SPECIAL

INTERVIEW

矢吹千尋役 星野真里さん

物語はいよいよクライマックスへ突入。ひかり(渡辺麻友さん)が舞台にのめり込む一方、麻美(三倉茉奈さん)殺害事件の真相も気になるところです。國彦(桐山さん)の面倒を見る千尋は15年前の事件にどんな関わりがあるのでしょうか? 星野さんに話を伺いました。

第3話で最初に登場した際、千尋は麻美の姉であり、國彦の近くにいるということしか明らかになっていませんでした。
15年前の事件に千尋が何やら関係が…、ということは最初にプロデューサーさんから聞いていて、そんなバックグラウンドをふまえて現場に入りました。ただ、なぜ國彦さんのそばにいるのか、どういう状況で暮らしているのか、千尋が何を思っているのかなどは台本を読むたびに知っていったので、そのつど“⁉”となり、驚きつつ演じていました(笑)
千尋は政治家の娘だったり、父親の秘書をしていたり。だんだんと判明していきました。
視聴者の皆さんも「そんな設定だったの⁉」と驚いたのではないでしょうか。私が台本を読んで感じたように(笑)。この物語はいろいろと設定が意表を突いているので、土曜の夜11時台の作品ですから、リラックスして「そう来たか!」と楽しんでいただけていたらうれしいです。同時に本格的な謎解きの物語でもあるので、犯人が誰なのか推理してみて、くつがえされることもあるかもしれません。それはそれで、「やられた!」と楽しんでほしいです。それがサスペンスタッチの作品の醍醐味だと思うので。

千尋を演じていて、彼女の芯にあるのはどんなものだと思いますか?
千尋は自分の気持ちを素直に表すことができない人なのだと思います。きっと子どもの頃から厳格な父に従い、自分の役割を果たしてきたのではないでしょうか。それはそれで千尋にとっては良かったものの、彼女の隣には妹の麻美がいました。麻美は女優をやっていたぐらいですから、自由奔放でそれが許されるキャラだったはずです。千尋は「何で麻美ばかり…」と思いながら、それを言葉にすることもできず、ときに妹の生き方をうらやみ、ときに憎しみながら生きてきたのだと思います。心にあるのは、妹への葛藤ですよね。國彦さんに対する気持ちというのも、冷静に考えるとすごい話です。千尋は麻美に國彦さんのことを聞いていただけで好きになっているんですから。ある意味、純粋なんでしょうね。

側から見れば異様に見える行動も、千尋なりに筋を通したもの

このドラマの登場人物は誰もがいびつな面を持っています。それは千尋も同様ですね。
プロデューサーさんの説明によると、政治家の秘書としては優秀らしいです(笑)。ただ、決められた枠からはみ出せない、というか。ずっとお父さんに褒められて、優等生でいようという強迫観念のようなものが常にあって、そのまま大人になってしまった。
さらに千尋は、麻美を殺害した可能性も…。
この作品に出てくる人はいびつ、というだけでなく、誰もが何かを隠していたり、嘘をついていたりします。千尋もかなり大きなものを抱えていて、だから行動も怪しく見えますけど…(笑)。演じていても、「これはどうなの?」と思う行動をしますが、それはそれで千尋なりに筋を通したものです。ここからさらに、千尋の言動が物語にどんな影響を与えるのか、注目していただきたいです。私としては、このドラマのタイトルのように、千尋の心に降る雨がいつかやむことを願っています。

星野さんは千尋のことを、同じ女性としてどう見ていますか?
まず、自分の気持ちを吐き出す場所がなかったのだろうな、と思います。自分の気持ちをさらけ出せる相手がいるのなら、大切にしなくちゃいけないですよね。そうじゃないと、千尋みたいになってしまいますよ、ということをこの役を演じる者として、皆さんにお伝したいです。
ただ、千尋のように自分の中に溜め込んでしまうことは、男女問わず誰にでもありますよね。
それこそ、紙一重じゃないですか。正常と狂気だって、近いところに存在している気がします。心の持ちようで、そのときの思いが良くも悪くもなる。歯車が狂うと、取り返しのつかなくなることって、日常でもありますから。

何かを乗りえなきゃいけないとき、いつも誰かが私のそばにいてくれました

ところで、主人公のひかりの心はまだまだ晴れていません。ひかりの状況をどう思いますか?
一言で言うなら過酷。ひかりさんのセリフに「この15年〜」っていうのがよく出てきます。言葉で言うのと、実際の15年という時の長さは比べものになりません。それに大人になってからの15年と、ひかりさんのように子どもの頃からの15年では、重みも全然違うでしょうし。渡辺さんはそれだけ重いものを背負って演じているので、きっと大変だと思います

星野さんは辛いことや大変なことが起きたとき、どう乗り越えてきましたか?
何事も自分だけで乗り越えてきたことはないです。誰かがそばにいてくれました。だからいまも幸せに暮らせているのだと思います。生きていく上で、「この人がいれば大丈夫」。そう思える人との出会いが大事なんでしょうね。ときにはそういう存在が近くにいても見過ごしてしまうことがあるから、気づけることも大切。「いつかこの雨がやむ日まで」は愛と狂気を描いている作品ではありますが、同時に自分を思ってくれている人がいるのなら、その人を大事にしなさい、ということを教えてくれる作品でもあると私は思います。