宮城県の地野菜・伝統野菜

2023.02.02

仙台白菜

「仙台白菜」は日本白菜のルーツのひとつです。日清戦争(明治27~28年)後、中国から戻った兵士により、仙台にも白菜の種が伝わったといわれています。しかし白菜は他のアブラナ科の野菜と交雑しやすいので、大正11年、宮城県農学校の教師が松島湾の馬放島を借りて、白菜の栽培・採種に成功しました。この白菜は「松島白菜」と名付けられ、その後さらに育種、品種改良された「松島純一号」「松島純二号」は東京や横浜に「仙台白菜」として出荷され、全国に知れ渡りました。葉が肉厚なのに柔らかく、甘味、旨みがあり、加熱調理するととろける食感です。一般的な白菜に比べアミノ酸を多く含んでいるため、生で食べても美味しく漬物にすると最高です。

仙台芭蕉菜

圃場  画像提供 : 株式会社今庄青果

仙台芭蕉菜  画像提供 : 株式会社今庄青果

仙台芭蕉菜  画像提供 : 株式会社今庄青果

葉が大きく芭蕉の葉に似ていることから命名された「仙台芭蕉菜」は、ナタネ類から分化した、つけ菜類の一種です。一般的なつけ菜よりも大きく50~60cmで収穫しますが、中には80cm以上になるものもあります。岩手や福島で栽培されている「芭蕉菜」はタカナの仲間で、「仙台芭蕉菜」とは別種になります。「仙台芭蕉菜」の由来は、参勤交代で来ていた伊達藩士が、江戸の三河島(東京都荒川区)で栽培されていた三河島菜の種を持ち帰って栽培したものが仙台芭蕉菜になったのではないかと言われています。独特の風味があり、熱湯で湯通ししてから漬物にします。

仙台伝統雪菜

仙台伝統雪菜 (仙台伝統野菜生産振興会)

ちぢみ雪菜

「仙台伝統雪菜」と「仙台雪菜」「ちぢみ雪菜」は全て別の品種になります。「伝統雪菜」は小松菜に近いつけ菜です。ほろ苦さが特徴で、寒さに当たると甘みが増し増す。春先に伸びたトウはぬめりがあり、独特の風味があります。あまり市場流通はしていません。「仙台雪菜」は、上杉鷹山公が広め、江戸時代に山形県米沢市付近で栽培されていた雪菜(遠山かぶと長岡菜などとの交配種の花茎)の栽培方法を真似て、在来の冬菜を栽培したのが、仙台雪菜のはじまりといわれます。「ちぢみ雪菜」は、タアサイの仲間のF1種です。

仙台長なす

仙台長なす漬け

ツヤのある黒紫色で先がとがっており、皮は厚めだがやわらかく、漬け物に向いています。長なすといっても8~10センチほどの小ぶりなのは、皮が硬くなる前に収穫されるためです。仙台藩主の伊達政宗公が文禄の役に出陣した際、藩士の1人が博多から原種を持ち帰ったのがはじまりといわれ、栽培歴は400年以上もあるなすです。仙台長なす漬けは自家用だけでなく、お土産としても知られています。

仙台曲がりねぎ

曲がりねぎの辛子酢味噌がけ

ねぎは一般には土を深く掘りまっすぐたてかけて栽培しますがある程度まっすぐ育ったねぎを一度掘り起こし、浅い土に角度をつけて寝かせて植える「やとい」という栽培方法でねぎを湾曲させます。この方法の発祥地である仙台市岩切地区余目は、地下水が地上近くにあり水はけが悪いため、土の湿度が高く一般的なねぎの栽培には向かなかったことから、この栽培方法になりました。発祥地の余目地区のものは「余目ねぎ」と呼ばれています。一般的なねぎとは異なり1年をかけて栽培されるため、肉厚で辛味が強いですが、加熱することで甘みが増します。

仙台曲がりねぎ

「曲がりねぎ」は一般的な「まっすぐなねぎ」とどう違うのか?

小瀬菜大根(こぜなだいこん)

小瀬菜大根  画像提供 : 株式会社今庄青果

小瀬菜大根 収穫  画像提供 : 株式会社今庄青果

小瀬菜大根 圃場  画像提供 : 株式会社今庄青果

小瀬菜大根 圃場  画像提供 : 株式会社今庄青果

宮城県加美郡加美町小瀬地区で栽培されている大根。一般的な大根は根を食べますが、この小瀬菜大根は根がほとんど肥大せず、主に葉と茎を食べる大根です。なんと葉の長さは80~100cmにもなります。地元では「こぜなっぱ」ともいわれ、漬物のほか、みそ汁の具、煮物などにして食べられます。加美町小瀬地区でしか葉が柔らかくならず、他の地区で栽培しても同じようにはならないといわれています。

からとり芋

「仙台雑煮」焼ハゼで出汁をとり、いくらを添えて食べる。

「からとり芋」とは、ずいきをとる里芋のことです。“柄(から)をとる芋”で「からとりいも」。ずいきは、里芋の葉柄(ようへい)部分のことで、一般的には緑色(青茎)ですが、仙台地方の葉柄は赤茎のものが栽培され、みそ汁の具や煮物、正月のお雑煮(仙台雑煮)などにも入れ食べられてきました。仙台地方では、緑色(青茎)の里芋は芋を食べ、赤茎は皮をむいて乾燥させ、保存します。

鬼頭菜(おにこうべな)

大崎市鳴子町の鬼首地区で栽培されている鬼首菜は、赤茎系と白茎系の2種類があります。漬け菜の一種で、地元では「地の菜」がなまり「ずなっこ」と呼ばれ、主に漬け物として自家消費されるため、市場にはほとんど流通しません。大正時代に山形県最上地方から持ち込まれたとされ、現在に至るまで鬼首地区で栽培されていますが、現在栽培しているのは数軒のみとのこと。

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