足利学校で伝統の「釈奠」 改修された大成殿で3年ぶり開催

2020年11月24日 07時13分

大改修を終えた大成殿で行われた釈奠。約50人の観覧者が外から見守った=足利市で

 足利市の史跡足利学校で二十三日、「釈奠(せきてん)」の儀式があった。儒学の祖・孔子とその高弟を祭る市指定民俗文化財で百年以上の歴史がある。今年はコロナ禍で開催が危ぶまれたが、祭官らは異例のマスク着用で臨み、先師・先聖を厳かにたたえた。
 儀式は、改修された「大成殿」(孔子廟(びょう))で三年ぶりの開催。市民らでつくる釈奠保存委員会の吉田哲也会長(79)ら十四人が祭官を務め、祭壇に米や肉、野菜などの供物をささげた。
 釈奠は「お供えを置く儀礼」の意。儒学の経典「礼記」に「菜(野菜)を釈(お)(置)き、幣(へい)を奠(お)いて先師に礼す」の記載がある。
 中国・漢の高祖劉邦が紀元前百九十五年に行ったとされ、足利学校では十七世紀後半から開催されていたことが文献から推測される。さまざまな変遷を経て、現行の形になったのは一九〇七年で、以降、ほぼ毎年行われている。
 足利学校の他に、東京都文京区の湯島聖堂、岡山県備前市の閑谷学校、長崎市の長崎孔子廟(びょう)などでも釈奠が行われている。
 吉田会長は「足利文化のよりどころでもある。無事開催できてほっとしている」と安堵(あんど)の表情。
 観覧者の一人で茨城県古河市の元幼稚園長江田隆記(たかのり)さん(77)は「神聖で厳か。心が引き締まる思いがした」と話していた。 (梅村武史)

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