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サレジオ高専、走れ自動運転 レベル3で地域の支えに

高専に任せろ!2023

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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

確固たる技術で社会課題を解決する。そんな強い決意をもって、サレジオ工業高等専門学校(東京都町田市)が電気自動車(EV)の開発に取り組んでいる。目指すのは自動運転の「レベル3」で、流線形の車両は1人乗りだ。先輩が培った技術を後輩が磨きながら、国内唯一のミッション系高専のもとで先端分野の人づくりが進む。近未来を自らの手で引き寄せようとする若きエンジニアの奮闘を追った。

「EV、事故のない社会、病院や学校でサポートするロボット。クリーンで快適な生活。これが電気工学科の考える未来像です」。サレジオ高専がこの夏、中学生を対象として開いた学校説明会。電気工学科の井組裕貴講師が会場に集まった中学生や保護者に語りかける。

会場には風力、波力、太陽光の発電設備やEV、リニア新幹線を配したジオラマが展示された。ヒト型ロボットや、車体を木で製作した車もあった。その中で最も関心を集めたのが、流線形で近未来を予感させる1人乗りの自動運転EV「VISMO(ビスモ)」だ。

サレジオ高専のある町田市内の中学校に通う男子生徒は「入学してクルマをつくってみたい」と、目を輝かせた。隣にいた母親は「こんなことを聞いたのは初めて」と目を細めた。

人の認識が難しく

VISMOは造語で、VISION(未来像)とMOBILITY(移動性)を組み合わせた。車両は全長約2.1メートル、幅1.1メートル、高さ約1.4メートル。緊急時などに人が操作するレベル3の自動運転を目指している。

開発するシステムの一つは高性能センサー「3Dのライダー」だ。レーザーを周囲に照射し、反射光の情報をもとに対象物までの距離や対象物の形を計測し、周りの環境を把握する。VISMOのルーフにある円筒形の茶筒ようなものがライダーで、リアルタイムで点群のデータが取れる。そのデータから地図を作り、車両の位置を推定する。

ライダーの性能向上を担当するのが5年生の三留海来さん。レーザーで路面の凸凹や道を歩く人の動作を把握してスピード調整の指示を出す。難しいのは人の動きだ。

「人が車の前を横切ろうとしたら停止の指示を出さないといけないが、道の端を歩いていたり立ったままだったりしていれば、止める必要はありません。人や犬が歩いている場所が歩道ならなおさらです。その判断を間違いなくできるかどうか」と話す。

ステレオカメラも自動運転を支えており、車体の前後に装着してある。人間や道路標識など、得られた周辺情報からブレーキ制御の判断を担う。そのために人工知能(AI)で画像を学習させる。制御プログラムはパイソンだ。

やはり難しいのは人の認識で、顔以外の情報を取り除くことに腐心する。木だと幹は細く人間の胴体に、上の部分の枝葉は顔と判断することがある。担当の田村正宗さんの趣味は写真撮影で、この研究に加わってからは「趣味が機械学習にいかせないか」と貪欲に取り組んでいる。

高齢者らにニーズ

四輪独立操舵(そうだ)の技術を搭載し、機動的に走れるようにする。2023年度中に前輪だけでなく後輪も方向転換の操舵を可能とし、前後に自在に走る制御プログラムや後輪の足回りの設計・製作を目指している。

実現できれば、限定された条件下でシステムが運転し、ドライバーが運転席を離れることができるレベル4につながる。担当の高木翔平さんは「先輩から引き継いだ技術をより良いものにしてこれを卒業研究に仕上げます」と力強く答えてくれた。

なぜ、サレジオ高専は自動運転に取り組むのか。そこには我が国唯一のミッション系高専ならではの背景がある。在校生は「神は愛なり Loving Kindness」「技術は人なり Human Technology」「真理は道なり Living Truth」という3つの校是に照らして学ぶ。

町田市の多摩丘陵には多摩ニュータウンがある。かつては活力があったが、坂の多い街は高齢者にとって住みづらくなってしまった。住民の移動手段を確保することに潜在的なニーズは必ずある。こうした地域の課題解決を技術で一役買おうとするのがVISMOの開発だった。

サレジオ高専の近くではリニア新幹線の橋本駅の建設が急ピッチで進んでいる。現実を直視しながら、同時に近未来の街の姿を思い描ける環境にある。VISMOが街の変容と共にレベル3からレベル4へと進化すれば、街の機能の一部を担うことができる。桜田絃希さんは「校是にある技術を信じ、心に据えて、生きていく人間になりたい」と力強く語ってくれた。

ソーラーカー30年の技術



サレジオ工業高等専門学校が電気自動車(EV)に取り組む背景には、同校に脈々と引き継がれている自動車製作の歴史がある。源流はソーラーカープロジェクトだ。

太陽光パネルで発電した電力をバッテリーに充電しながら、モーターに電力を供給して回転させる。同校は約30年前からソーラーカーの製作をスタートさせ、大学生などのチームも参加するソーラーカーレースに出場してきた。

約5日間かけてオーストラリア大陸約3000キロメートルを走る世界最高峰のレース、ワールド・ソーラー・チャレンジにも挑戦している。1990年代後半には車両電源にLi-ionバッテリーを導入するなど技術を積み上げ「培った技術、ノウハウを応用すればゼロベースから自動運転のEVの開発もできる」(サレジオ高専の井組裕貴講師)と考えた。

ゼロベースから開発



市販の車両やシステムを使って車の実証実験をする学校はあるが、ゼロべースのEVは高専では初めてだという。

電気工学科の1年生は電動カート製作という授業があり、数人がチームとなって取り組み、試行錯誤する。ここで車づくりの抵抗感がなくなり、ソーラーカーやEV製作への関心も高まる。

2年生ではミニチュアのソーラーカーを製作し、実際に走行させて順位を競う。太陽光のエネルギーを電力に変換し、その電力を使って機械的にタイヤを動かす。見えない電気をどのようにエネルギーとして車に生かすか。体験があってこそ身になる。

ものづくりにとって大切なのが、社会に受け入れられるデザインかどうかだ。テクノロジーとデザインがうまくかみ合わないといけない。まして、近未来の乗り物となる「VISMO(ビスモ)」にとってデザインは一層重要な役割を果たす。

同校には高専に珍しくデザイン学科があり、時代にあった未来のエンジニア、デザイナーを育む素地がある。そして、デザイン学科を卒業した先輩などがVISMOの製作に一役買った。デザインモックアップや3Dプリンターなどを手掛け、同校出身者が所属するアペックス(東京都八王子市)が、3DのCAD(コンピューターによる設計)で車体外装部品の構造設計を行い、同社の持つ業界最大級の3Dプリンターでモデルを製作した。

VISMOのアイコンでもある発光ダイオード(LED)ライティングも提案し、光り方の提案や構造設計、LED基板の製作、点灯プログラム、実装までサポートした。
地域に密着した車づくりの環境がVISMOをレベル3からレベル4への高みへと導いてくれるはずだ。

(編集委員 田中陽)

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