中小企業買収の目的と流れとは?M&Aの注意点も解説

2024/01/04更新

近年、M&A市場が活性化している背景の1つとしては、中小企業のM&A案件が増加していることが挙げられます。中小企業を買収する買手は、大企業、中小企業、個人と幅広く、その目的もシェア拡大、異業種参入、優秀な人材の確保などさまざまです。
ここでは、中小企業の定義やM&Aの目的と流れ、注意点についても解説します。

中小企業のM&Aが増加傾向

近年では中小企業のM&Aも増加傾向にあります。中小企業のM&Aが増加傾向にあるのは、事業承継を目的としたM&Aの増加が主な要因です。

中小企業庁が発表した「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ~中小M&A推進計画~ 新規タブで開く」(2021年4月)によると、中小企業のM&Aの実施件数は、2013年度に215件だったのが、2020年度では2,139件まで増えています。

2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で海外企業との取引が減ったことにより、M&A件数はやや減少しましたが、国内での取引は増加傾向です。また、MARR onlineの「2021年のM&A回顧(2021年1-12月の日本企業のM&A動向) 新規タブで開く」によると、2021年のM&A件数は前年比14.7%増の4,280件となっています。

中小企業の定義とは

どのような企業を中小企業とするかは、定義によってさまざまです。例えば、中小企業法基本法では、資本金と従業員の数を基準に、中小企業者の範囲と小規模企業者の範囲を以下のように定めています。

中小企業基本法による中小企業と小規模企業の定義

業種 中小企業者 小規模企業者
製造業、建設業、運輸業、その他 資本金額または出資総額が3億円以下
または、常時使用する従業員が300人以下
常時使用する従業員が20人以下
卸売業 資本金額または出資総額が1億円以下
または、常時使用する従業員が100人以下
常時使用する従業員が5人以下
サービス業 資本金額または出資総額が5,000万円以下
または、常時使用する従業員が100人以下
常時使用する従業員が5人以下
小売業 資本金額または出資総額が5,000万円以下
または、常時使用する従業員が50人以下
常時使用する従業員が5人以下

一方、税法上は、資本金額1億円以下の法人を中小企業者としています。M&Aで中小企業という場合、おおむね中小企業基本法で中小企業者・小規模企業者にあたる企業を指すことが一般的です。

企業を買収する目的

企業を買収する目的はさまざまです。主に以下のようなものが挙げられます。

新規事業の展開・異業種参入

企業を買収する目的として、新規事業の展開や異業種参入が挙げられます。新規事業を立ち上げる際や異業種に参入する際、すべてを自社で行おうとすると、膨大な時間と費用がかかります。特定の分野で製品・サービスの供給体制を確立し、一定の市場シェアを得ている中小企業を買収すれば、時間をかけずに新規事業の展開・異業種参入が可能です。

シェアの拡大

シェアの拡大も企業買収の目的となります。例えば、主に都市部で店舗展開している企業が、地方で数店舗を経営する同業種の企業を買収すれば、地方でのシェアも拡大することができます。

技術やノウハウ、知的財産の獲得

対象企業が持つ技術やノウハウ、知的財産の獲得も企業買収の目的の1つです。新たな商品やサービスを開発するには、その分野の技術・ノウハウが不可欠です。その企業にしかない独自の技術やノウハウ、知的財産を獲得することで、自社の商品やサービスとのシナジー効果も期待できます。

業務効率化

業務効率化を目的として、企業を買収することも考えられます。メーカーが物流会社や小売店を買収するように、サプライチェーンの上流・下流を買収するようなM&Aでは、サプライチェーンの最適化による業務効率化が期待できます。

M&Aの流れ

企業の買収をスムースに行うためには、M&Aの流れを知っておくことが大切です。ここでは、買手が企業の買収を行う際に知っておくといいM&Aの流れについて解説します。

企業を買収する流れ

  • STEP1.
    準備
  • STEP2.
    相手探し
  • STEP3.
    秘密保持契約(NDA/CA)の締結後、基礎情報を交換
  • STEP4.
    意向表明書の提示
  • STEP5.
    基本合意書の締結
  • STEP6.
    デューデリジェンスの実施
  • STEP7.
    最終契約交渉
  • STEP8.
    最終契約、クロージング
  • STEP9.
    統合(PMI)

STEP1. 準備

企業の買収を成功させるためには準備が大切です。まず、買手は買収を行う目的や条件を明確にし、交渉の際の条件などを検討します。

STEP2. 相手探し

STEP1.で決めた目的や条件に見合う交渉相手を探します。自力で情報を集めるのは困難なので、M&AマッチングサービスやM&A支援機関を利用することが一般的です。M&Aの相談先については後述しますが、M&AマッチングサービスやM&Aブティック(仲介会社)、地方銀行、信託銀行などの金融機関の他、税理士や公認会計士が挙げられます。

STEP3. 秘密保持契約(NDA/CA)の締結後、基礎情報を交換

交渉相手が見つかったら、売手と秘密保持契約(NDA/CA)を締結した後、基礎情報を交換します。M&Aにおける秘密保持契約は、一般的には買手側から差し入れますが、売手と買手の双方が差し入れる場合もあります。

STEP4. 意向表明書の提示

秘密保持契約を交わした後は、企業概要書の開示、それに基づく質疑応答を行います。その後、両社共に進展の意向がある場合、トップ面談が行われるのが通例です。その後、買手から売手へ、M&Aを行う意思と大まかな条件を記載した意向表明書を提出します。また、多くの場合、買手は期限付きで独占交渉権を付与する条項を盛り込みます。

STEP5. 基本合意書の締結

買手と売手の双方がM&Aを進めるということで合意できたら基本合意書を締結します。基本合意書には、売却金額や今後のスケジュール、デューデリジェンスへの協力義務といった条件面についての具体的な内容が記載されます。基本合意書の買収条件部分は仮契約という位置付けで、秘密保持条項や損害賠償条項については法的拘束力を持たせることが一般的です。

STEP6. デューデリジェンスの実施

最終条件交渉を行う前に、法務や財務・労務などの面で会社を調査するデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスを行うことで、M&Aにあたっての問題点やリスクなどを把握します。デューデリジェンスは、税理士・公認会計士や弁護士などの専門家に依頼するのが一般的です。

STEP7. 最終契約交渉

これまでの合意事項やデューデリジェンスでの結果をふまえて最終条件交渉を行い、最終契約書を締結します。

STEP8. 最終契約、クロージング

最終契約書の締結後、株式譲渡や事業譲渡の手続き、譲渡代金の受け取りなどを行うクロージングへと進み、M&Aは完了です。

STEP9. 統合(PMI)

M&A後の統合プロセスとして、M&Aの効果を最大化させるために、PMI(Post Merger Integration)を行います。経営体制の統合の他、業務システムや制度などの統合を行います。

M&Aの流れについては別の記事で解説していますので、参考にしてください。

M&Aの流れ・フローとは?買手が行う手続きの手順や進め方、注意点を解説

企業を買収する際の注意点

企業を買収するにあたっては、いくつか注意点があります。買収後にトラブルが発生しないよう、以下の注意点を理解したうえで買収を行うことが大切です。

売手の株主構成を確認しておく

企業を買収する際には、売手の株主構成を確認する必要があります。売手の経営者が3分の2以上の株式を保有していれば、株主総会でM&Aを認める特別決議は成立します。しかし、10分の1以上の株式を保有している株主は、会社の解散請求権を持つなど一定の影響力があります。そのため、売手の株主構成を確認しておくことも大切です。

デューデリジェンスの徹底

デューデリジェンスを徹底することも、企業を買収する際に注意したい点です。デューデリジェンスは、基礎資料や定款、株主名簿取引基本契約書、各種議事録、賃貸契約書といった資料を基に、財務や税務、法務、労務、環境、ITなどの視点から、売手がどのような状態なのかを正確に調査するものです。簿外債務の有無に加え、後に訴訟リスクとなる要素がないかチェックします。また、コンプライアンスについては特に丁寧なチェックが必要です。ハラスメントや残業代の未払い、工場による土壌汚染などの環境関連のトラブルが存在していると、後の思わぬ支出や訴訟リスクにつながります。

キーマンを確認しておく

中小企業の事業は人に依存する部分が大きい場合もあるため、どの人材がキーマンなのかを把握しておくことが非常に大切です。待遇などの問題でもしその人材が辞職してしまえば、買手が想定したような事業を行えなくなってしまいます。また、売手の前経営者がキーマンの場合、その処遇にも配慮が必要です。相談役や顧問として残ってもらうと業務がスムースになることもありますが、前経営者が残ることで派閥ができる可能性もあります。状況を踏まえたうえで、最適な方法を検討することが必要です。

目的に合った売手を探す方法

企業を買収するにあたっては、目的に合った売手を探すことが大切です。目的を明確にした後、まずは自分で相手を探すことが多いでしょう。そのような場合には、登録無料で利用できるM&Aマッチングサービスがおすすめです。
ほとんどのマッチングサービスでは、掲載企業の情報を無料で検索・閲覧できます。

M&Aでは、交渉力に加えて財務、税務、会計、法務、労務などの専門的な知識が必要となり、すべての手続きを自力で進めるのは困難です。M&Aを成功させるには、専門家の力を借りることが大切です。手間をかけずに、中小企業の案件を探すなら、ご登録無料の「弥生のあんしんM&A 新規タブで開く」がおすすめです。

「弥生のあんしんM&A」は、相手探しができるマッチングサービスです。利用料は、マッチング成立時にサービス利用料として30万円の手数料がかかるのみ。M&Aの専門家は、業界最大規模の全国12,000のパートナー会計事務所(2023年4月現在)が対応します。なお、専門家との契約にかかる費用は内容に応じて別途必要です。

「弥生のあんしんM&A」は、これから事業を始めたい個人の方や、事業を拡大したい方、事業承継をしたい経営者の方、コロナ禍をチャンスに変えて事業の多角化を目指したい方にもぴったりです。

弥生のあんしんM&Aの主な特徴

  • 「弥生のあんしんM&A」の登録料は無料
  • マッチング成立時の手数料(買手のみ)は1件につき30万円
  • 弥生の認定する税理士・公認会計士(弥生PAP会員)がM&Aの取引をサポート
  • 中小企業の小規模案件が中心

M&Aマッチングサービスを活用して目的に合った会社を探そう

中小企業の後継者不足などを背景に、中小規模のM&A件数は増えています。中小企業を買収する目的は、新規事業の展開・異業種参入やシェアの拡大、技術の取得などさまざまですが、買収を成功させるには、自社の目的に合った案件を探すことが大切です。

弥生のあんしんM&A 新規タブで開く」などのM&Aマッチングサービスを活用すると、全国の幅広い業種から交渉相手を探すことができ、M&Aに対応可能な税理士・公認会計士の紹介も受けられるため、安心してM&Aに取り組むことができます。自社に合った案件を見つけるために、ぜひこうしたM&Aマッチングサービスをご活用ください。

初心者事業のお悩み解決

日々の業務に役立つ弥生のオリジナルコンテンツや、事業を開始・継続するためのサポートツールを無料でお届けします。

  • お役立ち情報

    正しい基礎知識や法令改正の最新情報を専門家がわかりやすくご紹介します。

  • 無料のお役立ちツール

    会社設立や税理士紹介などを弥生が無料でサポートします。

  • 虎の巻

    個人事業主・法人の基本業務をまとめた、シンプルガイドです。

事業のお悩み解決はこちら