小沼勝監督は日活ロマンポルノが終了するまでの17年間に47本も撮影している。神代辰巳、曾根中生、田中登らとともに次々と傑作を発表。濃厚なセックス描写だけでなくセンチメンタルで、どこか空想的な叙情を混ぜ合わせたスタイルが独特だった。中でもセンセーショナルだったのが谷ナオミ主演の緊縛ものだ。
「生贄夫人」(1974年)「花芯の刺青 熟れた壺」(76年)、そしてこの「花と蛇」(74年)は世界的にも高く評価された。
当時の日活にとってもSMは手さぐり状態。どこまで露出が許されるのか、どこまで隠れた欲望を見せていいのか。社会的な許容範囲はどこまでかといった挑戦だった。
「花と蛇」だが、緊縛は素人芸ではできない。そこでプロの緊縛師に来てもらうことになった。撮影現場ではアブノーマル・セックスの第一人者であり、原作者でもある団鬼六監修のもと、丁寧に本物の縄打ちが始まったという。
ただ初物ゆえ、後続のSMものに比べると、やはり限界を意識した感がある。コメディータッチに仕上げているのはそのためか? ストーリーの割に悲壮感がまったくない。それにしても谷の妖艶さは輝いている。