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料理名の由来は春に咲く白い花。旬の野菜をたっぷり添えた、贅沢なおばんざいです

2022.03.22

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

卯の花(うのはな)


卯の花(うのはな)

この連載で続けてきましたおばんざい「季節のおから」は今回で最後になります。「おからの酢炊き」「秋冬野菜のおから」に続く春のおからということで「卯の花」としました。卯の花はウツギの花の別称で、5月~6月に開花します。4月の異称の「卯月(うづき)」は、卯の花が咲く月であることから名づけられました。白くすがすがしい花を咲かせ、古歌には月光のようとも雪のようとも詠われています。その花の姿におからが似ているとして卯の花と呼びます。

私のおばんざい愛は「季節のおばんざい」で既に述べたとおりですが、子どもの頃はあまり好きではありませんでした。味が単調で、見た目の印象も地味だったからかもしれません。ところが、年をとるにつれて大好物になっていきました。


同時におばんざいをおいしく作る難しさを思い知らされる経験もしました。料理長などに採用される前に、昔は主人や女将に腕をみてもらう試験のようなものがありました。その際には料理屋で出す定番料理や本人の得意料理と一緒に、必ずおばんざいを1品作らせるのです。

豪華な料理がいくらできても、おばんざいがおいしく作れないようではたかが知れているということなのでしょう。何気ない料理にこそ腕と工夫が必要です。

おばんざいのコツはこれまでもくり返してきたように、「定番具材に旬の野菜を加え、風味を増す」「他の野菜を炊いた煮汁があれば加え、味に深みを出す」「単調でぼんやりした味にならないよう、別に炊いた味の濃いもの、酸味のあるもの、食感のあるものなどを混ぜ、さらに香味野菜を加えてアクセントにする」「油をうまく使い、甘みは少なめに」です。

今回は春のおからにぴったりの、たけのこの煮汁(「たけのこの煮もの」)を活用しておからを炊きます。定番具材のごぼうは葉ごぼうに替え、ふきとたらの芽の苦み、アスパラガスの風味と甘み、セロリの食感を加えます。最後につくしの素揚げと木の芽を添えて「卯の花」が完成します。この材料とおりでなくてもかまいません。家にあるものでいろいろ工夫をしてもおいしく食べられるはずです。

今日の卯の花は、雲錦鉢(うんきんばち)に盛りました。桜と紅葉を一緒に描いた雲錦鉢は、春と秋の両方に使えます。江戸時代後期の名工・仁阿弥道八(にんあみ・どうはち)が尾形乾山(おがた・けんざん)の作風に影響を受けて創作したとされます。

「雲錦」は、紀貫之(きのつらゆき)が古今和歌集の仮名序で、春の桜を「雲」、秋の紅葉を「錦」に見立てて和歌について書いた「秋の夕(ゆうべ) 竜田川に流るる紅葉をば、帝の御目に錦と見たまひ、春の朝(あした) 吉野の山の桜は人麿(柿本人麻呂)が心には雲かとの見なむ覚えける」に由来するとされます。

実はある料理屋の料理長になる前の腕調べで私はおから料理を作りました。“運金(うんきん)”、運と金には縁がなさそうだから落ちたのだろうって? “おから”かいにならないで(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


「卯の花」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・おからの定番具材に旬の野菜を加え、風味を増してこの季節だけのおからに仕上げる。

他の野菜を炊いた煮汁があれば加える。新しい出汁だけで炊くよりも味が複雑になり奥行きが出る。







「卯の花」


卯の花(うのはな)

【材料(作りやすい分量)】
・おから 500g

・こんにゃく(6~7mm角に切る) 50g

・しいたけ(8mm角に切る) 3個(中)

・にんじん(6~7mm角に切る) 25g

・セロリ(1cm×3cmを3mm厚さに切る) 40g

・グリーンアスパラガス 3本

・油揚げ(1cm×1cmに切る) 1/2枚

・たけのこの煮汁 300cc
なければ出汁に下の調味料を加えて作る。

・出汁 300cc

・サラダ油 小さじ1と1/2

・ごま油 小さじ1と1/2

・塩 3g

・薄口醤油 小さじ4

・みりん 小さじ2と1/2

・木の芽 適量

※追加具材の春野菜は下記の材料を参考に好みで。

・たけのこの煮もの 適量 「たけのこの煮もの」参照

・葉ごぼうの炒め煮 適量 「葉ごぼうの炒め煮」参照

・ふきの煮もの 適量 「ふきの煮もの」参照

・たらの芽の揚げひたし 適量 「春菜の酢のもの」参照

・ホワイトアスパラガス塩麹和え 2本 「アスパラガスの塩麹和え」参照

・うすい豆 適量 (4月に紹介予定)

・つくしの素揚げ 適量 「春菜の辛子白和え」参照

【作り方】
1.グリーンアスパラガスを茹でる。グリーンアスパラガスはまな板の上に置いて、真ん中から根元までピーラーで皮をむく。皮が堅いものは厚めに、新鮮で柔らかいものはできるだけ薄く皮をむく。グリーンアスパラガスを横にして入るくらいの鍋にたっぷりの湯を沸かす。穂先を持って根元のほうを湯につけ、20~30秒ほどしたら倒すようにして全体を入れ、太さによるが2~3分茹でる。柔らかくなったら冷水に放し、冷めたら水気をきる。

2.別の鍋を火にかけてサラダ油とごま油を入れ、下茹でしたこんにゃく、しいたけ、にんじん、セロリを加えて炒める。火が通ったらおからを加えてさらに炒める。

3.油揚げをたして出汁と調味料を入れ混ぜた後、中火~弱火で炊く。煮汁が少なくなってきたらグリーンアスパラガスを加えて30秒ほど炊いて火からおろす。

4.炊き上がったおからにたけのこ、葉ごぼう、ふき、たらの芽、ホワイトアスパラガス、うすい豆を加えて混ぜ、器に盛り、つくしと木の芽を添える。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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