俳優として、モデルとして、表現者として、常に挑戦をつづける三吉彩花さんが、初のボクサー役に挑んだ最新主演作が『ナックルガール』だ。戦うための強いカラダとメンタルを、彼女はどのようにつくりあげたのだろうか。

鍛え抜いた健康的な肉体に、しなやかな美しさが光る三吉さん。常にヘルシーなカラダでいるために、日頃から運動は欠かさないという。「1日休みが取れたなら、1時間は必ず外に出ます。家にいるよりも、外の空気を吸って太陽を浴びている方がずっといいですから。ピラティスに行くこともあるし、24時間のジムで黙々と有酸素運動をしたり、たまにパーソナルトレーニングを入れたり。食事では、基本的に小麦は避けますが、玄米やお肉、魚、野菜もしっかり食べるので、その分運動をしているんです」(三吉彩花・「」内以下同)

カラダづくりが役者としての精神を支えてくれる

三吉彩花

ハツラツとした笑顔も印象的な三吉さんが、『ナックルガール』でまた新たな一面をみせる。演じるのは、唯一の家族である妹を救うため、屈強な男たちにも正面から挑んでいくボクサーの橘蘭。三吉さん自身「スピード感あふれるアクションは見応えがあると思います」と太鼓判を押すのも納得。迫力あるファイトシーンは、誰しも目を奪われるだろう。

ボクシング選手のカラダを参考に鍛え上げた

三吉彩花


「今回はボクサー役だったので、ガシッとしたカラダを目指しました。ボクシングのトレーニングは初めての経験だったのですが、すごくハードでした。毎日必ずカラダを動かして、ストレッチも入念に。体脂肪も測りながら調整していきました。実際ボクシングの選手のカラダを見ると、腹筋がバキバキに割れてるとか、筋肉がすごく出ているのではなく、がっしりと太い筋肉がついている方が多いんです。実際のボクシング選手のカラダを参考に、下半身よりも上半身をメインに鍛えて、大きく強そうに見えるように準備しました」

本作は、日本のAmazonスタジオ初の日韓共同作品。韓国のアクションチームによるアクショントレーニングに参加するのも初体験。

玄米おにぎりで栄養補給。1日8食のときも

三吉彩花

「音楽をかけながら『腹筋10回、そしてラン、もう一度腹筋10回、またラン』を何セットも繰り返したり、みんなで体育館のなかをシャトルランみたいに走ったりもしました。ずっと動き続けるトレーニング方法だったのですが、韓国の男性は軍隊を経験しているからか、すごくスタミナがあるんです。一緒にやっていた日本のアクションチームも『これはすごい! きつい!』ってヒイヒイ言いながらやってました。

食べないとスタミナが切れてしまうので、小休憩には玄米おにぎりをこまめに食べて、粉飴や羊羹でちょっと糖質を入れる。エネルギーだけ補給したいので、無駄な糖質や脂質が入っていないものを選んでいました。結構ずっと食べていた気がします。1日8食くらいは食べてたかな」

カラダづくりやトレーニングは、蘭を演じる上で精神面にもプラスに働いたという。

「蘭は頭より先にカラダが動くタイプで、私はあまりそういう役を演じたことがなかったんです。衝動的に動いていく、その部分をキャッチするのが難しかったですね。トレーニングのとき、考えるよりもとにかくカラダを動かしていたので、その過程で培われた部分はありました。私も友だちに『衝動的だよね』って言われることはあるんですけど、頭のなかでは結構考えて、瞬時にスイッチを押して行動しているので、後先考えずに動いていく感じではなくて……。私は何事も冷静に判断して解決したいタイプなんです。怒る人を見るのがあまり好きじゃないから、普段から大きい声を出したり、ものに当たることもなくて。蘭のように素直に怒りをぶつけることをしないので、私にとっては新鮮でした(笑)」

“本来の自分”を見失わないために、シンプルに考える

三吉彩花

蘭との共通点は “タフな精神力”。ここで、三吉さんにとっての “本当に強い女性”についてたずねてみる。

「自分自身をすごく理解している人。自分を分析できたり、客観的に見られたり。性格は柔らかくても、芯をもっている人はすごく強いですよね。美しいし、強くていいなと思います」

三吉さんも、「最近は自分について考える時間を大事にしている」という。意識しているのは、「難しく考えない」こと。「今の世の中の風潮や時代もあるかもしれないけど、世間がいう常識や固定概念に縛られることってあるじゃないですか。それが本当に正しいのか、シンプルに考えてみる。仕事では、上司に気を遣わないといけないとか、新入社員だから自分の意見は言えないとか、流されることもあるかもしれないけど、“本来の自分”まで流されてしまったら、人生もったいないなって思うんです。自分を見失わないためにも、プライベートな時間だけでもややこしく考えないで、“私が気持ちいいこと”だけしていればいい。そうやって捉え方を変えたら、大分楽になりました」

20代前半は「人にどう見られているかを気にしすぎていた」という。27歳を迎えて“自分基準”に立ち戻れたのは、目線を変えることができたから。

「ある時、自分が思うほど、みんな私のこと見ていないから(笑)、気にしすぎじゃない? って思ったんですよ。誰のために、気にしているんだろう。誰かのために人生を生きてるんじゃない。もっと、自分が主人公でいいはずなんだ。いまはそんな風に考えるようになりました」

“一番いい自分”を常に更新していきたい

三吉彩花

蘭のように「女性が活躍する役をやりたかった」という三吉さん。そんな思いに至ったのは、世の中の女性を応援したいという気持ちからだった。「日本だけじゃなく海外に行っても、“どうしたって生じる男女のパワーバランス”を感じることがすごく多くて、日常生活では“女性だからこうあるべき”みたいな概念もあって……。もっと女性が生き生きと先陣を切っていく、それが主流になっていく時代が来たらおもしろいなと思うんです。『ナックルガール』のように、女性のヒーローがいてもいい。最近は増えてきていますが、俳優としてそういう作品に携わっていきたいですね」

映画を通して、“女性の常識”を変えていく。三吉さんが「社会が変わるのを待つ」ことをしないのは、「待っている時間はないから」。「生き急いでいるわけじゃないですけど、毎日『いまの自分が一番いい』を更新していきたいんです。昨日の自分には戻れないし、やりたいことがあればやってみて、失敗したとしてもいい経験にしたい。待ち続けて歳を重ねていくよりも、自分が行動することで10しか見えなかったものが100になるなら、私は行動しつづけたいと思います」

三吉彩花

[作品情報]

ナックルガール

Amazon Original映画「ナックルガール」はPrime Videoにて世界独占配信中 

Photo: AKIKO SAMESHIMA(nomadica)Styling: KYOKO OKAMOTO Hair&Make: KYOKO Text: HIROMI ONDA(Listen)

デニムジャケット¥115,500 パンツ¥103,400/ともにY/PROJECT(THE WALLSHOWROOM) パンプス¥23,100/Limit Till 2359(TOKEN) 

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THE WALL SHOWROOM/03-5774-4001
TOKEN/03-3840-2505

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音田 博美
編集ライター

邦画を中心に紹介する映画雑誌のエディターを経て、フリーの編集ライターに。俳優・映画監督など著名人のインタビュー取材、『カメラを止めるな!』などの映画パンフレットの編集をはじめ、ドラマのムック本にも参加。2015年に立ち上げたコンテンツ制作会社Listenでは、映画公開特番などの映像制作にも携わっている。 

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Kanna Konishi
ウィメンズヘルス・副編集長

編集者として多くのメディアに携わったのち現職。健康オタク歴20年、趣味は"毒出し"で、体と心と部屋を効率よく整え、環境にもいい健康法を探るのがライフワーク。チアリーダー経験あり、勝手に人を応援しがち。仕事では「心から推せるものしか紹介したくない!」と目を血走らせ、常に情熱大陸に上陸中。 

Instagram: @editor_kanna_purico