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「世界最速」イー・モバイルを縛る周波数問題

高速化競争の勝者は

編集委員 松本敏明

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イー・モバイルは11月16日、19日に予定していた高速データ通信サービス「EMOBILE G4」の開始を12月中旬に延期すると発表した。理由は端末のソフトと一部ハードの不具合。こうしたトラブルは他の携帯電話会社でも起きることだが、イー・モバイルは高速化競争で先行する新サービスの出だしでつまずくことになった。

現行サービスの2倍の速度

携帯電話業界で最後発のイー・モバイルは07年3月、下り最大毎秒3.6メガビットのサービスを開始するにあたり、日本で初めてデータ通信端末向けの定額制を導入した。以来、高速化と低料金を武器に契約者を増やしており、「いち早く高速なサービスを出すことが重要」(阿部基成副社長)な戦略となっている。

だからこそ、速度での「日本一奪還」は急務だった。現在はUQコミュニケーションズが09年7月に始めた「UQ WiMAX」が下り最大毎秒40メガビットで最も速く、イー・モバイルがほぼ同時期に始めた下り最大毎秒21メガビットの「HSPA+」は2倍近く引き離されていた。

19日に開始する予定だった新サービスは、「DC-HSDPA」と呼ぶ技術を使っており、下りの最大速度はHSPA+の2倍の毎秒42メガビットで、上りは毎秒5.8メガビット。「国内で下り42メガは最速」(エリック・ガン社長)というとおり、WiMAXを上回る。NTTドコモが次世代通信技術「LTE」を使って12月24日に始めるサービス「Xi(クロッシィ)」も屋外での下り最大速度は毎秒37.5メガビットで、追い付かない。

イー・モバイルはエリア展開を急ぎ、関東、東海、関西、北海道、九州などの主要31都市から提供を始めて、現在の人口カバー率である約92%の半分を半年で対応させる計画。通信料金も一部プランは従来のHSPA+と同一に据え置き、速さと安さで顧客獲得を狙おうとしている。

しかし、新サービスの直前になり、発売予定だった中国の華為技術(ファーウェイ)製のデータ通信端末「D41HW」にパソコンからモデムとして認識されない現象が見つかり、延期を余儀なくされた。このトラブルは端末のソフトと一部ハードの不適合で、通信方式そのものが原因ではないという。だが、端末の機種を複数用意し、調達を1社に頼らなければ起こらなかったことでもある。早くからDC-HSDPAの準備を進めてきたが、結果として新技術導入に伴うリスクへの対応が欠けた格好となった。

既存技術の延長で高速化

イー・モバイルがDC-HSDPAの導入を決めたのは08年にさかのぼる。当時は、NTTドコモなど世界の大手通信会社が10年ごろにLTEを開始しても、普及には時間がかかるとの見方が多かった。そのためイー・モバイルはLTE以外の別の高速化技術を探していた。

そこで浮上したのが、従来5MHz幅で使っていた周波数を2本束ねて10MHz分の帯域で通信するDC-HSDPA方式だ。このころはまだ、「HSPA」規格の技術進化のロードマップに規定されていなかったが、5MHz幅の帯域で電波を送出する現行の基地局から別の5MHz幅の電波を併せて送出する方法で、最大速度を一気に2倍に高めることができる。

DC-HSDPAにはLTEよりも投資額を抑えられる利点もあった。HSPA+と同じ既存技術の延長線上にあり、設備投資は基地局に5MHz幅の電波を発信するハードウエアを増設する程度の追加工事で済むからだ。そこで、イー・モバイルは基地局メーカーのエリクソン(スウェーデン)やチップメーカーの米クアルコムなどとともに、海外の通信会社からこの技術への賛同を取り付けていったという。

こうした経緯もあり、DC-HSDPAは現在、イー・モバイル以外にも海外の複数の携帯電話会社が導入を計画している。日本でもソフトバンクモバイルが11年2月下旬以降にサービスを開始する。さらに、DC-HSDPAを高速化する技術も、実用化に向けて標準化作業が進んでいる。現在策定中の「4C-HSDPA+MIMO」という技術を使えば、5MHz幅の周波数を4本束ね、マルチアンテナのMIMOという技術を組み合わせることで、最大毎秒168メガビットの速度を実現できる。

一方のLTEは20MHz幅を使った場合で最大毎秒150メガビット。DC-HSDPA系の技術は、LTEより古い技術方式を使いながらピーク速度では互角の勝負ができるわけだ。

「12年ころにはLTEへ」

ただ、通信業界ではDC-HSDPAが今後主流になるとの見方は少なく、多くは「つなぎの技術」と位置づけている。いち早く採用したイー・モバイルも実は同様で、阿部副社長は「12年ころにはLTEを取り入れる」と語る。それはLTEの導入が世界の通信業界の趨勢(すうせい)だからだ。

海外の通信動向に詳しい関係者は「時期はいつになるかは分からないが、携帯電話がLTEベースに進化する流れはもう固まっている」と口をそろえる。世界の携帯電話会社がLTEを導入すれば、メーカーが出荷するデータ通信端末や音声端末も当然LTE中心となる。

イー・モバイルはLTEを機に、「グローバルに普及する端末を調達し、それに合わせてネットワークを変えていく」(阿部副社長)戦略を取ろうとしている。NTTドコモのように、メーカーと協力しながら端末を開発してLTEの拡大を先導する役割は、「資金的に見て不可能」(阿部副社長)。そのため、当面はDC-HSDPAで高速化競争を有利に運び、LTE端末を海外から容易に調達できるようになれば、ネットワークもLTEに変えるというシナリオを描いている。

1.7GHz周波数帯がアキレスけんに

ただ、LTEに移行してもイー・モバイルにつきまとう課題はある。それは同社に割り当てられている周波数が国際的にあまり使われていない1.7GHz帯であることだ。LTE対応のグローバル端末が普及しても、端末調達で周波数の違いがアキレスけんとなる可能性がある。

この課題は、イー・モバイルが年内にも2年ぶりに発売するスマートフォン「HTC Aria」でも露呈している。Ariaは台湾HTCが世界市場で販売するHSPA方式のグローバル端末だが、標準では1.7GHz帯の周波数に対応していない。Ariaが内蔵するクアルコム製のチップセットが1.7GHz帯の通信機能を持つため手直しだけで済むが、それでもグローバル仕様のまま日本に持ち込むことができず、アンテナ回りや一部の部品などを再設計する必要が生じた。

イー・モバイルはLTEでも1.7GHz帯を使う予定で、同じ問題は今後も起こりかねない。

LTEで使われる周波数は、世界では2.6GHz帯と700M~900MHz帯が主流だ。これに対し、総務省が昨年LTEなどの次世代(3.9G)サービス用に割り当てた周波数は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルが1.5GHz帯、イー・モバイルが1.7GHz帯。いずれも世界の標準からは外れている。

ただイー・モバイル以外の3社にはほかの周波数もある。例えば、3社がすでに持つ2GHz帯は、第3世代(3G)携帯電話の主力周波数帯として使われており、海外の事業者がLTEに転用していく可能性がある。NTTドコモはその2GHz帯からLTEを開始する。一方、KDDIは主流である800MHz帯を主に使おうとしている。

イー・モバイルに最も近い状況にあるのはソフトバンクモバイルだ。同社の2GHz帯はすでにスマートフォン「iPhone」の人気でトラフィックが満杯状態にあり、現状ではLTEに回す余裕がない。そのため、1.5GHz帯でDC-HSDPAサービスを開始するのに続き、LTEでも1.5GHz帯を使う可能性がある。それでも、同じ1.5GHz帯を割り当てられたNTTドコモやKDDIがこの周波数をLTEで利用する予定があるため、孤立を免れる道はある。

海外事業者やメーカーの動きが左右

これに対し、イー・モバイルは日本で唯一、1.7GHz帯を全国で高速データ通信に使っている。現状では通信チップについては「クアルコムに頼んで対応してもらっている」(阿部副社長)が、1.7GHz帯の通信機能を端末に実装するかどうかはメーカーの判断一つだ。

ある関係者は「イー・モバイルのユーザー数は、世界的な規模では無視されるレベル。端末メーカーがどれだけ対応するかは読めない」と指摘する。携帯電話各社がLTEサービスをそろって提供するようになったとき、端末の品ぞろえで後れを取れる心配は残る。

イー・モバイルが期待するのは、オーストラリアや欧州のデンマーク、ギリシャなどが1.8GHz帯でLTEの実験を進めていることだ。この周波数帯はイー・モバイルが使う1.7GHz帯と重なる部分があり、ここでグローバル端末が普及すればそのまま流用できるようになる。

一方でイー・モバイルは、今年10月に900MHz帯周波数の割り当てを求めて独自に記者会見を開くなど、新たな周波数帯の獲得にも意欲を見せている。この議論の行方は、イー・モバイルの将来に大きくかかわる。当面はLTEとは別方式で高速化競争に挑むイー・モバイルだが、LTEへの移行シナリオは海外事業者やメーカー、そして総務省の動き次第で大きく変わってくる。

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