「モバイルWiMAX」を東京都内で試してみた 速度・エリアを4社で比較
ジャーナリスト 石川 温
KDDI系のUQコミュニケーションズは2月26日、高速モバイル通信サービス「UQ WiMAX」を東京23区内と横浜市、川崎市でスタートした。いよいよ日本でも始まった次世代高速無線技術「モバイルWiMAX」の実力とはどれくらいのものなのか。都内各所でエリア、速度の実験を行った。
東京都内でドコモなどと比較
モバイルWiMAXはスペック値で最高40Mbpsという高速通信が売り物だ。実力を試すため、早速、USB型のデータ通信端末「UD01NA」を入手。都内各地で他社サービスと比較した。
比較対象としたのは、NTTドコモの「FOMAデータ通信」、auの「PacketWINシングル(従量制)」、イー・モバイルの「EMモバイルブロードバンド」の3サービス。NTTドコモとイー・モバイルは下り最大7.2Mbpsの高速通信に対応する端末を選んだ。ソニーの小型ノートパソコン「VAIO type P」を用い、ダウンロード測定サイト「gooスピードテスト」に接続。各所で3回ずつダウンロードして平均値をとった。
キャリア | サービス名 | 最大通信速度 | 端末名 |
---|---|---|---|
UQコミュニケーションズ | UQ WiMAX | 40Mbps | UD01NA |
NTTドコモ | FOMAデータ通信 | 7.2Mbps | L-02A |
au | PacketWINシングル | 3.1Mbps | W-04K |
イー・モバイル | EMモバイルブロードバンド | 7.2Mbps | D21HW |
新宿の家電量販店近くは圏外
2月28日、まず向かったのが東京・新宿の家電量販店近くの喫茶店。各社とも家電量販店の店頭にデモ端末を置くため、ネットワーク品質に力を入れている場所だ。
午前11時、窓から3メートルほど離れた座席に陣取った。早速、モバイルWiMAXをつないでみるも「圏外」。他の通信サービスは問題なく接続できる。
キャリア | 平均速度(Mbps) |
---|---|
UQコミュニケーションズ | 圏外 |
NTTドコモ | 2.44 |
au | 0.61 |
イー・モバイル | 2.3 |
午後5時30分、今度は東京・千代田の地下鉄・神保町駅の都営新宿線のホームで実験を開始した。地下ということもあり、モバイルWiMAXが使えないのは想定済み。ここはNTTドコモとauがきちんと使えることが知りたかったのだ。
予想通り、この2社は地下などでも使えるというのが特徴だ。イー・モバイルは圏外で使えなかった。
キャリア | 平均速度(Mbps) |
---|---|
UQコミュニケーションズ | 圏外 |
NTTドコモ | 2.01 |
au | 0.64 |
イー・モバイル | 圏外 |
JR田町駅では平均4.76Mbps!
続いて向かったのがJR田町駅。駅構内で実験した。
モバイルWiMAXは、なんと平均4.76Mbpsという速度をマーク。他社が2メガを超えなかったことを考えるとかなり快適だった。
キャリア | 平均速度(Mbps) |
---|---|
UQコミュニケーションズ | 4.76 |
NTTドコモ | 1.54 |
au | 0.63 |
イー・モバイル | 1.48 |
UQコミュニケーションズの株主には東日本旅客鉄道(JR東日本)がいる。UQコミュニケーションズは記者会見でJRの駅構内をエリアにしていくことを明らかにしており、すでに駅には基地局が設置されていると思われる。基地局から近いということもあり、5Mbps近い高速通信が可能だったようだ。
「微弱」だと1.3Mbps程度
翌3月1日の午前11時、東京・港の表参道交差点にあるファミリーレストラン。繁華街ではあるが、やはりモバイルWiMAXは使えなかった。
キャリア | 平均速度(Mbps) |
---|---|
UQコミュニケーションズ | 圏外 |
NTTドコモ | 2.3 |
au | 0.62 |
イー・モバイル | 3.08 |
午後2時、東京・新宿の曙橋近くにある自宅にて実験。ここではモバイルWiMAXがきちんと利用できた。しかし、通信速度は1.3Mbps程度。電波状況は「微弱」だった。
キャリア | 平均速度(Mbps) |
---|---|
UQコミュニケーションズ | 1.33 |
NTTドコモ | 2.23 |
au | 0.64 |
イー・モバイル | 1.78 |
続いて午後3時、JR四ツ谷駅の総武線のホームで実験を開始。イー・モバイルが3Mbps弱と高速だったが、モバイルWiMAXはさらに上回る平均5Mbps以上をマークした。やはりJR駅構内というのはモバイルWiMAXの強みのようだ。
キャリア | 平均速度(Mbps) |
---|---|
UQコミュニケーションズ | 5.21 |
NTTドコモ | 0.95 |
au | 0.64 |
イー・モバイル | 2.56 |
では、高いところはどうなのか。水道橋にあるビルの11階で実験してみた。モバイルWiMAXの電波は不安定で時折、圏外になることもあったが、2Mbps以上を記録した。
キャリア | 平均速度(Mbps) |
---|---|
UQコミュニケーションズ | 2.2 |
NTTドコモ | 1.29 |
au | 0.58 |
イー・モバイル | 1.95 |
やはりエリアはまだこれから
都内各地でモバイルWiMAXを試したが、やはりエリアについてはまだこれからという印象だ。繁華街であっても使えない場所は多い。「現在、500基地局で、将来的には全国で2万基地局を計画している」(UQコミュニケーションズの田中孝司社長)というように、まだ計画の2.5%に過ぎないのだから、当然かもしれない。
ただ、基地局の近くであれば、5Mbps以上の速度で通信が可能となっている。NTTドコモやイー・モバイルのHSDPAサービスではなかなか達成できない数字であるだけに、これは魅力だ。現在、JR駅構内ならば、基地局が設置されている可能性が高いだけに、ユーザーが使う際は駅周辺に陣取るようにするのが確実だろう。
実験前日、27日にもいくつかの場所で接続を試みたのだが、東京・千代田の溜池山王では、場所によって圏外であったり圏内であったりという状況だった。つながった際には1~2Mbps程度の通信速度になった。記者会見の会場でUQの関係者が「基地局から離れたエリアの端では1Mbps程度の通信速度になってしまう」と話していたが、その説明と実際がぴたりと一致した気がした。
電波をつかめば1Mbps、基地局から近ければ5Mbps以上というのがモバイルWiMAXの実力のようだ。
PC向けデータ通信は各社とも一長一短
他社と比較をしたが、どこでも高速通信が可能だったのがNTTドコモとイー・モバイルだ。auは安定して600kbps程度となっていた。ただし、地下などのエリアではNTTドコモとauに分がある。NTTドコモはエリア、速度ともに魅力だが、一方で、ファイル交換やVoIPなど一部のアプリケーションが使えない。
パソコン向けのモバイル通信サービスは、現状はまだ各社とも一長一短があるといえるようだ。
[IT PLUS 2009年3月2日掲載]
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