その犬の名は「足往(あゆき)」。亀岡の地で飼われていた犬で、記録上、日本最古とみられる犬の名だ。約2千年前とされる垂仁天皇87年2月の出来事として、日本書紀に記載がある。犬種は不明だが、現在の京都府亀岡市にあたる丹波国桑田村の甕襲(みかそ)という人物の飼い犬で、ある日、山の獣ムジナを食い殺す。ムジナの腹の中から八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)が見つかり、甕襲は勾玉を朝廷に献上。「今は石上(いそのかみ)神宮にある」らしい。

 「ああ、足往の勾玉のことですね」。日本最古の神社の一つとされる石上神宮(奈良県)に尋ねると、禰宜の道上昌幸さん(47)が二つ返事で答えてくれた。もともと神宮に伝わっていた話を、8世紀に編さんした日本書紀に盛り込んだという。ただ、