小池知事の肝いり計画が暗礁に 晴海ふ頭公園に1億6000万円かけた「TOKYO」モニュメント…着工を受け地元は

2023年11月4日 06時00分

TOKYOの文字をかたどった文字モニュメントの完成イメージ(都提供)

 2021年の東京五輪で選手村に使われた晴海エリアに「TOKYO」とデザインしたモニュメントを建てる東京都の計画が、暗礁に乗り上げている。1億円以上の予算をかけ、子どもたちの遊び場になっている公園に巨大な構造物を置くことに住民らが反発。始まったばかりの工事は中断した。「なぜ、この場所に」の議論は交流サイト(SNS)でも話題を呼んでいる。(加藤健太)
 レインボーブリッジを望む晴海ふ頭公園。ここにある1万平方メートルの芝生広場の一角がモニュメントの建設予定地だ。
 10月25日、現地を訪れるとフェンスで囲われていた。重機を使い、地面を膝丈ほどの深さに掘る基礎工事の真っただ中だった。それが6日後の31日に再び訪れると平日なのに作業員の姿が見えない。

◆基礎の掘削後に工事ストップ

 事業主体の都港湾局の担当者は「基礎の掘削が終わった段階」として、次の工程までの待機期間と説明したが、実態は違うようだ。地元の中央区の関係者は「住民の意見を聞くべきだ、と都議会の一部会派から指摘されて工事を中断している状況」と説明した。
 ライトアップ設備などを含め1億6000万円を投じ、湾岸部の「新たなランドマーク」を目指す小池百合子知事の肝いりの事業だが、計画を知らない住民が多かった。10月に工事用フェンスが現れると「寝耳に水だ」と困惑の声が広がった。

◆「遊び場を削ってまで必要か」

 公園に隣接する、五輪選手村を改修した「晴海フラッグ」のマンションは来年1月から入居が始まる。移り住む1万2000人のなかには子育て世代が多い。周辺に芝生のある公園は少ない。既に晴海は子連れの人気スポットだ。公園が手狭になる心配がある。

高層マンションが建ち並ぶ湾岸エリアに整備された晴海ふ頭公園(下)。丸印がモニュメントの設置予定場所=東京都中央区で、本社ヘリ「おおづる」から

 公園で子どもを遊ばせていた40代男性は「遊び場でもある芝生広場を削ってまでつくらなくてもいいのでは」と首をかしげた。SNSでも「これほどの予算をかける意味があるのか」といった投稿が増えている。

◆アンケートでは賛成わずか15%

 インターネットで地域情報を発信する「中央区民マガジン」は、周辺住民に加えて晴海フラッグの入居予定者も対象に10月31日からアンケートを始めた。2日までに340件を超える意見が寄せられ、都の計画に賛成するのは15%ほどに過ぎないという。山下信治編集長は「子どもの遊ぶスペースが減ることについて考えていきたい」と話す。アンケートは4日まで行い、結果を都に提出する。

モニュメントの設置工事現場。その後、工事は中断された=東京都中央区で

 晴海のモニュメント設置事業 東京都港湾局によると、大きさは横幅10メートル、奥行き6.8メートル、高さ3.5メートル。TOKYOの文字をかたどったアルミ製のモニュメントをコンクリートの土台にのせ、文字の背面を8段の階段状に仕上げる。来年2月末の完成が目標。文字モニュメントは神戸市や淡路島などでフォトスポットとして人気を集めている。東京臨海部の魅力を高めようと発案され、晴海を設置場所にしたことに同局は「事業の目的を達成するにはベストポジション。この場所で理解を得るのに努めたい」としている。


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