<夏の甲子園>笑顔の慶応 初戦突破

2023年8月12日 07時35分

北陸に勝利し、スタンドへ駆け出す慶応ナイン=いずれも甲子園球場で

 第105回全国高校野球選手権大会第6日の十一日、神奈川県代表の慶応は北陸(福井)との初戦を9-4で制した。一回に4番加藤右悟(ゆうご)選手の左前打で1点を先制すると、五回まで毎回得点で9点をリード。無失点で迎えた九回に4点を失ったが、猛追を振り切った。次戦は大会第10日の十五日の第2試合で、広陵(広島)と対戦する。

◆自信を持って楽しく 慶応2年・小宅雅己投手

好投する慶応先発の小宅投手

 立ち上がり。三者凡退に仕留めてマウンドを降りると、少し首をひねった。「何だか調子が悪い。ストレートが走っていない」。自信があるはずの直球にキレがなく、ファウルで粘られてしまっていた。
 憧れの舞台で緊張はあった。だが、焦りはなかった。ベンチの中で静かに目をつむり、春のセンバツでの仙台育英(宮城)戦を思い出した。昨夏の王者相手に、負けはしたが堂々と投げた自分の姿が脳裏に浮かんだ。「あれからもっと強くなった。自分はここで打たれるような投手ではない」。自信を持って、冷静な気持ちを取り戻した。
 直球のキレが悪くても、変化球主体の配球に切り替え、打たせて取る投球に。糸を引くような制球で、相手打線を寄せ付けなかった。終わってみれば7回80球無失点で、エースとしての責務を果たした。
 春から夏にかけて、短い距離でのキャッチボールや、ウエートトレーニングの時間を増やし、球速を上げた。メンタルトレーニングにも積極的に取り組むことで、試合中に焦ることも減った。この日も七回2死三塁のピンチに、マウンド上で笑顔を見せた。「野球を楽しもう」と、落ち着いて相手を打ち取った。
 次の相手・広陵(広島)も、2年生エース。「絶対に、絶対に負けたくない」。さわやかに、静かに闘志をたぎらせた。(昆野夏子)

◆「感謝と激励」大歓声 後押し

声援を送る慶応のアルプススタンド応援団

 慶応の試合開始時間に合わせて、満員の観衆でスタンドが埋まった甲子園球場。一塁側アルプス席には地元の横浜市や学校の関係者ら三千百人が詰めかけ、球場全体を揺らすような大歓声を送った。
 吹奏楽部の部員やOBらが演奏する傍ら、アルプスの最前列で大太鼓を鳴らしていたのは、ベンチに入れなかった野球部員。六人が志願し、交代で力いっぱいたたいた。3年の高橋赳二選手は「最後の夏、グラウンドでプレーしている仲間たちに、感謝と激励の思いを込めた」と大粒の汗を流した。
 慶応義塾女子のバトン部は、チアリーディングで参加。2年の中村心優(みゆう)さんは「春のセンバツもここで応援したけど、やっぱり夏は特別。熱気と一体感がすごいので、応援にも力が入る」と笑顔で話した。
 七回に代打で出場し、左飛に倒れた清原勝児選手(2年)の父で、プロ野球の西武ライオンズなどで活躍した和博さん(55)は「息子が多くの高校野球ファンの皆さんから拍手をもらって、バッターボックスに入る姿を見られるとは。幸せ。よくバットを振ったと思うし素晴らしいスイング。次戦も慶応らしく普段通りの野球をやってほしいと思う」とコメントした。(昆野夏子)
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