パイプをくわえた風貌と、「だいたいやね」で始まる大阪弁の辛口コメントで知られた評論家竹村健一(たけむら・けんいち)さんが8日午後7時38分、多臓器不全のため都内の病院で亡くなっていたことが11日、分かった。89歳だった。近親者で密葬を行った。お別れの会などの予定はない。

長男の真一さんによると、約2年前から入退院を繰り返し、誤嚥(ごえん)性肺炎などで、危険な状態になったこともあったという。最期は家族にみとられて亡くなった。ひつぎには愛用のパイプや本数冊などが納められた。

60年代後半から評論活動を本格的に行い、フジテレビ系「竹村健一の世相を斬る」の司会などを担当。パイプを加えた独特な風貌と大阪弁による分かりやすい時事解説で人気になった。日本テレビ系「世相講談」では、東京都の小池百合子知事がアシスタントを務めた。数々のCMにも出演。「私なんか、これだけ」「デリーシャス」といったCMのセリフが流行語になった。

真一さんによると、竹村さんは80歳で現役引退し、時々講演活動を行う以外は、趣味のテニスや旅行などを楽しんでいたという。「友人、知人が訪ねてくると、いつもニコニコとしていました」と振り返った。数年前には、大阪弁で「いい人生やったぁ」と、満足げにゆっくりつぶやいたという。真一さんは「現役中は仕事はもちろん、テニスやスキー、ダイビングやピアノなどでも忙しくしていて、過去を振り返ることがそれほどなかったので、印象的でした」と明かした。

◆竹村健一(たけむら・けんいち)1930年(昭5)4月7日、大阪市生まれ。53年京大卒後、毎日新聞に入社。米国留学や迫手門学院大英文科助教授などを経て、60年代後半から本格的に評論活動を開始。政治や外交、経営など幅広く論じた。著書はベストセラー「マクルーハンの世界」など500冊以上。