石野伸子の読み直し浪花女

人間万華鏡・直木三十五(2)人気作家をも魅了「人たらし」 時代を嗅ぐ非凡プランナー

生涯着流し姿を好んだ直木三十五(日本近代文学館所蔵)
生涯着流し姿を好んだ直木三十五(日本近代文学館所蔵)

 「直木賞」に名を残しながら存在感が薄い作家。なぜ。直木三十五(なおき・さんじゅうご)への関心は時折、そんな風に高まる。

 10年前の平成17年2月、生誕地に近い大阪市中央区谷町6丁目に直木三十五記念館がオープンしたのもそんな思いが結集した結果。

 「とりたてて作品のファンという人はいないが名前は知っている。大阪生まれだったかという驚きもある。町おこしの話題としては十分でした」と記念館事務局長の小辻昌平さん(51)はいう。

 それから10年。会費運営の記念館はなかなか厳しい。

 「のべ会員数は130人ですかね。なかなか増えません。書店に本もないし作品自体のファンになるきっかけがない。読めば面白いんですが」と小辻さん。

 昨年は「芥川賞・直木賞」がスタートして150回を数える記念の年だった。日本近代文学研究者の山崎国紀氏による「知られざる文豪直木三十五」がミネルヴァ書房から出されている。

 森鴎外研究で知られる山崎氏の思い切った「文豪扱い」が頼もしい。これまでどちらかといえば「畸人(きじん)」として注目を集めることが多かった直木だが、主要作品を分析しその筆力と構想力の秀逸さを再評価している。

 ならばなぜ、直木は忘れられたままなのか。

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