【大雪】の歳時記丸わかり!いよいよ本格的な冬支度のころ
【12月の和の暦・大雪】二十四節気、七十二候と歳時記コラム「銀杏(いちょう)」をお届けします。
日本古来の自然のリズム、二十四節気と、5日でめぐる日本の季節、七十二候をはじめ、旧暦の日付や雑節のお知らせです。
【師走の和の暦】
大雪 たいせつ|二十四節気──12月7日~21日
閉塞成冬 そらさむくふゆとなる|第61候──12月7日~11日
熊蟄穴 くまあなにこもる|第62候──12月12日~16日
鱖魚群 さけのうおむらがる|第63候──12月17日~21日
和暦コラム「銀杏(いちょう)」──和暦研究家 高月美樹
大雪 たいせつ|二十四節気
[大雪]──12月7日~21日
【旧暦】──11月14日~28日
「大雪」とは?-平地でも雪が降るころ
「大雪」の文字どおり、降雪地方では雪がしんしんと降り積もり、真冬の訪れが心身に感じられてくるころ。雪国では、雪の重みで木が折れないように雪吊りの作業が始まります。金沢・兼六園の雪吊りは冬の風物詩として有名です。
西高東低の冬型の気圧配置、すなわち冷たい空気からなる大陸の高気圧が優勢となるため、山沿いや平野部でも雪が降り、池や川に氷が張ることに。木枯らしはさらに強く、陽はさらに短くなり、各地で"冬将軍"が勢いを増します。
和の暦の「冬」は初冬→仲冬→晩冬と3段階で進みます。大雪と冬至の時季は「仲冬」。いよいよ本格的な冬の到来です。*記事の最後の暦図もご参照ください。
[仲冬]──12月7日~1月5日
[時候の挨拶]
この時季によく使われる挨拶文です。
初氷の候 はつごおりのこう
師走を迎え しわすをむかえ
新雪のみぎり しんせつのみぎり
閉塞成冬 そらさむくふゆとなる|第61候
[閉塞成冬]──12月7日~11日
【旧暦】──11月14日~18日
本格的な冬の到来
七十二候では、この日から「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」になります。
天地の気が塞がれ、いよいよ真冬が訪れます。この時季に降る冷たい雨を「氷雨」といいます。
厚く垂れ込めた雲に覆われた空を指す「雪曇り」が多くなるころ。木々の葉はすっかり散り、山だけでなく平地でも雪が降り始めます。生き物も活動を控えて冬ごもりに。この時季によく耳にする「冬日」とは、最低気温が0℃未満の日のこと。最高気温が0℃未満の日は「真冬日」といいます。
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[師走の季語]
世継榾(よつぎほだ)
年越しの夜、大きな薪を使って夜通し焚く特別な火、またはその薪のこと。地域により、大晦日に焚いた火を、正月中は絶えないようにするところも。旧年から新年へと焚き続けられる火を家の象徴とし、代々続いて発展するよう祈りが込められています。
熊蟄穴 くまあなにこもる|第62候
[熊蟄穴]──11月12日~16日
【旧暦】──11月19日~23日
動物たちが冬ごもりに入るころ
七十二候では、この日から「熊蟄穴(くまあなにこもる)」になります。
冬の寒さが厳しくなるころです。「蟄(ちつ)」はこもるという意味。「熊蟄穴」とは、寒く厳しい冬を乗り越えるべく、熊が穴にこもるころを指します。そのほかの動物たちも続々と冬眠に入ります。
この冬ごもりのあいだに熊は出産をするといわれています。冬ごもりは子熊を寒さや天敵から守る目的もあるようです。
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[師走の季語]
斧仕舞(おのじまい)
年内の仕事の終わりが見えてくる時期。「斧仕舞」とは、きこりの仕事納め。斧やのこぎりなどの道具を手入れして片付け、一年の無事を山の神に感謝します。一年の静かな終わりとともに、動物たちが冬眠し、木々が枯れ、森閑とした山の風情が重なります。
鱖魚群 さけのうおむらがる|第63候
[鱖魚群]──12月17日~21日
【旧暦】──11月24日~28日
鮭がふるさとの川へ帰るころ
七十二候では、この日から「鱖魚群(さけのうおむらがる)」になります。
北国の冬の風物詩のひとつといえるのが鮭の"里帰り"です。海で4年間を過ごした鮭は、産卵のために群れをなして生まれた川へとさかのぼります。これが「秋味」または「秋鮭」。お正月にいただく新巻鮭は、産卵期の秋鮭を加工したものです。
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[師走の季語]
節季候(せきぞろ)
年末に見られた江戸時代の門付け芸。12月になると笠をかぶり、赤い布で顔を隠した芸人が2、3人で組になり、割り竹を叩いて「せきぞろ、せきぞろ」と繰り返して踊り、米や銭をもらい歩きました。松尾芭蕉の句にも、「節季候の来れば風雅も師走哉」とあります。
和暦コラム|銀杏(いちょう)
多くの木々が紅葉した後、最後に色づくのが銀杏です。青空によく映える黄色の並木道は冬の風物詩ですが、イチョウ属は2億年前の地上に繁栄し、草食恐竜によって種を拡散させていた裸子植物。恐竜の絶滅とともに消滅し、今日ある種族が唯一の銀杏であることから「生きた化石」と呼ばれています。銀杏は中国の山中にわずかに生き残った銀杏の実が世界中に広まったもので、人の手によって植栽されたもの。日本には十世紀ごろに渡ってきたと考えられ、樹齢千年と推定される巨木があります。
現在、街路樹として植えられている日本の銀杏は57万本、樹種別では最多。欧州には、江戸時代に来日したドイツ人医師ケンペルによって紹介されたため、学名はginkgoとなっています。長くなった西日を受けて眩しいほどに輝やく黄金色の空に、心震えるような感動を覚えます。銀杏をうたった与謝野晶子の一句をご紹介します。
金色の小さき鳥のかたちして 銀杏散るなり夕日の岡に(与謝野晶子)
二十四節気とは
太陽が1年でひとまわりする道を「黄道」といいます。
二十四節気は、太陽が真東から昇り、真西に沈む「春分」を起点に、黄道を24等分したもの。
1年を約15日ごとに区切り、「立春」をスタートに、「雨水」「啓蟄」「穀雨」など、刻々と変化する自然を漢字2文字で表現しています。
春夏秋冬の区切りを意識させてくれる言葉として、時候の挨拶や手紙の書き出しにも使われます。
七十二候とは
二十四節気をさらに3つに分け、約5日ごとに名前をつけたもの。
七十二候は、もともと古代中国で生まれたものといわれています。やがて日本に渡り、江戸時代の暦学者が、日本の気候に合わせて改訂しました。
気候は地域やその年によって違いますが、四季の風情を楽しむ目安になってくれることでしょう。
監修・協力
高月美樹
たかつきみき●和暦研究家。婦人画報付録のダイアリーの暦全般と月の満ち欠けを監修。旧暦手帳『和暦日々是好日』を毎年制作・発行し、日本古来の知恵や美意識を生かした暮らしを提案。 LUNAWORKS主宰。
桂 裕子
かつらゆうこ●茶道裏千家正教授。季語と季節の銘を監修。東京・大田区にて茶道教室を主宰。小学館『にっぽんの図鑑』でも「ちゃのゆのこころ」部分などを監修。TVCM監修、ベラルーシをはじめ国外数カ国での茶道講習、紹介も行う。