前編では、東京都世田谷区にある千歳船橋駅から環状8号線沿いの「M2(現:東京メモリードホール)」「『食と農』の博物館」という、2つの隈研吾氏設計の建物を巡った。後編は、東京農業大学の世田谷キャンパスから住宅地の中にある学校建築の佳作を眺めつつ、小田急線の高架化に伴う経堂駅かいわいの駅前整備・再開発の地域までたどってみよう。
1:森繁久弥のテヴィエ像
2:森繁通り
3:ガーデニエール砧レジデンス、ガーデニエール砧WEST
4:M2(現、東京メモリードホール)
5:桜丘すみれば自然庭園
6:千歳通り
7:JRA馬事公苑
8:けやき広場
9:「食と農」の博物館
10:東京農業大学世田谷キャンパス
11:東京農業大学稲花小学校
12:和光小学校・幼稚園
13:世田谷区立桜丘小学校
14:長島大榎公園、経堂5丁目特別保護区
15:烏山川緑道
16:カフェ「FINETIME COFFEE ROASTERS」
17:経堂コルティ
18:経堂テラスガーデン
※散歩時間の目安:およそ1時間30分(見学時間は除く)。1~9は前編で、10~18は後編で紹介
「『食と農』の博物館」と「けやき広場」の場所から、世田谷通りを挟んで、向かいの東京農業大学世田谷キャンパスの建築群をまずは見ていこう。ただし、現在は、新型コロナウイルス感染症対策で、学生・関係者以外のキャンパス内通行が制限されているので注意が必要だ。なお写真の一部は、新型コロナ禍前に筆者がキャンパス見学で訪れて撮影したものである。
東京農業大学は、昔、渋谷区に校舎があった。しかし、第2次世界大戦で同校舎が焼失したことから、戦後の1946年に旧陸軍機甲整備学校跡地へ移転して現在に至る。
組織設計事務所・ゼネコンによるキャンパス再編中
東京農業大学世田谷キャンパスでは、建物の老朽化から校舎の建て替えが順次進められている。2011年には、開校120周年の事業として、「東京農業大学世田谷キャンパス1号館」(地上6階・地下1階、鉄骨造〔S造〕)が建てられた。続いて、13年に「東京農業大学 農大アカデミアセンター」(地上9階・地下2階、S造/鉄骨鉄筋コンクリート造〔SRC造〕)などが建設されている。いずれも、設計は久米設計によるものである。土壁風の外壁が印象的だ。
「風の抜ける校舎として全館自然通風システムの構築」や「庇(ひさし)による熱負荷低減等による温熱環境配慮」「二酸化炭素(CO2)濃度による換気量自動制御」などの省エネルギーに配慮した計画となっているという。
近年では、大手ゼネコンの設計施工で施設整備を行っている。19年に、大林組の設計施工で「農大サイエンスポート」(地上8階・地下1階、S造・一部鉄筋コンクリート造〔RC造〕)が建設された。また、22年12月現在、鹿島の設計施工で「世田谷キャンパス(仮称)国際センター」(地上3階、RC造・S造)が建設中である。キャンパス全体の、建物更新に積極的だ。
このほか、東側の道路を挟んで東側の東京農業大学第一高等学校・中等部校舎の第1期建て替えが、類設計室(大阪市)の設計で着工している。さらに、「東京農業大学稲花(とうか)小学校」(18年、地上4階・地下1階、RC造)は、日建設計によるものだ。バルコニーの水平のラインが強調されたスマートな外観である。
住宅地の中に学校建築の佳作
東京農業大学の一角を抜け、農大通りと呼ばれる道を北に向かうとすぐに、円筒形で木の縦ルーバーをまとった建物が見えてくる。この建物は、「和光小学校・幼稚園」(11年、地上3階、SRC造・RC造・S造)だ。