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 東京工業大学の高木泰士教授などは、緊急時に津波を防ぎ、平時は潮位差で自己発電する可動式防潮堤を考案した。船の出入りがない夜間に防潮堤で港を閉鎖することで生じる、港内外の水位差で発電するというもの。可動式防潮堤による潮位差発電⽅式の提案は世界初だという。

夜間に港を閉じて潮位差発電を行う可動式防潮堤のイメージ。研究には東京工業大学の他、ワールド設計、協同エンジニアリング、オリエンタル⽩⽯、センク21、中外テクノス、⽇本防蝕⼯業、ネポクコンサルタント、⼋千代エンジニヤリング、テクノシステムが参加した(出所:潮位差エネルギーの利用による港の活性化研究会)
夜間に港を閉じて潮位差発電を行う可動式防潮堤のイメージ。研究には東京工業大学の他、ワールド設計、協同エンジニアリング、オリエンタル⽩⽯、センク21、中外テクノス、⽇本防蝕⼯業、ネポクコンサルタント、⼋千代エンジニヤリング、テクノシステムが参加した(出所:潮位差エネルギーの利用による港の活性化研究会)
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 発電したエネルギーは、防潮堤稼働の動力源として使える他、余剰電力は港の後背地へ供給も可能だ。東工大と9社の関係企業から成る「潮位差エネルギーの利用による港の活性化研究会」での研究成果だ。

 可動式防潮堤の施工には、空気圧で密閉空間をつくり出し海底を掘削することで基礎を構築する「ニューマチックケーソン工法」の採用を考えている。工事によってできる海底面下の作業空間を、平時の防潮ゲートの格納スペースとして活用するのだ。

 同工法は、関東大震災に耐えた横浜港岸壁や、能登半島地震に耐えた新湊大橋の主塔基礎など、過去の多数の事例により地震動や液状化、津波に対する強靱(きょうじん)さが証明されている。

ニューマチックケーソン工法による可動式防潮堤の施工方法(出所:潮位差エネルギーの利用による港の活性化研究会)
ニューマチックケーソン工法による可動式防潮堤の施工方法(出所:潮位差エネルギーの利用による港の活性化研究会)
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 地震発生時にはウインチを解除するだけで格納されたゲートが浮上し、港を閉め切ることができる。一方、ゲートを再び海底に格納する際には動力が必要となる。そこで、停電時でも動かせるよう自己発電用のタービンと組み合わせる。

 港の出入り口を塞ぐ形で並ぶ1基ないし複数の防潮堤の間隙を有効活用。隣接するゲートの動作を阻害しないよう空けられるわずかな隙間にタービンを設置する。ゲート前後の海水面の差異で生じる流れで発電させる。ダムの水路式発電のようなイメージだ。

可動式防潮堤を使った潮位差発電のイメージ(出所:潮位差エネルギーの利用による港の活性化研究会)
可動式防潮堤を使った潮位差発電のイメージ(出所:潮位差エネルギーの利用による港の活性化研究会)
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