世界で地球温暖化(おんだんか)が問題になっているのに、新潟(にいがた)県内では、この冬も大雪が()りました。昨年12月の大雪では、道路で車が()往生(おうじょう)したり、雪かき中の事故(じこ)が起きたりしました。大雪が()るのはなぜでしょう。温暖化(おんだんか)が進むと、雪の()(かた)はどう変わるでしょうか。気になる天気のデータを調べ、将来(しょうらい)の見通しを大学の先生に聞いてみました。(報道(ほうどう)部・由井(ゆい)佳苗(かなえ)

このままだと新潟市は南国・鹿児島市の気温に!?

新潟市の年平均気温の変化

 地球の温暖化(おんだんか)や気候の変化は現在(げんざい)、どれくらい進んでいるのでしょう。
 新潟(にいがた)地方気象台などのまとめによると、新潟市(にいがたし)の1年間の平均(へいきん)気温は、100年当たり約1・4度上がっています=グラフ参照=上越(じょうえつ)(高田)は約1・7度、佐渡(さど)(相川)は約0・9度上がっています。
 気象庁(きしょうちょう)によると、1962年以降(いこう)観測(かんそく)データでは、新潟県(にいがたけん)など日本海側の各地域(ちいき)()る雪の量が()ってきているといいます。ひと冬で積もる雪の最大量は、高田で10年当たり約13センチ、相川では約2センチ()っています。
 このまま温暖化(おんだんか)が進むと、どうなるでしょうか。  
 二酸化(にさんか)炭素(たんそ)(CO2)の排出(はいしゅつ)量を()らすなど、これまでの温暖化(おんだんか)対策(たいさく)に加えて何か対(さく)を取らなかった場合、21世紀末(2076~95年)の新潟県(にいがたけん)の1年間の平均(へいきん)気温は、20世紀末(1980~99年)より約5度上がる予測(よそく)です。新潟市(にいがたし)の気温は、現在(げんざい)鹿児島市(かごしまし)と同じくらいになる見込(みこ)みといいます。
 21世紀末には、雪は北海道の一部を(のぞ)き、全国的に()る見通しです。新潟県(にいがたけん)(ふく)む 北陸地方では、ひと冬に積もる雪の最大量が約80%()予測(よそく)もあります。

海水温上がり雪雲が発達 「ドカ雪」将来増える恐れ

本田明治さん

 このまま温暖化(おんだんか)が進むと、大雪の被害(ひがい)()るように思えます。しかし、新潟大学(にいがただいがく)教授(きょうじゅ)の本田明治さん(54)は「ひと冬に()る雪の総量(そうりょう)()りますが、短時間で大量の雪が()る『ドカ雪』は()えるといわれています」と話します。

 「ドカ雪」が()(なぞ)()(かぎ)は、日本海の海水温にあります。日本海側で雪が()る仕組みを見てみましょう=図①参照=。シベリアから(なが)()む冷たい空気が海で(あたた)まり、水蒸気(すいじょうき)をたくさん(ふく)むと雲ができます。この雲が山にぶつかって発達し、山沿(やまぞ)いの地域(ちいき)に雪を()らせます。
 温暖化(おんだんか)影響(えいきょう)で日本海の水温が上がると、海面から蒸発(じょうはつ)する水蒸気(すいじょうき)()えて雪雲が発達し、大雪が()りやすくなります。実際(じっさい)に昨年12月に新潟県(にいがたけん)に大雪が()った時、日本海の水面温度は、平年より1~2度高い状態(じょうたい)でした。

図①

 気温が上がると、空気に(ふく)むことができる水蒸気(すいじょうき)の量が()えます。空気を「バケツ」に、水蒸気(すいじょうき)を「水」に例えて考えてみます。バケツの中の水があふれたら「雪が()る」とイメージしてみましょう=図②参照=

図②

 温暖化(おんだんか)は、「バケツ」が大きくなるということです。バケツが大きくなると、中に入る水の量が()えるため、水があふれるまでに時間がかかるようになります。つまり雪が()りにくくなります。
 しかし、ひとたびバケツが()れたり(たお)れたりすると、こぼれる水の量が多いため、ドカ雪や大雪が()りやすくなります。
 極端(きょくたん)に多い雪の()(かた)は、(すで)()えています。除雪(じょせつ)が追い付かず、交通や電気の供給(きょうきゅう)(もう)をまひさせる(おそ)れがあり、災害(さいがい)につながりかねません。
 本田さんは「温暖化(おんだんか)を食い止め、気温の上昇(じょうしょう)をなるべく小さくすることが大切です」と語ります。「ごみの量や車の利用を()らすなど、一人一人(ひとりひとり)心掛(こころが)けでできる温暖化(おんだんか)対策(たいさく)はあります」と教えてくれました。