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 10年に1度の寒波が襲来し、日本海側を中心に大雪に見舞われています。この寒気の影響で、1月24日夜に東京で初雪が観測されました。25日から冬型の気圧配置が次第に緩みますが、関東は3月ごろまで南岸低気圧による大雪に警戒が必要な時期です。南岸低気圧が通過すると北から寒気を呼び込み急激に気温が低下し、エアコンなどの使用が増えて電力需要が増加します。2018年の大雪では東京エリアの電力需給がひっ迫寸前となりました。

(出所:123RF)
(出所:123RF)

 冬に本州の南岸を東に進む低気圧のことを「南岸低気圧」と呼びます。関東地方などの都市部に大雪をもたらし、交通機関や電力需要に大きな混乱を及ぼすことのある気象現象です。予測が非常に難しいため、「雪が降る」といって降らなかったり、「雨が降る」といって雪になったり。このことから南岸低気圧は“予報官泣かせの低気圧”といわれています。今回は、その南岸低気圧の仕組みと、予測を困難にしている原因を解説します。

2018年の関東の大雪は南岸低気圧だった

 はじめに、南岸低気圧が原因で関東地方などに大雪をもたらした過去の事例を振り返りましょう。

 2018年1月22日。発達した低気圧が本州の南岸を東北東に進み、関東甲信地方や東北太平洋側の平野部などで大雪が降りました。このとき、東京都千代田区で23センチ、宮城県仙台市で19センチの積雪を観測し、道路の通行止めや鉄道の運休などの交通障害、停電や水道凍結などのライフラインに被害が発生しました。

 南岸低気圧の通過後は北から乾いた寒気が流れ込み、大体は晴れて雪は溶ける傾向にあります。しかし、この事例では南岸低気圧の通過後にシベリアから強烈な寒気が流れ込み、東京では降った雪が8日間も溶けずに残るという記録的な長さになりました。

 2018年1月23日は電力需給が厳しい状況となりました。厳しい寒さで電力需要が増え、さらに太陽光パネルに積もった雪が溶けず、発電量予測が外れたことが原因でした。南岸低気圧は電力ビジネスにも大きな影響を及ぼすため、メカニズムを理解しておくことが欠かせません。