「しょうぶ「あやめ」
 
じつは漢字で書けばどちらも「菖蒲」になります。
 
「あやめ」の名の由来は、「花びらに網目の模様があったことから、文目(あやめ)と呼ばれるようになったといわれています。
 
一方、「しょうぶ」はその昔、飛鳥・奈良時代には「あやめぐさ」と呼ばれていた歴史があります。「しょうぶ」を「あやめぐさ」と呼ぶようになった理由は諸説ありますが、「しょうぶ」を使った邪気払いの儀式をしていた女性を「あやめ」と呼んでいたことが理由といわれています。
 
このように複雑な歴史と成り立ちがある「しょうぶ」「あやめ」ですが、決定的な違いは、「しょうぶ」がショウブ科であるのに対し「あやめ」はアヤメ科
 
そしてまた姿の似ている「はなしょうぶ」や「かきつばた」もアヤメ科に属しています。
 
それぞれの違いをイラストで見ていきましょう。

しょうぶ
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◉しょうぶ / 菖蒲[ショウブ科]
・葉につやがあり、香りが強い
・葉の基部は淡い紅色を帯びている
・池沼やため池など水辺に群生
・花は淡い黄緑色の楕円形
・5〜7月に花が咲く

あやめ
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◉あやめ / 菖蒲、文目、綾目[アヤメ科]
・花びらの根元に網目模様がある
・葉脈は目立たず、細長い
・畑や草原など乾燥した場所に群生
・5月上旬に花が咲く

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◉かきつばた / 杜若[アヤメ科]
・花びらの根元に白い模様がある
・葉脈が目立たず、葉の幅が広い
・湿地に群生
・5月中旬に花が咲く

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絵=山田恭子

◉はなしょうぶ / 花菖蒲[アヤメ科]
・花びらの根元に細長い黄色の模様がある
・葉は面に1本、裏に2本の葉脈がある
・乾燥地や湿地に群生・花色は紫ほか、ピンクや白、ブルーもある
・5月中旬〜6月下旬に花が咲く
 
日本には「いずれあやめか、かきつばた」という慣用句もあります。「両者の優劣をつけがたい」という意味で美しい女性をたとえる表現として使われてきました。
 
「しょうぶ」「あやめ」「かきつばた」「はなしょうぶ」……いずれも初夏を彩る端正な花。日本古来の生活に深く根差した植物であることに違いはありません。