このシリーズでは、科学技術の発展に多大な影響を与えた著名な発明家・科学者の功績を紹介している。その中でも、ジェームズ・クラーク・マクスウェルは、物理学の発展に根幹的な役割を果たした人物として際立っている。彼は、1831年6月13日に弁護士の息子としてエジンバラに生まれた。母親が癌で亡くなったのは、マクスウェルがわずか8歳の時だった。幼いジェームズの教育は、家庭教師に任された。しかし、その家庭教師は、弟子の可能性を認めず、まるでAlessandoro Voltaの場合のように、この少年を非知的で才能のない者と考えていた。幸いなことに、マクスウェルの叔母は反対意見を持っていて、1841年に彼をエジンバラ・アカデミーに入学させたが、彼の才能はカリキュラムをはるかに超えていたことが判明した。14歳の時には、すでに最初の科学論文を発表しており、幾何学的な問題に焦点を当て、モデルやパターンへの興味を反映していた。2年後、マクスウェルはエジンバラ大学に入学し、その後ケンブリッジ大学に編入した。彼の成績は平均以上で、トリニティ奨学金やスミス賞などを授与された。その後、マクスウェルは、まずマリシャル・カレッジで、次にロンドン王立カレッジで教鞭をとった。そこで、電気力学の基礎となる電場と磁場の関係を扱った「マクスウェル方程式」と呼ばれる論文を執筆し、その発展に貢献した。マクスウェルは、Andre Ampere、Michael Faraday及びCharles-Augustin Coulombらの業績を収集・整理し、電磁波理論の基礎とし、量子力学の基礎も築いた。彼の功績というか、それを覆そうとしたことが、ラジオ技術の発展を可能にし、ハインリッヒ・ヘルツに名声をもたらしたのである。興味深いことに、マクスウェルの同時代の人々の多くは、彼の業績にもかかわらず、研究や分析がうまくいっていないと主張し、たとえば、ヴィルヘルム・ウェーバーを不当に批判したことで確認されている。しかし、その一方で、正しい結論を導き出したことは、彼の功績と科学の発展に与えた影響によって証明されている。
マクスウェルの関心は、電磁気学にとどまらなかった。彼は色の知覚についても研究し、1855年には、写真に色を写す方法についての理論を構築した。その6年後には、タータンのリボンを写した初のカラー写真で、理論的考察を実際の画像に置き換えることに成功した。また、熱力学を研究し、気体分子の速度と温度およびモル質量への依存性を記述する公式、いわゆるマクスウェル分布を導き出した。また、マクスウェルの悪魔と呼ばれる、熱力学の第二法則を覆すとされる思考実験も興味深い事柄である。また、文学、特に詩への関心も特筆され、その専門家であっただけでなく、作家でもあった。
マクスウェルという人物は、発明家シリーズの中でも際立っている。なぜなら、この学者は何よりもまず数学者であったからだ。というのも、彼はまず数学者であり、「創造者」ではなく「発見者」として知られているからである。しかし、彼の研究は、現代のテクノロジーを支える基礎となっている。彼が数式で説明した電磁気は、モーターやアクチュエーター、サーボ機構に組み込まれ、工業オートメーションが発展し、我々の日常生活の「ロボ化」さえも可能になったのである。冷蔵庫のコンプレッサーも、洗濯機のモーターも、マクスウェルの研究が可能にした基本的な計算の上に成り立っているのだから。電磁リレーや過電流ヒューズもこの公式で設計されているのである。計測器、クランプメーター、電流・電圧のアナログ表示器も同様である。 ...これらはすべて、19世紀のアバディーンやロンドンで記述された物理的関係によって人類に開かれた可能性のほんの序章に過ぎない。GSMネットワーク、衛星ナビゲーションシステム、多くの無線通信規格を機能させる電波の存在は、マクスウェルによって証明されたというよりも、「予測された」というべきものだったのだ。世界を変え、人類に惑星間飛行への道を開いた現象は、単にマクスウェル方程式から生まれたのである。
アインシュタインは、自分に影響を与えた人物を尋ねられた時、「ニュートンの功績を詳しく説明するつもりはないが、自分の名声はマクスウェルの肩の上に立っているおかげだと思う」と率直に答えている。
