完了しました
[STORY]いきものがかり<4>
吉岡聖恵と水野良樹。実に長い道のりを経て2人体制になったいきものがかりは5月3日、神奈川県海老名市の商業施設「ビナウォーク」のステージに立った。
かつて30人、今回は8000人
新体制のお披露目は、地元で、2人だけでと決めていた。インディーズ時代、30人も集まれば大喜びした駅近くに、今回は約8000人が集まった。規模こそ違うが、原点の路上ライブに回帰した形。吉岡は「すごく自分たちらしい。2人で届けるということを芯を持って伝えられた」と語る。
満面の笑みを浮かべ、力いっぱいの歌声を響かせる吉岡。真剣な面持ちでピアノやギターを弾く水野は、心なしか、涙ぐんでいるように見えた。「いやいやいや。単純に緊張していただけです」。水野が舞台上の涙を全力で否定する一方、吉岡は「本番が近づくにつれ、泣いちゃうな、と思っていたんですけれど、いざ出たらめちゃくちゃ笑ってた」とあっけらかんと話す。正反対の性格を示すたわいないやりとりは、やはり、彼ららしい。
8月には日本最大級の音楽フェスティバル「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」に出演し、来年2月から5月にかけ、全国19都市を巡るツアーも決まった。「録音は済んでいるけれど、まだお届けできていない曲もある」(吉岡)といい、遠くない将来、またいい知らせが届きそうだ。2人体制のいきものがかりは助走期間を終え、本格的に走り始めた。
切磋琢磨できる関係
結成から24年、デビューから17年。水野は他の歌手らに楽曲を提供する作曲家としても知られるようになり、吉岡は歌い手として活動の幅を広げている。それぞれが一人の音楽家として確固たる地位を築いた今、2人にとって「いきものがかり」とはどんな場所なのか。
「この2人だからこそ、できることがあります。リーダー(水野)が新しいメロディーを生み出すと、『またいい曲できたな、もっといい歌歌おう』と思うんです。
「僕は自我が強い方で、必要以上に『自分が自分が』って思うタイプ。それだけでは届かないところまで周囲のミュージシャンやスタッフ、ファンの皆さんが届けさせてくれる。その分、期待に応えられる2人じゃないとダメ。大変なグループだと思います」(水野)
「みんなに聴いてもらって成立していますから」(吉岡)
老若男女が愛するJポップの王道を、これからも走り続けていく。(鶴田裕介)
(おわり)