4 船員厚生施設


  船員は,洋上を航行する船舶内で労働し,かつ,これに居住することが通常であるため,一般労働者に比較して家庭生活,医療,娯楽,教育等の面において社会生活上不利益な労働環境におかれている。従つて,港湾においては,船員厚生施設を公共的施設として設置する必要があり,このことは,ILO勧告第48号「港ニ於ケル船貫ノ福利ノ増進ニ関スル勧告(1936年)」にみられるように,国際的な要請となつている。
  一方,近年におけるわが国の海運業及び漁業においては,船員の確保,特に新規船員の定着性同上等の観点からも船員の福利厚生対策が急務となつている。
  昭和42年12月現在のわが国の国内船員厚生施設としては,宿泊施設182(定員6,079名),休憩施設2(定員100名),医療施設53(病床数2,130)及び福祉施設(養老,授産施設)2(定員90名)がある。宿泊施設のうち62(定員1,947名)は,海運会社が自社船員の厚生施設として設置しているものである。このほか,海外船員厚生施設としてカルカッタに宿泊施設1(定員25名),シンガポールに休憩施設1(定員25名)がある。
  一般船員宿泊施設の地域別設置状況は 〔II−(II)−21表〕のとおりである。

  また,木造の一般船員宿泊施設のうち,耐用年数(22年)をこえているものが16か所,30年以上の極度に老朽化したものが11か所あり,これらの施設の改築が要望されている。
  また,コンテナ専用船の出現その他の技術革新の進展により,船舶の停泊期間が飛躍的に短縮されつつあること,新港地区,新埠頭群の造成が進捗していることによつて,船員が従来の船員厚生施設又は一般商業施設を利用することが困難となつてきているため,このような傾向の著しい港湾においては,船員に簡易宿泊,休憩,入浴,買物,医療等のサービスを提供する施設を利用に至便な場所に整備する必要がある。なお,わが国の船員厚生施設は,実際上は外国人船員の利用には不適であるため,主要貿易港においては,外国人船員の利用可能な施設を整備することも要請されている。


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