山下清が描いた五輪開会式の絵 入谷の高岡さん、開催祝い都へ寄贈 五輪シリーズ16枚の貴重な1枚

2021年7月20日 06時44分

東京五輪開会式を描いた山下清の作品を手にする高岡忠司さん=本人提供

 明治期に創業し、勲章用のリボンなどを製作してきた老舗「高岡徽章綬(きしょうじゅ)製作所」の四代目、高岡忠司(ただし)さん(83)=台東区入谷=が、放浪の画家山下清(一九二二〜七一年)が一九六四年の東京五輪を描いた絵を都に寄贈する。高岡さんが以前購入したもので、専門家によると、五輪をシリーズで描いた絵のうちの一枚。価値ある作品という。(井上幸一)
 高岡さんは東京五輪とは縁が深く、六四年の五輪は金、銀、銅メダルのリボンを受注し、五輪の五色の線が入ったシルクの製品を入谷で作った。

前回の東京五輪の際、高岡さんが製作したメダルのリボンの一部=いずれも台東区で

 絵は、五輪開会式で日本選手団が行進する様子がサインペンや水彩絵の具で描かれている。高岡さんが三十年ほど前、散歩中に浅草の美術商の店頭で偶然見つけ購入した。絵画の収集は趣味ではないが、東京五輪と深く関わり、開会式をテレビで見て感動した思い出から「結構な値段だったが、私が買うべきでは」と直感したという。
 絵は自宅のリビングに飾ってきたが、再び東京五輪の開催が決まり「多くの方に見てもらったほうがいい」と都への寄贈を模索。都議会議員の仲介があり実現した。「開催のお祝いの気持ちを込めて贈る。コロナ禍でにぎやかにはならないが、アスリートは一生懸命なので成功してほしい」と語る。
 「日本のゴッホ」と称された山下は浅草生まれ。知的障害児の施設で貼り絵に出合い、才能を開花させた。作品を収集、展示している「放浪美術館」(長野県茅野市)の千村(ちむら)典弘館長(51)によると、寄贈作品は、山下が手掛けた東京五輪シリーズの十六枚ある原画の一枚。写真などを参考に描いたとされ、千村館長は「残り十五枚は行方が分からず、今回の一枚は貴重」と話した。

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