「カロッツェリア・サイバーナビ」2008年モデル、スマートループをプッシュ

2008.05.19 自動車ニュース 尾澤 英彦

「カロッツェリア・サイバーナビ」2008年モデル、スマートループをプッシュ

パイオニアは3年ぶりにフルチェンジした、同社の上級カーナビ「サイバーナビ」を発表。2008年5月下旬より発売する。2種に集約された新型は、スマートループの機能の改良と充実が注目点である。

■インダッシュと2DIN型の2種に集約

「サイバーナビ」はパイオニアが持てる技術力を結集させたハイエンドナビとして常に業界をリードしてきただけに、実質3年ぶりとなる今年のフルチェンジには大きな注目が集まった。

まず見直されたのがハードウェアとラインナップ。これまでモニターがインダッシュとオンダッシュ、それに2DIN一体型と3種あったものが、インダッシュと2DIN一体型の2種類(単体モデルについてはキャプション参照)となった。さらに従来は地デジチューナーあるなしも選べたのが、今回からすべて内蔵へ。つまりインダッシュの「AVIC-VH9000」と、2DINの「AVIC-ZH9000」2種類のみという、きわめてシンプルな商品構成となったわけである。

地デジは「同梱」ではなく本体に「内蔵」というのも大きなニュースだ。その代わりVH9000の場合、DVD/CDプレイヤーが1DINの筐体から追い出され、インダッシュモニターに移されることになった。これはダッシュにモニターだけ設置すると(車に1DINスペースしかない場合)、本体はシート下やトランクなどに置くことになり、そうなるとDVDビデオを見るときやミュージックサーバーのために音楽CDを出し入れするのが非常にやりにくかった、そういう反省からの変更である。インダッシュモニターにDVD/CDスロットを設ければ、こうした不満は解消されることになる。

■スマートループは新サイバーの生命線

今回のサイバーナビの最大の変更点は、スマートループの改良および充実である。かねてからスマートループ=“知の共有”と謳っているように、パイオニアではクローズドメディアではナビとして限界があり、これからは情報も進化していかなければ発展はないとしている。
カーナビ各社とも考えは同様で、インターネットから旬な情報を得たりしているが、パイオニアが推進するスマートループは他の情報源が加わる。つまり、ユーザーが経験として得たデータを他のカロッツェリアユーザー(サイバーナビの他、楽ナビ、エアーナビも含む)も共有する。そうして蓄積されたデータが情報の精度を高めていく、というものなのである。
なお、スマートループの詳しい解説は、XH099(先代モデル)の実用テストを参照されたい。

この機能最大の欠点は、接続性の悪さである。さらに接続に必要な機器も別途求めなければならなかった。そんな使い勝手の悪さを改善すべく、ニューモデルではキットを一新、同梱のUSBアダプターを使ってPC経由でスマートループに接続できるようにした。
こうして従来よりは格段に情報のダウン/アップロードが容易になったわけだ。さらにユーザーの参加を促すべく、アップロードの実績を残したユーザーには3年分のバージョンアップを無料にするという思い切った特典さえ付けている。その内容は、メインバージョンアップが2回、地点データの更新が18回という豪華なもの。つまり半年に一度の道路データが無料で提供されるわけで、しかも開通日が明白な新規道路については開通日当日に自動的に地図に表示されるという凝ったものだ。

新しいスマートループ情報として、「駐車場混雑予測情報表示」も提供される。これはスマートループユーザーの走行履歴データを基に、5040カ所の駐車場については時間帯別の混雑度がわかるというものである。

移動時の通信手段も見直された。これまでは携帯電話のパケット通信を使ってスマートループから渋滞情報などを得ていたが、新型ではウィルコム製の専用通信モジュールを使って通信料を安価に抑えることもできる。利用頻度の高いユーザーには吉報だろう。
こうして情報量が増えれば質も高まることが期待でき、既存のオートパーキングメモリーやスマートループ渋滞情報もより正確になると想像できる。

■その他のナビ機能も多岐にわたって充実

基本のナビ機能で新しいものは、「マルチ検索」と「概算燃料費表示機能」。

前者は、名称やジャンルなどこれまで複数あった検索の入り口をひとつにまとめたもので、名称は知らなくても思いついた手がかりを文字入力するだけで探したい施設にたどりつけるというものである。また携帯電話のような予測変換が可能、学習機能もあるので一度入力した言葉は優先して表示される。

後者は、ルート探索したときに過去の一般道/高速道の割合に応じた予想燃費が表示される機能で、ルートを選ぶ際の参考情報として利用する。これには“ナビスタジオ”というパソコンの専用ソフトを使い、燃費データをこまめに入力している必要がある。
案内地図では3D表示としては見やすい「ソリッドシティマップ」を使った交差点案内の表示可能エリアがこれまでの約3倍に広がった。

価格は以下のとおり。
AVIC-VH9000(1DIN+1DIN):37万8000円
AVIC-ZH9000(2DIN一体型):35万7000円
AVIC-H9000(単体モデル):18万9000円

(文=尾沢英彦(『カーナビの達人』編集長))

インダッシュモニターと1DIN+1DINでシステムを組むAVIC-VH9000。このモデルから1DINナビ本体に地デジチューナーも内蔵した。
インダッシュモニターと1DIN+1DINでシステムを組むAVIC-VH9000。このモデルから1DINナビ本体に地デジチューナーも内蔵した。
2DINボディにモニター、ナビ本体、それに地デジチューナーまで収めたAVIC-ZH9000。2DIN一体型のサイバーとしては初めてブレインユニットの取り外しができるようになった。
2DINボディにモニター、ナビ本体、それに地デジチューナーまで収めたAVIC-ZH9000。2DIN一体型のサイバーとしては初めてブレインユニットの取り外しができるようになった。
サイバーナビの単体モデルは汎用モデルとして存在してきたが、この「H9000」では高級AVモニター「AVX-P90DV」(15万7500円)と組み合わされることが前提とされている。AVX-P90DVはインダッシュモニターの形態を採るが、高音質の音楽プレーヤーとしても機能する。さらにカロッツェリアの最高級オーディシステム「カロッツェリアX」と総合AVシステムを組むこともできる。いわばH9000はAVにこだわりを持つ人のためのナビコンポーネントという位置づけで、機能としてもミュージックサーバーや別売のカメラユニットの映像を映し出す機能は持っていない。
サイバーナビの単体モデルは汎用モデルとして存在してきたが、この「H9000」では高級AVモニター「AVX-P90DV」(15万7500円)と組み合わされることが前提とされている。AVX-P90DVはインダッシュモニターの形態を採るが、高音質の音楽プレーヤーとしても機能する。さらにカロッツェリアの最高級オーディシステム「カロッツェリアX」と総合AVシステムを組むこともできる。いわばH9000はAVにこだわりを持つ人のためのナビコンポーネントという位置づけで、機能としてもミュージックサーバーや別売のカメラユニットの映像を映し出す機能は持っていない。
スマートループ情報を利用したクルマ(図では「08サイバーナビ」)と利用しなかったクルマ(図では「従来ナビ」)のルートの違い。施設の駐車場を目的地とした場合、通常は最短ルートを引き、その結果入りにくいルートを引いてしまうことがあるが、スマートループではそこを利用した他のユーザーの経験を活かして的確なルートを引くことができる。それが「オートパーキングメモリー」。
スマートループ情報を利用したクルマ(図では「08サイバーナビ」)と利用しなかったクルマ(図では「従来ナビ」)のルートの違い。施設の駐車場を目的地とした場合、通常は最短ルートを引き、その結果入りにくいルートを引いてしまうことがあるが、スマートループではそこを利用した他のユーザーの経験を活かして的確なルートを引くことができる。それが「オートパーキングメモリー」。
人気のある施設は駐車場の混雑が気になるもの。画面は東京の遊園地を検索した結果で、よみうりランドの駐車場混雑を過去のデータから予測したもの。
人気のある施設は駐車場の混雑が気になるもの。画面は東京の遊園地を検索した結果で、よみうりランドの駐車場混雑を過去のデータから予測したもの。
探索ルートを複数表示させると6ルート表示するのはこれまでと同じだが、比較項目として距離、所要時間、料金のほかに「概算燃料費」というのが加わった。これを表示させるには専用パソコンソフトに過去の燃料消費データを記録したりしなければならない煩雑さがつきまとうが、燃料高騰のおり、燃料費比較はいまやルート選びに活躍しそうだ。
探索ルートを複数表示させると6ルート表示するのはこれまでと同じだが、比較項目として距離、所要時間、料金のほかに「概算燃料費」というのが加わった。これを表示させるには専用パソコンソフトに過去の燃料消費データを記録したりしなければならない煩雑さがつきまとうが、燃料高騰のおり、燃料費比較はいまやルート選びに活躍しそうだ。
3D表示の案内ルートはずいぶん昔からあるが、この「ソリッドシティガイドモード」は現実的でわかりやすいので有用性が高そうだ。
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