三井不動産と明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事の4者が進めている明治神宮外苑地区の市街地再開発事業に対して、文化遺産保護に関わる国際非政府組織の「日本イコモス国内委員会」や市民グループの「神宮外苑を守る有志ネット」などから、計画の見直しを求める声が上がっている。争点の1つが、この再開発事業が明治神宮外苑内にある既存樹木を大量に伐採、移植する点だ。
この再開発事業と東京都の都市計画決定に対する反対運動は、「東京都が神宮外苑の都市計画決定を告示、決定前に5万人以上が見直し求める」で報じた通りだ。
現在は、2022年2月18日に始まった東京都の環境影響評価審議会第一部会で、既存樹木などに関する質疑が続けられている。同部会の3回目が4月26日に開催された。
明治神宮外苑は、明治天皇の事績を後世に伝えるために造営され、1926年完成した。20世紀初頭の米国における「都市美運動」のデザイン思想を踏まえて官庁技師の折下吉延氏が設計した、近代日本を代表する庭園だ。聖徳記念絵画館に向かって景観を見通す軸線(ヴィスタ)と芝生広場で構成され、植栽の配置にも特徴がある。この再開発事業で伐採対象となっている樹木の中には、創建時に全国から献木・献金されて、労働奉仕により植えられた、樹齢100年を超えるものが多数含まれる。こうした数多くの歴史的な遺産が大きく改変されることが、市民からの批判対象になっている。
再開発事業地は、A地区(イチョウ並木とその西側の秩父宮ラグビー場と明治神宮野球場周辺)とB地区(聖徳記念絵画館と芝生広場周辺)からなり、既存樹木の伐採と移植は両地区で行われる。新宿区が2022年1月21日の都市計画審議会で示した当初計画の資料(21年7月作成)によると、存置が848本、移植が164本(検討を含む)、伐採が892本だ。
事業者は、計画見直しを求める意見に対して、「既存樹木を存置もしくは移植により可能な限り保存する」と、都の環境影響評価審議会第一部会で説明。環境影響評価の対象となっているA地区内の本数に関して、4月26日の部会で従来よりも存置と移植本数を増やす計画修正を行った。また、施工時点までに生育が健全でなくなった樹木が発生した場合の各本数も発表した。この本数は当初計画のままだ。