皇居・東御苑の来園者急増、前年の2・5倍に 水際対策緩和 外国人観光客戻る

皇居・東御苑の出入り口の一つとなっている大手門前。外国人観光客らの姿が目立つ=3月27日、東京都千代田区(緒方優子撮影)
皇居・東御苑の出入り口の一つとなっている大手門前。外国人観光客らの姿が目立つ=3月27日、東京都千代田区(緒方優子撮影)

新型コロナウイルスの水際対策の緩和などに伴い、皇居・東御苑(東京都千代田区)の来園者が急増している。1~3月の来園者は前年同期の2・5倍を超え、今月1日には開園以来の来園者が3500万人を突破。5月の大型連休や秋の新施設開館を控え、宮内庁など関係機関が来園者への対応強化を進めている。(緒方優子)

過去最高は223万人

今月2日までの9日間、令和になって初めて行われた春の皇居・乾通りの一般公開。隣接する東御苑は期間中、通常は閉園日となっている月・金曜も臨時開園し、外国人観光客ら多くの人が訪れていた。

米国から訪れていたザカリー・グレゴリーさん(27)は「桜とともに日本の伝統的な建築に圧倒された」と、園内に点在する旧江戸城の史跡を満喫した様子。駅からも近く「気軽に足を運ぶことができた」と笑顔で語った。

東御苑は、昭和43年に開園。入園無料で、来園者は増加傾向にあり、代替わり関連行事で使われた「大嘗宮(だいじょうきゅう)」が公開された令和元年には、1年間で過去最高の223万8233人に達した。ところが2年以降、感染拡大で臨時休園が度重なり、3年は18万2818人と平成以降で最少に。令和元年は来園者全体の33%を外国人が占めていたが、3年は3・8%にとどまった。

外国語の対応強化

復調の兆しが見え始めたのは昨秋以降。政府の水際対策が緩和されると外国人観光客も少しずつ増え始め、今年1~3月の来園者は30万4561人で、前年同期(11万8936人)の2・56倍、元年(平成31年)同期(40万1116人)の4分の3程度まで回復。外国人比率も36%でコロナ禍前の水準に達した。

東御苑では今年11月、皇室ゆかりの美術工芸品を展示する「三の丸尚蔵館」がリニューアルして部分開館する予定で、今後さらなる人流の増加も見込まれる。

来園者への対応として、宮内庁では平成29年から、6カ国語に対応するスマートフォン向けガイドアプリを配信。衛星利用測位システム(GPS)に連動して園内の史跡などを紹介する内容で、今年3月時点でダウンロード数はのべ26万件を超えた。また、外国人の案内業務強化のため、外国語に対応する非常勤職員の採用も行っているという。

トラブルに警戒も

園内の混雑で課題となるのが、感染者集団(クラスター)の発生を防ぐ対策の継続だ。宮内庁は3月の政府方針変更に伴い、来園者に対するマスク着用の呼びかけを緩和したが、他人と近い距離で会話する場合には着用を呼びかけている。屋内施設では、混雑時の入室制限も実施する。

園内や皇居周辺でのトラブルも懸念されている。東御苑では1月、来園者が立ち入り禁止エリアに侵入し、一時逃走。3月には、通常一般開放していない坂下門から皇居に入ろうとした女が、皇宮警察に逮捕された。東御苑では入園時の手荷物検査やパトロールを実施しており、警察当局は「トラブルを未然に防ぐための対策も重要」と状況を注視している。

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