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旋盤の構造

 既に説明したように、「工作物を回転」させるのは旋盤の大きな特徴です。「工具を回転」させる他の工作機械と対照的です。工作物は回転するのみで、前後左右には動きません。それに対して工具を前後左右に動かして所定の形状に削ります。

 旋盤は大きく3つの機能で構成されています。[1]加工者から見て左側は工作物を回転させる「主軸台」、[2]中央部は工具(バイト)を前後左右に移動させる「往復台」、[3]右側は長い工作物を支えたり、工作物の端面中央に穴をあける工具(ドリル)を固定したりするのに使う「心押し台」です(図3)。通常使うのは[1]主軸台と[2]往復台で、必要な場合に[3]心押し台も併用します。

図3 普通旋盤の構造
図3 普通旋盤の構造
左に主軸台、中央に刃物台、右に心押し台がある。(出所:西村仁)
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 このように左右対称ではなく方向性があることが旋盤の大きな特徴です*3。他の多くの工作機械は加工者から見て左右対称の構造で、方向性は見られません。旋盤はどのメーカー製でも主軸台が左、往復台が右にあります。ここで説明したのは普通旋盤で、他に丸形状の端面を削る正面旋盤、普通旋盤を垂直に立てた構造の立て旋盤、自動化されたNC旋盤があります。

*3 ここでは、旋盤の向きを表す際に、加工者が立つ位置から見た方向で「左右方向」や「前後方向」で記述する。

旋盤で使用する工具「バイト」

 旋盤ではバイトの当て方により、図2で示したようにさまざまな加工が可能で、それぞれ専用のバイトを使います。これらのバイトの構造には、「ろう付けバイト」と「スローアウェイバイト」があります。ろう付けバイトは高価な切れ刃をろう付けしたものです。刃先を砥石で研ぐ必要がある半面、任意の加工形状にも対応可能です。

 一方、スローアウェイバイトは市販の切れ刃をねじで固定する構造になっています。切れ刃には三角形、四角形、ひし形などさまざまな形状が市販されています。切れ刃が摩耗した際には、研ぐ必要がなく交換するだけなので大量生産品の加工に適しています。