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国土交通省の推計によると新潟県では約9500件の宅地に液状化被害が出た。一方で、2007年の中越沖地震後、対策を施した「山本団地」では被害を確認できなかった〔写真1〕。現在の状況と対策方法をリポートする。

〔写真1〕液状化対策が効果を発揮した新潟県柏崎市の山本団地
〔写真1〕液状化対策が効果を発揮した新潟県柏崎市の山本団地
新潟県柏崎市にある山本団地の地震後の被害状況。上が2007年の中越沖地震の後。道路と宅地に段差が生じ、道路のアスファルトが破損した。下は、24年能登半島地震後の様子。ほぼ同じ場所で被害は発生していない。24年2月16日に撮影(写真:左上は新潟大学災害・復興科学研究所、右上は国土交通省、下は2点とも日経アーキテクチュア)
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 2024年能登半島地震で広範囲に発生した液状化。住宅再建に悩む自治体が多い中、専門家の間で“液状化の被害が確認できなかった”として注目を集める団地がある。最大震度5強の揺れを観測した新潟県柏崎市の郊外に立つ「山本団地」だ。

 同団地は柏崎市の北東部に位置する造成団地で、柏崎市土地開発公社が1971年に水田を埋め立ててつくった〔写真2〕。南西には2級河川の鯖石川が流れ、北には標高約70mの小高い砂丘がある。

〔写真2〕2007年に液状化被害を受けた山本団地
〔写真2〕2007年に液状化被害を受けた山本団地
南東側の上空から山本団地を望む。近くを2級河川の鯖石川が流れ、団地の背後には標高約70mの小高い砂丘がある(写真:新潟県土木部)
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 この団地が注目を集める理由は、07年の中越沖地震で被災した後、対策を施し、その効果が確認できたからだ。国が対策費の一部を補助する、大規模盛土造成地滑動崩落防止事業を初適用した事例でもある。

 中越沖地震が発生した当時、同団地には大規模な液状化が発生。北側の砂丘が地滑りし、宅地地盤に連続した開口亀裂が生じた。住宅の基礎が浮き上がり、ブロック塀が転倒。129戸中49戸の住宅が応急危険度判定で「要注意」以上の判定を受けるなど、団地の存続が危ぶまれるほどの被害が出た。

 この事態を受けて、柏崎市は国の支援のもと、被災した宅地と市道の地下2~3mに暗渠(あんきょ)排水管を施工した〔写真3〕。

〔写真3〕暗渠をつくって地下水位を下げる
〔写真3〕暗渠をつくって地下水位を下げる
被災した52戸の住宅と市道の地下に暗渠排水管を施工し、地下水位を下げることで液状化対策を施した(写真:右下は安田 進、それ以外の写真と資料は新潟県土木部)
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 液状化は、地下水位が浅くて緩い砂地盤に、震度5弱以上の揺れが加わると発生しやすい。どれか1つでも条件を改善すれば対策できるため、山本団地では地下水位を下げた。全体事業費は約1億6000万円で、このうち4分の1を住人が負担した。