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サラリーマンは実質増税!?給与控除の縮小で起きること

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政府の税制調査会は今年6月、中長期的な税制のあり方を示す答申案に「給与所得控除の縮小」の必要性を盛り込みました。これに対し、SNSなどでは「実質、会社員の増税だ!」といった投稿が相次いでいます。給与所得控除が縮小されると、なぜ会社員の増税につながるのでしょうか。今回は、私たちが支払っている税金に影響を及ぼす「控除」の仕組みについてお話しします。

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所得税が導き出される過程を確認しよう

そもそも、「増税」や「節税」の仕組みを理解するには、私たちが支払っている所得税が導き出される過程を理解することが大切です。会社員の例で説明します。

税込みの年収に所得税率を掛けて所得税が算出されると思っている方も多いようですが、所得税が算出されるまでには、さまざまな「控除」があります。

(1)「税込み年収」から会社員の必要経費とも言われている「給与所得控除」を差し引き、「給与所得」を算出します。給与所得控除の金額は、年収に応じた計算式で導き出すことができます。

(2)「給与所得」から「所得控除」を差し引き、「課税所得」を算出します。所得控除とは、本人や家族の状況、障害や病気といった事情だけでなく、保険商品などの契約状況によって税の負担を軽くする制度のことをいいます。

所得控除には「基礎控除」「配偶者控除」「配偶者特別控除」「扶養控除」「医療費控除」「寄付金控除」「社会保険料控除」「生命保険料控除」「地震保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」「ひとり親控除」「寡婦控除」「勤労学生控除」「障害者控除」「雑損控除」の15種類があります。

(3)「課税所得」に対して、課税所得の額に応じた所得税の税率を掛けて「所得税額」を算出します。

(4)所得税額から直接差し引く「税額控除」もあります(住宅ローン控除など)。

この所得税額の算出の流れを理解できると、仮に給与所得控除が見直しされ、今よりも控除される金額が小さくなれば、増税になるということがわかりますね。また、反対に「節税」という観点から「所得控除」が重要になることがわかります。所得控除の金額が大きければ大きいほど、課税所得の金額が小さくなるので、節税できるというわけです。

給与所得控除額が10分の1に?

給与所得控除がどれくらい縮小されるのか、まだ明らかになっていませんが、政府税制調査会の答申では、「サラリーマンの必要経費にあたる部分は給与収入の約3%程度と試算されており、現在は手厚い状態」としています。

現在、年収500万円の人の給与所得控除額は、下記の給与所得控除の速算表に当てはめると、500万円×20%+44万円=144万円になります。現在の収入に対して、控除額は約30%になっています。

給与所得控除の速算表(国税庁のHPより)
給与所得控除の速算表(国税庁のHPより)

所得控除を基礎控除(48万円)と社会保険料控除(年収の15%で計算)のみで所得税・住民税を計算すると、所得税は13万5500円(所得税率10%・復興特別所得税含まず)、住民税(所得税率にかかわらず一律10%・均等割5000円)は23万8000円となります。税金は合計37万3500円です。

では、給与所得控除が年収の3%程度になったらどうでしょうか。現在144万円の給与所得控除額が15万円程度になります。仮に給与所得控除額を15万円として、上記と同じ条件で所得税、住民税を計算してみます。

そうすると、所得税は29万6500円(所得税率20%・復興特別所得税含まず)、住民税(所得税率にかかわらず一律10%・均等割5000円)は36万7000円となります。税金は合計66万3500円です。

現在と比べると、29万円も税金が増えます! もし、本当に給与所得控除が収入の3%程度になってしまったら、大幅な増税になりますね……。

所得控除を利用して会社員も節税に取り組もう

急激に給与所得控除が大幅縮小されることはないかもしれませんが、今後の動向には注目していきたいところです。

会社員でも生命保険に加入している場合は「生命保険料控除」、iDeCoに加入している場合は「小規模企業共済等掛金控除」、医療費がたくさんかかっている場合は「医療費控除」といった所得控除が利用でき、工夫次第で節税することは可能です。

会社員の場合だと、給与天引きで税金を納めているため、税金への関心が薄いという人も少なくないと思います。岸田政権は、増税の方向にかじを切っているとも言われているので、しっかりと情報収集をして、節税についても考えていきましょう。(ファイナンシャルプランナー・高山一恵)

プロフィル

高山一恵
高山一恵(たかやま・かずえ)
Money&You取締役、ファイナンシャルプランナー(CFP®)
一般社団法人「不動産投資コンサルティング協会」理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けファイナンシャルプランニングオフィス「エフピーウーマン」を設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。多くのメディアで執筆活動、相談業務を行い、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。月400万PV超のウェブメディア『Mocha(モカ)』やYouTube「Money&YouTV」を運営。『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)、『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版) など著書の累計は150万部を超える。
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4578222 0 大手小町 2023/10/01 06:00:00 2023/10/24 09:57:22 https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/09/20230925-OYT8I50013-T.jpg?type=thumbnail

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