国土交通省の推計によると新潟県では約9500件の宅地に液状化被害が出た。一方で、2007年の中越沖地震後、対策を施した「山本団地」では被害を確認できなかった〔写真1〕。現在の状況と対策方法をリポートする。
2024年能登半島地震で広範囲に発生した液状化。住宅再建に悩む自治体が多い中、専門家の間で“液状化の被害が確認できなかった”として注目を集める団地がある。最大震度5強の揺れを観測した新潟県柏崎市の郊外に立つ「山本団地」だ。
同団地は柏崎市の北東部に位置する造成団地で、柏崎市土地開発公社が1971年に水田を埋め立ててつくった〔写真2〕。南西には2級河川の鯖石川が流れ、北には標高約70mの小高い砂丘がある。
この団地が注目を集める理由は、07年の中越沖地震で被災した後、対策を施し、その効果が確認できたからだ。国が対策費の一部を補助する、大規模盛土造成地滑動崩落防止事業を初適用した事例でもある。
中越沖地震が発生した当時、同団地には大規模な液状化が発生。北側の砂丘が地滑りし、宅地地盤に連続した開口亀裂が生じた。住宅の基礎が浮き上がり、ブロック塀が転倒。129戸中49戸の住宅が応急危険度判定で「要注意」以上の判定を受けるなど、団地の存続が危ぶまれるほどの被害が出た。
この事態を受けて、柏崎市は国の支援のもと、被災した宅地と市道の地下2~3mに暗渠(あんきょ)排水管を施工した〔写真3〕。
液状化は、地下水位が浅くて緩い砂地盤に、震度5弱以上の揺れが加わると発生しやすい。どれか1つでも条件を改善すれば対策できるため、山本団地では地下水位を下げた。全体事業費は約1億6000万円で、このうち4分の1を住人が負担した。