日経サイエンス  2017年6月号

特集:インフレーション理論の現在

インフレーション理論は盤石か?

A. アイジャス P. J. スタインハート(ともにプリンストン大学) A. ローブ(ハーバード大学)

宇宙最古の光である宇宙マイクロ波背景放射(CMB)に関する最新の観測結果は,宇宙初期に空間が指数関数的に膨張したとするインフレーション理論に疑問を投げかけている。インフレーションは観測された背景放射の温度揺らぎのパターンを再現できるものの,異なるパターンも作り出せる。インフレーション理論は,モデルを変えることによってほぼどのような結末にも行き着くことができるのだ。また,インフレーションによって原始重力波が生成されるはずだが,それはまだ見つかっていない。最新の観測データは,宇宙物理学者にインフレーション理論の枠組みを見直すとともに宇宙の始まりに関する新たなアイデアを検討することを求めている。

著者

Anna Ijjas / Paul J. Steinhardt / Abraham Loeb

アイジャスはプリンストン大学理論科学センターのJ. A. ホイーラー記念ポスドク研究員。宇宙の起源・進化・未来と暗黒物質・暗黒エネルギーの性質を研究。スタインハートは同大学のアルベルト・アインシュタイン科学教授であり,同理論科学センターの所長。素粒子論や宇宙物理学,宇宙論,固体物理学の諸問題を研究。ローブはハーバード大学の天文学科長で,同大学ブラックホール・イニシアチブの創設者兼所長とハーバード・スミソニアン天体物理学センター理論計算研究所の所長を兼任。

原題名

Pop Goes the Universe(SCIENTIFIC AMERICAN February 2017)

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