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エカチェリーナ2世を演じたエル・ファニングの挑戦──初の主演ドラマ、プロデューサー、そしてセックスシーン。

宮廷ドラマ「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」で主演を務めたエル・ファニング。初めてドラマシリーズに出演し、プロデューサーとしてもデビューを果たした彼女が、撮影の裏側や本作に込めた思いをVOGUEだけに教えてくれた。ロシア黄金時代を築いた女帝エカチェリーナから学んだこととは?
Elle Fanning  The Great is a satirical comedic drama about the rise of Catherine the Great from outsider to the longest...
Photo: Jason Bell/Hulu

──エカチェリーナ2世は歴代のロシア皇帝の中で最長の在位期間を誇り、領土を最大限に押し広げた最強の女帝とも言われます。実際にはどのような女性だったと思いますか?

彼女はまさにフェミニストの代表格。男性社会に真っ向勝負して、彼らの上に立ち国を治めていった類のない女性でした。さらに自分の信念を貫き通し、国のために彼女が正しいと考えることのためならば、多くのことを犠牲にすることもいとわなかった、偉大な歴史上人物だったと思います。そんな彼女を「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」で演じることができ、とても嬉しく思います。ただ脚色を加えているので、史実とは異なるシーンも含まれています。

エカチェリーナが女子教育に力を注ぎ、芸術や科学の発展に尽くしたことは紛れもない事実ですが、ドラマは歴史の授業ではありません。本作では、視聴者の皆さんに気に入ってもらえる楽しいキャラクターにしたかったんです。「THE GREAT」バージョンのエカチェリーナ像を作り出すことで、観る人に共感してもらえる作品になったと思います。ですが実際に彼女が発言したことや最強の女帝として残した功績などの史実と、フィクションを交えているので、リスキーな作風かもしれません。

「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」は、スーパー!ドラマTVにて2月15日 22時より独占日本初放送。Copyright © 2021 MRC II Distribution Company, L.P.

──エカチェリーナのどんな一面を見てほしいですか?

全10エピソードを通して、エカチェリーナがめざましく成長を遂げていく過程に虜になりました。最初は内気な幼い少女で、結婚すればバラ色の人生と思っているロマンチストですが、ロシアに到着してまもなく出来損ないの皇帝と結婚し、現実に直面します。その中で、間違っていると思うことは見逃さずに変えようと努力するんです。そのパワーこそが、彼女がもつ最高の資質なのではないかと思います。自信あふれるエカチェリーナを演じるのは楽しかったけど、彼女がいつも正解をわかっているわけではないし、どんな時だって勇敢というわけでもない。人間だからミスもするし、常に全てのことを把握しているわけではない。そんな一面も見せたかったんです。それでこそ、強さの中に美しさが光ると思います。

──ニコラス・ホルト演じる、ピョートルとの絶妙な掛け合いがユーモラスでした。撮影中に笑いをこらえきれなかったシーンはありましたか?

全てのシーンね(笑)。お互いに笑わせようとして、あまりに笑いすぎてしまい、撮り直しになることが毎度だったわ。私たち二人とも子役としてキャリアを始め、似たような境遇で過ごしてきたからか、考え方も似ていて、作り上げたい像が全く同じでした。だから、セットでも安心して自分をさらけ出すことができたし、試行錯誤することができたんです。特にコメディとなると、失敗しても大丈夫だという安心感があることが大事だと思います。ニコラスは私にとって最高の相手でした。

エカチェリーナは宮廷の陰謀や夫ピョートルの愚行に悩まされる。Copyright © 2021 MRC II Distribution Company, L.P.

──セックスシーンにも挑戦されましたね。

夫とのセックスと、愛人とのセックスに大きな違いを表現しなければいけなかったし、セックスシーンは本作で重要な役割を担っています。時代の先を行っていたエカチェリーナは、性に開放的で多くの愛人がいたので、それも見せる必要があった。恥ずかしくなるようなシーンもあったけれど、初めてインティマシー・コーディネーター(撮影現場で俳優の身体とメンタルを守りながら、制作を調整する仲介人)と働くことで、助けられました。安心して心地良い環境で撮影できましたね。

──ストーリーだけでなく、荘厳な衣装や舞台からも目が離せませんでした。

本当のお城で撮影することもあったけど、ほとんどのシーンをロンドンのスタジオで撮影しました。各部屋ごとに豪華な宮殿が再現されていて、衣装を纏ってセットに入るだけでタイムスリップした気分になり、とても楽しかったです。ただ、コルセットを毎日着用しなければいけないのは、大変でした。美しく見せてくれるアイテムだけど、あの時代の女性を羨ましいと思うことはないわ。

──注目すべき宮廷ファッションのスタイリングは?

エカチェリーナの衣装は宮廷の他の女性に比べて、シンプルで実用的なスタイルでした。ジュエリーもさほど着用しなかったし、ドレスでなく、ブラウスとスカートを合わせてカジュアルな衣装が多かった。他のキャラクターよりも煌びやかさは劣るかもしれないけれど、リラックスしたスタイルが彼女のキャラクターにマッチしていて好きです。ただ、ウィッグの準備には時間がかかったけれど。

2020年のエミー賞では、コメディーシリーズ部門の監督賞と脚本賞にノミネートされた。すでにシーズン2も決定している。Copyright © 2021 MRC II Distribution Company, L.P.

──初めてプロデューサーを務めましたが、どのような役割を担当しましたか?

かなり早い段階からプロデューサーとしてチームに入っていて、キャスティングからシーンのチェックまで、全てがうまく完璧に進むように務めました。私と歳があまり大きく変わらない女性が主人公だからこそ、自分の意見を共有しながら、若い女性の視点を取り込んでいけたと思います。多くのことを学び、何だか自分がエカチェリーナに近づいていっている気がしました。初めて経験する仕事で、ときどき「今、自分はこれを言うべきか? やめておきべきか?」と思うことがあったのですが、自分の考えは重要だとちゃんと認識して、声を上げて自分の意見を主張することの大切さを学びました。

──俳優として、そしてプロデューサーとして、本作品を通じて伝えたいメッセージは?

エカチェリーナの成長ぶりを見てほしいです。彼女から多くのことが学べると思います。いつだってチャレンジしようとする姿勢があって、自身が良いと思うことや正しいと思うことを行い続けようとする強い意志。まさに彼女こそが、真のアクティビストなんだと思います。作品を通して現代の女性たちをどんな夢であれ、諦めずに追いかけようとインスパイアできたら嬉しいです。

Interview & Text: Mayu Kato