東大寺(奈良市)の初代別当(住職)、良弁(ろうべん)僧正(689~773年)の1250年御遠忌(ごおんき)法要が14~16日に営まれるのを前に、良弁が修行した当時からあったとされる同寺法華堂の執金剛神立(しゅこんごうじんりゅう)像(国宝、奈良時代)が特別公開されている。16日まで。東大寺ミュージアムでは特別展示(12月21日まで)も行われ、謎の多い良弁について知る機会となっている。
執金剛神は仏法を守護する神で、目をいからせ、金剛杵(しょ)と呼ばれる法具を振り下ろそうとする迫力ある姿。良弁は東大寺の前身寺院・金鐘寺(きんしょうじ)で修行し、こうした執金剛神を崇拝していたとされる。
像は高さ173センチの塑造の傑作で、法華堂内で厨子(ずし)に納められ、通常は命日の12月16日にしか公開されない秘仏だ。
また、東大寺ミュージアムでは特別展示「良弁僧正と東大寺」が開かれており、良弁の生涯などを紹介する前期・後期で計28件を展示する。
このうち、通常は開山堂に置かれている実忠和尚坐像(江戸時代)は良弁の弟子で二月堂修二会(しゅにえ)(お水取り)を始めた実忠の姿を伝えている。このほか、幼児のときにワシに連れ去られた良弁が母と再会した際に身元の証しとなったという言い伝えにちなむ襟掛(えりかけ)観音像なども公開し、文楽や歌舞伎の題材にもなった良弁に思いをはせることができる。
同ミュージアムの久永昂央学芸員は「展示を通じ謎が多い良弁僧正と弟子の実忠について知ってもらいたい」と話している。