<食卓ものがたり>エキス注入 夜のお菓子 うなぎパイ(浜松市)

2021年12月18日 07時46分

サクサクの食感が人気のロングセラー商品「うなぎパイ」=浜松市で     

 「夜のお菓子」のキャッチフレーズで全国的に知られる「うなぎパイ」。細長くのばしたパイ生地を、三〇〇度に熱したオーブンでこんがり焼き、秘伝のたれを塗って仕上げる。サクサクした食感と濃厚なバターの風味が特徴だ。
 浜松市の老舗菓子店「春華堂」の看板商品で、発売は一九六一年。二代目社長の山崎幸一さんが思いついた。きっかけは旅先での会話という。どこから来たかを尋ねられ「浜松です。浜名湖の近く」と答えると、「ウナギのおいしいところですよね」と返された。なるほど、「浜松といえば浜名湖のウナギか」と思ったことがヒントになった。
 洋菓子やパイ菓子自体が珍しかった当時。魚にちなんだ商品開発はすべてが手探りだった。パイ生地をかば焼き風に串に刺したり、細長くしてねじったり…。試作を繰り返して今の形にたどりついた。生地にウナギエキスを練り込み、かば焼きさながらにニンニクを効かせたたれを塗る。
 浜松を代表する土産として、コロナ禍前は一日二十万本、年間八千万本を生産。二〇〇五年には、カフェや売店を併設した「うなぎパイファクトリー」をオープンさせた。観光客が激減した昨年も十八万人が訪れる人気施設だ。
 内部はガラス張りで無料で見学できるが、パイ生地を作る工程は非公開。今も職人の手作業で、その日の気温や湿度に合わせて練り方を変える。幾度も折り重ねた生地は九千層にも。同社ブランド戦略室の高山慎吾さん(37)は「機械化できない工程で、あの独特の食感が生まれる」と話す。
 「夜のお菓子」の言葉には、家族だんらんのひとときに食べてほしいという願いが込められている。誕生から今年で六十年。浜松といえば「浜名湖のウナギ、そしてうなぎパイ」と言われるよう、引き継いできた味を守っていく。
 文・写真 河野紀子

◆買う

 うなぎパイファクトリー併設の売店では、うなぎパイ(12本入り962円)のほか、同ナッツ入り(8本入り981円)といった姉妹品や、詰め合わせセット(1782円)などを買うことができる=写真。ファクトリー限定で販売している、うなぎパイのキャラクター「うなくん」のグッズも人気という。
 JR東海道線の高塚駅からタクシーで約20分。年末は開館日や時間を変えて営業する。(問)同社うなぎパイファクトリー=電053(482)1765

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