10月に発表されたノーベル賞で、日本人は昨年に続き受賞を逃した。これまで多くの受賞者を輩出した自然科学3賞は今後の受賞が期待されるが、先行きは明るくない。8月に文部科学省の科学技術・学術政策研究所が公表した指標では、引用が多い論文数で過去最低の世界13位。資源に乏しい日本にとって、科学技術は生命線だ。どう巻き返すべきか。12月10日のノーベル賞授賞式を前に平成13年にノーベル化学賞を受賞した野依良治氏に話を聞いた。
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科学者にとって世界最高の栄誉とされるノーベル賞の自然科学部門は、昨年に引き続き日本人受賞者がいなかった。だが、国が平成13年に策定した第2期科学技術基本計画は、「50年で30人程度のノーベル賞受賞者を目指す」とし、22年たった今年の段階で既に19人が受賞している。その間には、最大で5年間にわたって受賞がなかったこともあり、悲観することはない。
賞の趣旨の「人類に最も貢献した研究成果」であるかどうかの評価が定まるには時間がかかる。多くの授賞対象は20~30年前の成果で、受賞者の多寡は、現時点の科学力を示す指標とはならない。あくまで「遅行指標」なのだ。