Viggo Mortensen Criticizes Peter Jackson

「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルン役V・モーテンセンがジャクソン監督を痛烈批判

映画「ロード・オブ・サ・リング」三部作でアラゴルン役を務めたヴィゴ・モーテンセンが、The Telegraph紙のインタビューの中で、監督のピーター・ジャクソンを痛烈に批判して物議を醸している。
「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルン役V・モーテンセンがジャクソン監督を痛烈批判

Text: Masako Iwasaki

映画監督ピーター・ジャクソンを痛烈に批判したヴィゴ・モーテンセン ©Jimi Celeste / WWD

映画「ロード・オブ・サ・リング」三部作でアラゴルン役を務めたヴィゴ・モーテンセンが、The Telegraph紙のインタビューの中で、監督のピーター・ジャクソンを痛烈に批判して物議を醸している。

三部作の製作中は様々なトラブルが次々と発生し、それをカバーするためにジャクソンは湯水のように金を使ったという。「彼は2000年12月に三部作すべての撮影を終えたと公式に発表していたけれど、実際のところ二作目、三作目はめちゃくちゃだったよ。ずさんなんてものじゃなかった。全然完成していなかったんだ。何度も大がかりな再撮影をする必要があった。一作目があそこまでヒットしていなければ費用を出してもらえず、二・三作目はビデオスルーされていただろうね」。キャストたちは混乱極まる現場に何度も呼びつけられ、数知れないほどの追加撮影に付き合わされたという。「まったく、正気の沙汰じゃなかったよ」とモーテンセンは当時の様子を振り返る。

そして、批判の矛先はジャクソンの“オタク気質”に向けられた。小学生の頃から自主製作を始めたジャクソの映画作りへのこだわりはつとに知られているが、最新技術に次々と手を出す“ハイテク・オタク”としても有名だ。一作目では実在の風景をバックに俳優が演技する、純然たる「ロケ」が行われていた。「それは壮大なものだったよ。でも、ピーターのCGIへの興味と依存が膨らむにつれ、そういった撮影は徐々に姿を消していったんだ」。

「ロード〜」以降、モーテンセンは登場人物のキャラクター本位の作品を意識的に選ぶようにしている。そして、ジャクソンにはかつてのように、小規模ながらも高品質な作品を作るフィルム・メイカーに戻ってほしいと願っている。

「(三部作の後)きっと彼はニュージーランドを舞台にした『乙女の祈り』みたいな作品を作ると思っていたんだ。でも、結局撮ったのは『キング・コング』に『ラブリー・ボーン』だろ。問題は彼がこの作品に9000万ドルの予算をかけたってことだ。1500万ドルでやるべきだったよ。特殊効果はランプの精みたいなものだ。彼はそれに囚われすぎているよ」。

ジャクソンは「ロード・オブ・ザ・リング」の前日譚にあたる「ホビット」シリーズでも引き続き監督を務めている。「ホビット 思いがけない冒険」(2012)は全世界で興行収入10億ドルを越える大ヒット作となり、続く「ホビット 竜に奪われた王国」(2013)も9億5千万ドルを記録した。今年12月には三作目の「The Hobbit: The Battle of the Five Armies(原題)」が公開される。いずれも3億ドル前後の製作費がかけられており、最新技術が惜しみなく投入されている。

「ピーターは幸せだと思うよ」と、モーテンセンは他人事のようにつぶやく。

潤沢な資金を武器に、思いのままに映像表現を突き詰めることができるジャクソンは、映画人としては確かにこれ以上ないほど恵まれていると言えよう。しかしそこには、「カネをかければ良いものが作れるのか」という、創造活動にはつきものの疑問も浮上する。

低予算で作られても、見る者の心を鷲づかみにする作品は数多く存在する。先週、残念ながら自ら命を絶ってしまったスウェーデンの映画監督マリク・ベンジェルールは、編集に長い時間をかけすぎたためにスポンサーに見放され、最後はiPhoneで撮影した映像で「シュガーマン 奇跡に愛された男」を完成させた。この作品は2013年のアカデミー長編ドキュメンタリー賞を獲得した。

映画作りに正解も不正解もない。しかし、またいつの日か、CGIを使わずマニアックにこだわり抜いたジャクソンの小規模作品を見てみたいものだ。