海外拠点とのシームレスな接続を実現できるVPN。インターネット規制が厳しい中国では、規制回避のための手段としてVPNが用いられています。しかし近年、中国政府によるインターネット規制はますます厳しさを増しており、これまでのVPNが使用できなくなるケースも見られています。

 こうした規制は、出張等で日本から中国へ足を運ぶビジネスパーソンにも支障をきたしかねません。中国でインターネット規制を回避できるVPNはあるのでしょうか?

 本記事では、中国で厳しくなっているインターネット規制の現状と、通信制限を回避できるVPNがあるのかどうかについて解説します。

中国政府によるインターネット規制の現状

 世界の中でもトップレベルのインターネット規制が敷かれている中国。一部Webサイトやサービスを自由に閲覧できないよう「グレート・ファイアウォール(金盾)」という検閲システムが採用されており、日本で一般的に使用しているWebサイトやSNSのほとんどが中国では利用することができません。

 現在、このグレート・ファイアウォールの影響により、以下のサービスへの接続が禁止されています(以下は一部です)。

– Google

– Yahoo!

– YouTube

– Facebook

– Twitter

– Instagram

– LINE

 この厳しい検閲を回避する手段として、多くの人々に使用されているものがVPNです。しかし、中国政府は2017年からサイバーセキュリティ法を施行し、VPNへのさらなる規制強化を発表しました。

 上記のSNSやメッセージルールなどに加えて、VPNサービスまでもが政府から許可を得たものしか利用できなくなり、その結果、これまで接続できていたVPNが政府によってブロックされるケースも珍しくなくなっています。

無料VPNのほとんどが使用できない状況

 中国のインターネット規制を回避するための手段として有効なVPNですが、その多くのプロバイダーは政府によって常に監視されています。VPNの規制が強化された2017年1月以降は、特定のIPアドレスへのブロック、無料VPNの接続が制限されるなど、現時点で多くの無料VPNが使用できない状態となっています。

 有料VPNまでもが規制されている現状、中国から無料VPNを使って日本のインターネットへ接続することは、現実的に難しいとされています。現在使用できるVPNについてもこれから探知される可能性があり、まさに中国政府とVPNサービスのイタチごっこのような状態といえるでしょう。今後の規制については予測できないため、出張等で中国でのVPN利用が必要な場合には、常に最新の規制情報を確認しておかなければなりません。

中国の通信規制を回避できるVPNはあるのか?

 中国で使用できるVPNサービスはかなり少なくなっています。2019年12月時点で、厳しい規制に対応しているVPNには以下が挙げられます。 

1. Astrill VPN

https://www.astrill.com/ja/

 中国ユーザーの多くが使用している有料VPNサービスで、中国の検閲を乗り越えられるアクセス機能が備わっていることが特徴です。あらゆるトンネリングプロトコルに対応していますが、より探知されにくい「Stealth VPN」を利用すれば、中国のグレート・ファイアウォールを通過してアクセスできることが検証されています。閲覧したWebサイトにログを残さないため、安全にVPNへ接続可能です。

2. VyprVPN

https://www.vyprvpn.com/

 中国のグレート・ファイアウォールに特化した、OpenVPNベースの独自プロトコル「カメレオンプロトコル」が使用できる有料VPNサービスです。Stealth VPNのようにパケットを隠して規制を通過するとともに、AES-160, 256といった高度な暗号化を選択できることが特徴です。厳しくなったVPN規制後の接続が確認されていますが、定期的にIPブロックが行われるため、今後使用できなくなる可能性もあります。

通信品質、セキュリティ面の考慮が必要

 グレート・ファイアウォールでは、VPNで最もセキュリティが強固なプロトコル「OpenVPN」の通信を探知しています。それを回避する目的で全性の低いプロトコルが使用される場合があるため、VPN接続のセキュリティレベルが低下する危険性があります。なんらかの事情でVPNが遮断された場合には、ユーザーのIPアドレスや個人情報が特定されてしまうリスクがあるので、セキュリティに十分配慮しなければなりません。

 また、VPNの中には、規制に引っ掛からないよう中国直通のサーバを保有していないものが多くあります。接続にあたり複数のサーバを迂回する必要があるため、動画視聴時や混雑時には速度が遅くなる可能性が高くなります。

 このように、中国で使えるVPNには、セキュリティや通信品質における注意点があります。厳しい検閲を通過することが目的であっても、通信をしっかり保護できる高いセキュリティ・暗号化技術を備えたもの、キルスイッチなどの情報漏えいを防ぐ機能が付いているものを選ぶことが重要です。

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