化粧品でよく聞くレチノールとは?その効果や使い方について解説。

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

ビタミンAの一種である「レチノール」は、様々な効果が期待できる美容成分です。認知度が高く、化粧品によく配合されていますが、使用の際に注意しておきたい点があります。そこで、具体的な効果や使い方についてお伝えします。

レチノールはビタミンAの一種

お伝えしたように、レチノールはビタミンAのひとつです。そのため、まずはビタミンAについて押さえておきましょう。
ビタミンAは油に溶けやすい性質を持つビタミンで、皮膚や粘膜を健康に保つ、抵抗力を高める、酸化を抑えるといった働きがあります。食事などによって摂取されたビタミンAは、体内で働けるように「活性型」と呼ばれる形に変わります。活性型には「レチノール」、「レチナール」、「トレチノイン(レチノイン酸)」の3種類があり、形を変えながら様々な働きをしています。具体的には、レチノールは代謝によってレチナールに変わり、最終的にトレチノインとなります。レチナールはレチノールに戻ることもありますが、トレチノインに変わると元に戻ることはありません。少し複雑な話になりますが、このように体内で様々な形に変わりながら、ビタミンAは色々な働きをしています。
そんなビタミンAですが、体内では合成されないため、意識して食事などから摂る必要があります。豚レバーやバター、卵黄、うなぎなどの動物性食品に多く含まれますが、緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンもビタミンAの前駆体として体内に貯蔵されるため、ニンジンやモロヘイヤ、ほうれん草なども意識して食べるようにするとよいでしょう。

また、肌に対しての美容効果を期待する場合は、化粧品などから取り入れることができます。そこで、次に美容成分としてのレチノールについてみていきましょう。

レチノールの効果

美容成分としてのレチノールには、次のような効果が期待できます。

〇ターンオーバーを促す

ビタミンAには細胞のターンオーバー(新陳代謝)を促す働きがあります。同じようにレチノールにもターンオーバーを促して古くなった角質を排出する働きがあるため、肌を滑らかに整えたり、シミやニキビ、ニキビ痕などを改善する効果が期待できるでしょう。

〇コラーゲンの生成を促す

コラーゲンの元になる線維芽細胞を活性化します。その結果、コラーゲンやヒアルロン酸の生成が促され保湿力が高まると、乾燥しやすい目元などのハリがアップしたり、しわが目立ちにくくなったりすることがあります。

〇皮脂の分泌を抑制する

皮脂の分泌を抑える働きがあります。そのため、皮脂の過剰分泌によるニキビの予防や毛穴の黒ずみの改善効果も期待できるでしょう。

このようにレチノールは、健やかな肌を作るベースとなる部分に働きかけるため、様々な肌トラブルの改善が期待できます。

レチノールとトレチノインの違い

美容成分としてよく知られるレチノールですが、トレチノイン(レチノイン酸)もシミやしわ、毛穴などの治療に用いられています。お伝えしたように、トレチノインは体内におけるビタミンAの最終形態です。具体的にはレチノールが体内で酸化すると、トレチノインになります。また、トレチノインが持つ生理活性の強さ(身体の他の物質に影響を与える力)はレチノールのおよそ50〜100倍で、レチノールは最終的にトレチノインに変換されることによって、効果を発揮するとも考えられています。
その効果の強さからトレチノインは医療用医薬品に分類されています。薬局や通販などでは手に入らないため、治療薬として使ってみたい場合は皮膚科などで処方してもらう必要があります。その際、しっかり説明を聞いて、副作用などについても理解することが大切です。

一方、レチノール配合の化粧品は薬局などでも手に入れることができ、普段のスキンケアに取り入れやすいアイテムです。そこで、レチノール配合化粧品を使う際のポイントを見ていきましょう。

レチノールの効果を得るために知っておきたい使い方のポイント

レチノール配合の化粧品を使用する際は、まず使用上の注意をよく読み、適切な使用量や使用頻度を必ず確認することが大切です。その上で、次の点にも注意しましょう。

〇保湿ケアを入念に

レチノール配合化粧品には油分が多く含まれるため、洗顔直後に使用すると化粧水などが浸透しづらくなります。そのため、洗顔後、化粧水などで肌を整えた後に使うのが一般的です。また、レチノールの使用後はターンオーバーが促されて肌が乾燥しやすくなるため、最後に保湿ケアを取り入れるとよいでしょう。

〇紫外線対策を徹底する

レチノールは紫外線に弱く、分解されやすいという特徴があります。紫外線の影響を避ける目的で、夜のみの使用が推奨されているレチノール配合化粧品もあるため、使うタイミングについてよく確認するようにしましょう。また、レチノール配合化粧品を使用する際には、日焼け止めや帽子、日傘などを活用し、紫外線対策を徹底することが重要です。なお、化粧品の保管場所にも気をつけ、高温になる場所や日光が当たる場所は避けるようにしましょう。

〇継続的に使用する

レチノール配合化粧品には、アイクリーム、化粧水、美容液など、様々な種類があります。目元の小じわが気になる場合はアイクリーム、ニキビ痕を改善したい場合には美容液、といったように肌の悩みに合わせて、気になる部分をケアできるアイテムを選びましょう。また、レチノールは美容成分であり、薬とは違って即効性を期待できるものではありません。効果を実感するまでに数週間〜数ヶ月間かかることもある点を頭に入れておきましょう。

レチノールを使用する際の注意点

最後に、レチノール配合化粧品を使用する際の注意点をお伝えします。

〇パッチテストを行う

初めて使用する化粧品は、パッチテストをして肌に合うか試すようにしましょう。

〇「レチノイド反応」について知っておく

レチノール配合の化粧品使用後に、肌に赤みが出る、乾燥する、皮が剥ける、といった症状が出ることがあります。これらは「レチノイド反応」と言って、肌の新陳代謝が急に促されることによって生じるものです。使い続けていると自然に治ることがほとんどですが、症状が強い場合やなかなか改善しない場合は皮膚科を受診しましょう。

〇複数の美容成分を併用したい時には使用上の注意などをよく確認する

より高い美容効果を期待して、ビタミンCやハイドロキノンが配合されている製品との併用を考えている人もいるでしょう。ただし、他の美容成分と併用することで、レチノールの作用が弱まってしまう可能性はゼロではありません。また、併用自体に問題はなくても、同時に使用するのを控えたり、使用する順番に注意したほうがよい場合もあります。そのため、複数の美容成分を同時に取り入れる際は使用上の注意を必ず確認し、心配なことがある場合には医療機関で相談することも検討しましょう。

レチノールを効果的に取り入れることで、様々な肌トラブルの改善が期待できます。レチノールを取り入れたいけれど肌に合うものがわからない人は医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • ビタミンAは油溶性ビタミンで、皮膚や粘膜を健康に保つ、抵抗力を高める、酸化を抑えるといった働きを持つ
  • レチノールはビタミンAの活性型の一つで、その他にレチナール、トレチノインがある
  • トレチノインの生理活性はレチノールを大きく上回るため、医療用医薬品に分類される
  • レチノール配合の化粧品を使用すると、肌質の向上や毛穴トラブルの改善といった様々な効果を期待できる
  • レチノール使用後は保湿ケアと紫外線対策を徹底することが重要
  • レチノールの副作用としてレチノイド反応が見られることがある
  • レチノール配合の化粧品に迷う場合は皮膚科で相談を