加藤登紀子さんがウクライナの人たちに心を寄せる理由 新作に込めた思いの背景にある「体験」とは

2023年5月14日 06時00分

コンサートに向けた思いを語る加藤さん

 シンガー・ソングライターの加藤登紀子さん(79)が21日、千葉県の君津市民文化ホールで「加藤登紀子コンサート2023 百万本のバラ物語」を開く。ロシアによる侵攻を受けて故郷を追われたウクライナの人々に、旧満州(中国東北部)から引き揚げた自身を重ねる加藤さん。「歌は心をつなぐ」と信じ、嵐の中の祈りの歌や、愛の歌の数々を届ける。「全人生をかけた平和の祈りです」(山本哲正)
 「敗戦で家を失って、1年間難民として暮らして引き揚げた自分の思い出を、戦争で被災したウクライナの人たちに重ねてこの歌を仕上げました」
 今月10日、千葉県鴨川市内で2部制で開いたシークレットライブの合間、加藤さんはステージ衣装のまま取材に応じた。「この歌」とは、2022年5月発表の最新アルバム「果てなき大地の上に」のタイトル曲を指す。同年1月、中国に残留した数百万人の日本人が引き揚げる様子を描いた中国人画家の作品に出合って曲を作りかけていたところに、ロシアによるウクライナ侵攻が始まったという。
 衝撃を受けた加藤さんは、反戦ソングの「イマジン」や「花はどこへ行った」などを歌い、何ものにも屈しない愛の強さを伝える「百万本のバラ」をロングライブバージョンで、このアルバムに収録した。売り上げは全額、ウクライナ支援のために寄付している。
 国境を越えて平和を願う人がいる一方、「社会は人を分断する暴力に満ちている」とも実感する加藤さんは「だからこそ、歌がある」と語る。歌が持つ、心と心をつなぐ力を信じているという。
 「国とかで無理やり分断されたり対立したり。でも、平和であってほしいとか戦争は困るとか、貧しくなりたくないとか、みんな同じ思いは持っている。あなたの一番好きな自分に帰れる時間になってほしい。そう思って私は歌います」

 かとう・ときこ 1943年、中国東北部ハルビン市生まれ。65年、第2回アマチュアシャンソンコンクールで優勝し、歌手デビュー。翌年に「赤い風船」で日本レコード大賞新人賞、69年に「ひとり寝の子守唄」で、71年に「知床旅情」で日本レコード大賞歌唱賞を受賞。「愛のくらし」「百万本のバラ」「時には昔の話を」「難破船」などヒット曲多数。

 当日は午後4時開演。ウクライナが舞台のミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」で歌われた名曲「サンライズ・サンセット」やアニメ映画「紅の豚」(宮崎駿監督)のエンディング曲になった「時には昔の話を」なども歌う。「百万本のバラ(ロングバージョン)」は君津市民合唱団と披露する。
 チケットは全席指定6500円。問い合わせは、君津市民文化ホール=0439(55)3300=へ。
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