日経サイエンス  1998年7月号

算額に見る江戸時代の幾何学

算額の問題に挑戦してみませんか?

問題1
円の中にいくつもの円を書き込んだり,別の図形の中に多くの球を入れたものが算額の典型的な問題だ。この問題は江戸時代中期の1788年に江戸で掲げられた算額に記されていたもの。緑色の一番大きな円の半径をrとし,図の中のn番目の青い円の半径を求めよという問題。ただし,赤い円の半径はr/2とする。和算家はこの問題を解くのに,デカルトの円定理と同じ内容の定理を使っている。5番目の青い円の半径がr/95というのがヒントだ。

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問題2
1824年に群馬県に掲げられた算額の問題である。互いに外接するオレンジの円と青い円が同一直線上に載っている。小さな赤い円がこれら2つの大きな円に外接して,さらに直線にも接している。このとき,この3個の円の半径にはどんな関係があるだろう。

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問題3
問題そのものがいつごろ作られたものかはわからないが,宮城県に1912年に掲げられた算額からすばらしい問題を紹介しよう。楕円上の1点Pから楕円の他の点Qと交わる法線PQを引く。このとき,PQの長さの最小値を求めよ。一見したところ,最小値は楕円の短軸の長さになり,つまらない問題のように思われる。実際,楕円の長軸と短軸をa,bとしたときb<a≦√2・bのときはこれが答だ。しかし,√2・b<aの場合については,算額はこの答えではなく別の答えだとしている。

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問題4
この美しい問題は,高校の幾何程度で解けるので,ぜひ挑戦していただきたい。1913年に宮城県に掲げられた算額に書かれている。大きな緑色の直角三角形の中に図のように3個のオレンジ色の正方形がある。さらに,正方形の2つと直角三角形に外接するように3個の青い円が置かれている。このとき3個の青い円の半径の間にはどのような関係があるだろうか。

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問題5
1803年に群馬県に掲げられた算額の問題。大きな緑の円の直径上に底辺を持つ二等辺三角形が円の内側に接している。赤い円は三角形の1つの頂点を通り緑の円に図のように内接。さらに,この赤い円と三角形に外接し緑の円に内接する青い円がある。青い円の中心と赤い円と三角形の接点を通る線分が,緑の円の直径と直交することを示せ。

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問題6
この問題は1874年に群馬県に掲げられた算額にある。正方形のなかに大きな青い円がある。4個の半径の異なる小さなオレンジの円が正方形の隣り合う辺と青い円に接している。このとき,この4個のオレンジ円の半径と正方形の辺の長さの間にはどのような関係があるだろうか。4個の円が1つの円または直線に接するときに生じる関係について述べている「ケージーの定理」を使うのがヒント。


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問題7
1825年に掲げられた算額からのもので,たぶん和算の円理を使って解かれていた問題だ。円柱が球と一点で内接するように交わっている。このとき球の内部にある円柱の表面積を求めよ。

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問題8

この問題はアーネスト・ラザフォードとともに原子崩壊説を立てた著名な英国の化学者フレデリック・ソディーの定理と同じものだが,日本では1世紀以上前に発見されている。互いに外接する2つの赤い球が大きな緑の球に内接,さらに半径の異なる小さな青い球の連鎖が赤い球の「首」のまわりを取り巻いている。ネックレス状の青い球は,同時に緑の球と赤い球に接している。このような条件で青い球の数に制限があるだろうか。また青い球の半径に何か関係があるだろうか。

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問題9
1798年の年記のあるこの問題は著者の1人である深川の好きなもので,この問題の木製モデルを作ったほどだ。大きな球を半径の等しい30個の小さな球で囲む。ただし,小さな球は大きな球に接していると同時に,それぞれ4個の他の小さな球にも接している。このとき,大きな球の半径は小さな球の半径とどのような関係にあるか。

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図版: Brian Christie
算額についての詳しい説明は『例題で知る 日本の数学と算額』(深川英俊 著,森北出版)を参照してください。

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