという。各回放映直後に「澪(ヒロインのひとり)が持っていたピンクのバッグはTommy Hilfigerだ」などという調子で特定し、購入に走る現象が続いているのだ。

  6月に入って動きが活発なのは、作中でドラム担当のヒロイン・田井中律が愛用しているLAMYの「サファリペンシル イエロー L118」。小売価格は2,625円と、シャープペンシルとしてはやや高めだが、Amazonや楽天など通販サイトでは軒並み品切れとなっている。次回入荷予定は6月末だ。

「5月の1週目から当該商品の動きが急に活発になりました。5月、6月の売り上げを前年度と比較すると2.5倍。次回出荷本数の1/3にあたる500本はアニメグッズショップ向けの特別枠です。こういったグッズを扱っているお店からのオーダーは従来にはなかったことです」(LAMY輸入元)

 AKG(アーカーゲー)のヘッドホン「K701」がバカ売れと、ネットニュースで大きく取り上げられたのも記憶に新しい。一番人気のベース担当・秋山澪のお気に入りとあって、彼女と同一化したいファンがこぞって買い占めたようだ。正規の輸入元によると「4~5月がやや品薄になったのは確かです。

もとよりAKGのフラッグシップモデルとして売れ行きは好調であり、どこまでが『けいおん!』の影響によるものか断定はできませんが、+αはあったのではないでしょうか」とのこと。

 アニメ製作側が製作費を回収するための「ライセンス商品」ではない、「キャラクターが愛用する何か」が、ここまで反響を呼んだのは史上初ではないだろうか?

『けいおん!』の経済効果はこれだけにとどまらない。一般消費者にとっては高額商品の領域にあるエレキギター、ベース、キーボードにまで影響が及んでいる。

 最初に楽器業界を驚嘆させたのは、フェンダージャパンのベース「JB62/LH/3TS」の大ヒット。秋山澪の使用モデルだが、「『けいおん!』の放送開始後、4月末~5月間での2週間あまりで例年の4~5ヶ月分が売れました。現在、通常の2年間分に相当する数を工場に発注している状況です」(フェンダージャパン発売元の神田商会)というほどの勢いがある。

左利き用ギター、ベースの専門店である谷口楽器、老舗として名高い山野楽器銀座本店でも、6月分として入荷した2本がたちまちはけてしまった。実は、これは毎月供給される通常生産分。納品には発注から4ヵ月を要するため、「通常の2年間相当数」が楽器店に入荷するのには、9月まで待たなければならない。店頭実勢価格75,000円前後の普及価格帯でありながら、市場に存在しない「幻のベース」となっているのが現状だ。生産本数が少ない左利き用である点を考慮に入れても、『けいおん!』のインパクトは相当大きかったものと見える。
後編へ続く/取材・文=有田俊、後藤勝[ヘッドルーム])



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