加藤ミリヤ 代表曲「ディア ロンリーガール」の10年後を描いた「リップスティック」/インタビュー

■加藤ミリヤ/New Single『リップスティック』インタビュー(1/2)

10年前、制服を着て苛立ちを隠せずにいたミリヤにとって、今、リップスティックは何を意味するのか――

加藤ミリヤを女子高生のカリスマへと押し上げた代表曲「ディア ロンリーガール」。その曲の10年後を描いたという話題の新曲「リップスティック」が到着した。2曲に共通するのは周囲と自分との関係や繋がり。女子高生だった時代から10年が経ち、社会も変わり、そんな中でもがいている女性たちの寂しさや虚しさ、願望を赤裸々にぶつけた曲だ。こだわりにこだわり抜いた結果、一度作ったものを白紙に戻し、イチから作り直したという本作。10年前、制服を着て苛立ちを隠せずにいたミリヤにとって、今、リップスティックは何を意味するのか。曲に込めた思いをたっぷり語ってもらった。
(取材・文/猪又 孝[Do The Monkey])

「リップスティック」の歌詞は自分のなかでは渾身の1曲と言いたい

――新曲は「ディア ロンリーガール」から10年ということで作った曲だそうですが、なぜ今回作ろうと思ったんですか?

加藤ミリヤ(以下、ミリヤ):とにかく自分の同世代に向けた曲を作りたいなと思っていて。そういう子たちが「自分の曲だな」みたいに思う曲って最近世の中にあまりないし、やるなら私だなと思ってたんです。

――これまでも同世代への曲はたくさん歌ってきたわけですしね。

ミリヤ:はい。そんなときにふと、「ディア ロンリーガール」から10年経ったなと気付いて。じゃあ、あの曲の10年後を書こうと単純に思ったんです。「ディアロンリーガール」は当時、自分の思っていることを唯々書いただけなんで、今回も自分が10年経って、どんなことに悩んだり、どんなことを思ってるか、自分の話を書こうと。

――この曲のテーマは、大きく言うと承認欲求だと思うんです。

ミリヤ:そうですね。直接的な言葉はないけど、今の時代を風刺したいところもあって。今だったらインスタグラムが人気だけど、誰かに「いいね」って言われたくて話題のお店に行って写真をアップするとか、みんな「自分はこうやって人生を楽しんでる」って演じてるような気がするんですね。でも私も自分を振り返ったときに、加藤ミリヤを演じてないわけではないなと思ったし、みんなに評価されたいとか、そういう気持ちがあるのはわかるなって。だから、それを悪いことだとは思わないんですけど、「でも、しんどくなるよね、たまに」みたいな部分があって。

――SNSに疲れてたり、翻弄されてたり。

ミリヤ:そう。大人だから弱音は吐かないし、カッコつけたいし、みんなから憧れられたい……でも、本当の自分ってわからなくなるときあるよね?みたいな。そういう歌なんです。

――今回の曲は、他人と比べて自分がどうかっていうことがひとつのテーマになっていますが、そういう意識は自分にもありました?

ミリヤ:それは20代になってからですね。23歳以降とか。

――他人と自分を比べるようになってきた?

ミリヤ:……ところがあると思います。今思うと、10代はそういうのはなかったですね。20歳くらいのときもなかった。その頃は、「私は私」っていう意識が強かったし、実際、そうやって歌にも書いてたし(笑)。比べるというか、「へー」って言いながらもちょっと気になるみたいな。でも、今はそういうのはないです。そこは超えました。

――違う意味で、自己を確立できてきたと。

ミリヤ:そう。でも、そうやって他人が気になる時期は絶対あると思うんですよ。

――他人から認めてもらいたくて、虚飾生活みたいな人たちもいるようですし。

ミリヤ:自分なりの幸せを見失いやすいんでしょうね。人それぞれ、価値観は違うのにブレるっていうか。それで「嫌になった」「疲れちゃった」みたいになってる子は私だけじゃないだろうって思って書いたんです。

――自分自身のことを書くわけだから、作詞はスムーズでしたか?

ミリヤ:それが全然スムーズにいかなくて。もともと「ディア ロンリーガール」も、絶対ヒットさせたいと思ってたから、どういう曲が良いのか超分析して、今でも忘れないけど6パターン歌詞を作ったんですよ。とにかく女子高生に刺さるように書こうと、周りからの意見を採り入れて完璧に戦略を練って書いたんです。それでああいう手応えがあったから、今回もチーム一丸となって作っていこうと制作を始めて。で、何パターンも書いたんですけど、途中で「やっぱり曲のイメージが違う」という話になって、1回全部白紙に戻して。スケジュールも仕切り直して、もう1回イチから作り直したんです。

――そんな苦労があったんですね。

ミリヤ:この曲で行こうと決まっても、最後の最後まで、この歌詞でいいのかとか、みんなの意見をギリギリまで聞いて、「じゃあ、ここ直す、ここ直す」って直しまくって書いたんで、自分のなかでは渾身の1曲と言いたいんです。

加藤ミリヤ 代表曲「ディア ロンリーガール」の10年後を描いた「リップスティック」/インタビュー
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赤いリップスティックはステージに立つ自分が無敵になるためのアイテム

――そんなふうにして出来上がった歌詞で、特にこだわった一節は?

ミリヤ:<かまってよ ほっとかないでもう 疲れるまであたしと遊んで>っていうのは、私っぽい歌詞というか、イケてるなと思います。<かまってよ>は、歌の中に入れづらい言葉だと思うから、歌詞として新しいと思うし。

――斬新ですよね。だけど、耳を奪うキャッチーな言葉だし。

ミリヤ:<あたしと遊んで>っていうのも、大人なんだけど子どもっぽいことを言う、みたいなところが面白いんじゃないかなって思います。あとは、<赤いリップスティックを纏う>っていう言葉が自分の中に出てきたときに「いいな」と思ったし、珍しくスタッフのみんなに「タイトルはリップスティックにします」ってメールしたんです。

――自分から送信することはあまりないんですか?

ミリヤ:ないですね。タイトルはいつも悩むし、「これは超良いだろう」と思うときにしか送らないから。でも、赤いリップスティックのなかに、いろんな感情が塊としてあって、それを塗って私たちは武装しているなと思ったんですよ。

――今のミリヤさんにとって口紅は武器だと。

ミリヤ:武器ですね、赤いリップスティックは。特に最近、ステージに立つ自分が無敵になるためのアイテムなんで。

――ちなみに、「ディア ロンリーガール」のときの口紅は?

ミリヤ:そのときは武器でもなんでもないですね(笑)。色も赤じゃなくてショッキングピンクだし。側というか、ラベルというか、見た目にこだわってるだけ、みたいな。

――女子高生のときは、口紅より制服が武器かもしれないもんね。

ミリヤ:そうですね。本当にそうだったと思います。

――「リップスティック」のミュージックビデオもこだわりの作品になってるそうですね。

ミリヤ:超渾身作なんです。監督はMOOCHOさんといって、ツアー映像とかをずっとやってもらってる長い付き合いの方なんですけど、曲を聴いてもらったときに「この曲はすごいパワーを持ってるし、ミリヤちゃんにとってすごく意味のある曲になるから、本当にちゃんとしたものを撮らないとダメだと思う」って初めて言われて。同じことを制作チームもカメラマンチームも照明チームも感じてくれていて、「良いものにしようね」っていう一体感がすごかったんです。

――どんな内容になっているんですか?

ミリヤ:自分のことを思って書いたので、加藤ミリヤのオンとオフみたいなテーマで作ったんです。今はファンクラブツアー中だから、ツアー中の自分を見てもらえるようなドキュメンタリータッチの映像になっていて。ステージに立っている赤リップで武装した加藤ミリヤの自分と、いち個人として表参道の人混みの中を歩いてる自分っていう。どっちも自分なんですけど、本当の自分はどれなんだろうって。きっとそれは私だけじゃなくて、どんな職業の人にも言えると思うから、見てくれた方は自分と重ね合わせてもらえたらいいなと思ってます。

加藤ミリヤ 代表曲「ディア ロンリーガール」の10年後を描いた「リップスティック」/インタビュー
リップスティック【通常盤】

2曲目「Never Call Me Again」はミックスがここ数年でダントツ1位くらいの出来

――2曲目「Never Call Me Again」は、サウンドが面白かったです。これはカントリーを意識したんですか?

ミリヤ:そこは(プロデューサーの)T.O.Mくんに聞かないとわからないですけど、私としてはテイラー・スウィフトの「We Are Never Ever Getting Back Together」みたいな質感をイメージしていたんです。だからカントリーっぽいのかなぁ。私の曲で言うと「UGLY」とか「People」まではいかないんだけど、でもアコギがメインになる曲にしたいって伝えて作ってもらったんです。
――すごくみずみずしいトラックですよね。

ミリヤ:そう。これはすごくお気に入りのサウンド。ミックスがここ数年でダントツ1位くらいの出来。ミックスでさらに超生まれ変わった曲なんです。

――歌詞はどんな思いを書いたんですか?

ミリヤ:「もう電話してこないで」っていう曲を書きたいなと思ったんです。片思いしていて、「なんかもういいや」と思ってるけど、電話がかかってくると気持ちが再燃して「やっぱり好きかも」となって、それを延々繰り返しちゃうっていう。そういう恋愛あるあるを書こうと。この曲を書いたのは1年以上前なんですけど、もともと気に入っていて、やっと入れられたんです。

――そんなに前に書いた曲だったんですか。僕はてっきり1曲目とリンクさせて書き下ろした曲なんじゃないかと思ってました。1曲目の主人公の恋愛事情だけにフォーカスした曲なのかなって。

ミリヤ:いや、違うんですよ。

――というのは、<あたしみたいな目立つタイプじゃない>とか<もっとおとなしい子がいいんでしょ>っていう歌詞が出てきますよね。そこにミリヤ感が出てるなぁと思ったから(笑)。

ミリヤ:あはは! 基本、私の曲は自分が主人公なんで、結果、自分が出ちゃってるんですけど(笑)。特に最近は自分が出ちゃう。

――でも、この一節があることで主人公が強がりなキャラだということがわかって曲の切なさが増すなぁと思ったんです。イケイケなんだけど、本当は甘えたいっていう感じが出てるから。

ミリヤ:そう! イケイケな子ほど奥ゆかしいんだよっていうことを世の中に伝えたいんです。おとなしい子は意外とすっごく遊んでるよ、みたいな(笑)。

――あはは。毒づきますね(笑)。

ミリヤ:けど、それってありますから。男子は騙されるな!って言いたい(笑)。

――今回の初回限定盤のDVDには「リップスティック」の制作背景を語るインタビューが収められていますが、着物姿が新鮮でした。

ミリヤ:「リップスティック」は思い入れの強い曲だから、それがどうやって出来上がったかっていうことが映像でも伝えられたらいいなと思って入れたんです。最近は着物にもハマッているんで、それも伝えられたらいいなと思って、着物姿で谷中の街を歩いて。この映像は「みぃ散歩」っていうのがサブテーマなんですけど(笑)、ちょっとシリーズ化したいなと思っていて。

――インタビューを? それとも「みぃ散歩」をシリーズ化?

ミリヤ:散歩のほうを。今回はカヤバ珈琲に出かけたんですけど、今は家にいる子が多いから、もっといろんなところに出かけてほしいんですよ。映像を見て、「ここに行きたいな」って思ってくれたら嬉しいし、今後もこういう面白い場所があるよって提案していきたいなと思っています。

――最後に、2015年はそろそろ終わりますが、来年の目標を教えてください。

ミリヤ:目標はやっぱり良いアルバムをつくること。今、制作しているんですけど、久々のオリジナルアルバムなので無意識的にモチベーションが高まってるし、チームの雰囲気もいいし。いい曲をどんどん作って、来年にはお届けできればいいなと思っています。

――インタビュー2へ

≪動画コメント≫


≪リリース情報≫
New Single
『リップスティック』
2015.11.25リリース

【初回生産限定盤】CD+DVD
SRCL-8953~54 / ¥1,556(税抜)
【通常盤】CD
SRCL-8955 / ¥1,204(税抜)

[収録曲]
1. リップスティック
2. Never Call Me Again
3. ディア ロンリーガール(DJ SHUYA & GAKUSHI REMIX)
4. リップスティック(Instrumental)
<DVD> ※初回生産限定盤のみ収録
1. A Story of “Lipstick” -Special Interview-

≪ライブ情報≫
【加藤ミリヤ 2016年コンサートツアー「タイトル未定」】
2016年8月4日(木)さいたまスーパーアリーナ

※その他開催予定都市(順不同)
札幌、帯広、青森、郡山、金沢、富山、長野、宮城、千葉、岐阜、静岡、名古屋、三重、京都、大阪、米子、岡山、広島、香川、福岡、長崎、熊本、宮崎

※詳細はオフィシャルファンクラブ「Loveheart Club」、
オフィシャルモバイルサイト「加藤ミリヤ/MILIYAH」にて後日発表

【“MILIYAH” LOVEHEART PARTY 2015】
2015年11月29日(日)福岡・Zepp Fukuoka

【テラスモール湘南 2015 Xmas Special Event「加藤ミリヤ スペシャルライブ Supported by J:COM」】
2015年12月20日(日)テラスモール湘南 ゲートスクエア(1F)

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