松雪泰子 映画『甘いお酒でうがい』主演! あのネタキャラが切なくも愛おしい等身大の40代ヒロインに!

 お笑い芸人シソンヌじろうが、ネタの中で演じてきたキャラクターである“川嶋佳子(かわしまよしこ)”がもし日記を書いたら…という視点で執筆された同名小説を『勝手にふるえてろ』の大九明子監督が映画化。ベテラン派遣社員として働く40代独身OL、川嶋佳子を演じるのは1991年に女優デビュー以降、トップ女優として輝き続ける女優・松雪泰子!
松雪泰子

“川嶋佳子”と運命的な出会い!?


「お話を頂いて脚本を読ませていただいたのですが、とても静かな語り口ながら、読んでいくうちに佳子さんのイマジネーションの世界がどんどん広がっていきました。決して説明は多くないのに行間から佳子さんの思考や感性が伝わってきて、自然と佳子さんの世界に没入している感覚を覚えて、これはもうすごく面白い作品になるだろうな、と思いました。もともと私は、見る人や読む人が自分なりに想像できる余地がある作品が好きで、まさにそういう脚本でしたね。ぜひ佳子さんを演じさせていただきたいとすぐに思いました。しかも原作の表紙におかっぱヘアの女性が描かれているんですが、その当時、私も同じおかっぱヘアだったんです。運命を感じました(笑)」

 ぜひこの髪型で、と相談したところ大九明子監督も二つ返事。まさに原作から立ち現れたかのような“川嶋佳子”が誕生した。さすがに、シソンヌのコントでじろう扮する“川嶋佳子”のビジュアルからはかけ離れているが、不思議と“川嶋佳子”のエッセンスは相通じているような…。

「確かにじろうさんが扮する佳子とは、一見ギャップはあるかもしれませんね(笑)。映画は全く別の世界観。今回は“そこに存在する”ということしか役作りしようのない役でした。じろうさんがお書きになった原作や脚本から感じ取ったものを100%吸収し、撮影現場で監督が生み出す世界の中で、ただ佳子として生きる、という1点のみでした」

 自身がとらえた川嶋佳子とは。

「彼女がどうやって生きていて何を感じているのか、分析するのは楽しかったです。やっぱり少し変わった人物でもあるので(笑)。想像力が豊かで、豊かすぎてときにはおかしな方向に転がっていってしまったり、軸があるようで無かったり、あちこちブレながら、でも一生懸命まっすぐ立とうとしている。おびえながらも前に進んでみる。かと思うと好奇心旺盛なところや大胆なところもあるんです。後ろ向き、なんて言っていますけど単にネガティブで暗い人ではなく、ユーモアにあふれていて、そこがすごく魅力的だと思います。スイッチが入った瞬間に愛を求める方向に向かっていくところなんて、すごく素直な人なんだなと思う。身の回りで起きる変化も、自分自身の変化も受け入れることができる人だと思います」

 得られなかったもの、失ったものもあるけれど、といって不幸なわけではない。日々のささやかな幸せを楽しみながら生きている。そんな40代女性のリアルを綴った原作・脚本の、じろう。

「テレビなどで芸人さんとしての姿をよくお見かけしていましたし、作家さんとして活躍されていることも存じ上げていました。大九監督とは『美人が婚活してみたら』でも監督脚本コンビを組んでいらして、監督も、女性的な言葉選びを男性であるじろうさんがなぜここまで表現できるのか不思議、とおっしゃっていました。私も、この年代の女性の孤独感や、哀愁、喜びって少し独特な感覚だと思うんですけど、それを見事にとらえていらっしゃると思いました。佳子が、もう自分は子供を望めない年齢なんだ、と考えるシーンがあるんですが、そのシーンは私も胸に迫るものがあって。監督も涙を流されていました。私は子供はいますが、当然、年齢とともに機能が失われていく感覚は実感していますし、もう産めないという現実を迎える年齢にあって、産めなくなると女である自分はどうなるんだろう、といったことはやはり誰しも考えますよね。単純に、それが悲しいということとは少し違うのですが、失われる、という感覚は同じ女性としてすごく重く響くものがありました」

1 2 3 4>>>