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【ジャカルタ=川上大介、ニューデリー=浅野友美】中国政府が8月28日に発表した新しい地図を巡り、アジアの周辺国から反発の声が上がっている。南シナ海やインド北東部などの係争地が「領海」や「領土」として示されたためだ。今月アジアで開かれる一連の国際会議では、領土問題で対立する事態も想定される。
ロイター通信によると、地図では南シナ海の90%を中国の「領海」とした。中国が南シナ海の領有権問題に関して一方的に主張する「九段線」は、台湾の東側に引かれた1本の線とともに計10本で構成され、「十段線」となっている。
フィリピンが領有権を主張するスプラトリー諸島(南沙諸島)が「中国領」とされたことについて、比外務省は「中国当局から出された地図を拒否する」と批判した。声明では、「九段線」の法的根拠をオランダ・ハーグの仲裁裁判所が否定した2016年の判決に従うよう求めた。
インドネシアの地元メディアによると、ルトノ・マルスディ外相は「いかなる主張も国連海洋法条約に従ったものでなければならない」と述べた。同国のナトゥナ諸島は南シナ海の南端に位置し、周辺の排他的経済水域(EEZ)は中国が設定した境界線と重なる。付近では近年、中国船の操業が目立っている。
中国との国境問題を抱えるインドも反発した。係争地のインド北東部アルナチャルプラデシュ州の一部と中国が実効支配するカシミール地方のアクサイチンが「領土」とされたからだ。ジャイシャンカル印外相は8月29日の民放インタビューで「こんな筋の通らない主張によって、他人の領土が自分のものになることはない」と反発した。
5日から始まる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議では、中国と各国が南シナ海の紛争防止に向けて策定を目指す「行動規範」について議論する見通しだが、対立が先鋭化する可能性が出てきた。