創立120周年を迎えた東京農業大学、世田谷キャンパス再整備の第一弾プロジェクト。キャンパス内に分散している老朽化した教室群を集約し、新たに30人から300人の大小様々な教室を有した講義棟の計画である。これからの整備のベースとなる本計画には、デザインやディテールから施工方法に至るまで農大理念を表現したあり方が求められた。建物のデザインコードには、農学の基盤であり、畑の根源となる「土」を設定し、土壁やせっ器質タイルの素材感の追求と様々な素材との対比を試みた。これは農大の教育理念である「実学主義」、すなわち観念論を排し実際から学ぶ姿勢を支える場としての校舎づくりを意図したためである。
また環境面では、風の抜ける校舎として全館自然通風システムの構築や庇による熱負荷低減等による温熱環境配慮の他、CO2濃度による換気量自動制御などの省エネルギー化、各階に授業や学生をサポートするヘルプカウンターの設置や環境配慮の見える化等による教育環境の充実、ラウンジやコミュニケーションカウンターの分散配置などの交流環境充実を図っている。
今後、土壁風外壁やコンクリート庇により生み出される素材感と陰影は、時を重ねるにつれ存在感を増す農大の顔となるだろう。