マイクロソフトのスマートフォン向けOS最新版「Windows Mobile 6」(WM6)を搭載した端末が,いよいよ今夏より登場する。そこで,WM6搭載端末3機種について,実機で特徴や性能を調査した。その結果分かったことは,OSのエディションの違いなどにより,端末ごとの差違が意外に大きいことだ。

 国内で発売が決まっているWM6搭載スマートフォンは,ウィルコムが7月19日に発売した「Advanced/W-ZERO3 [es]」(アドバンストエス,シャープ製),ソフトバンクモバイルの「X02HT」(台湾HTC製,7月末発売),「X01T」(東芝製,8月中旬発売)の3機種である(写真1)。基本スペックは表1の通りだ。

写真1●Windows Mobile6を搭載したスマートフォン
写真1●Windows Mobile6を搭載したスマートフォン
左からソフトバンクモバイルの「X02HT」,「X01T」,ウィルコムの「Advanced/W-ZERO3 [es]」。

表1●Windows Mobile 6を搭載したスマートフォン3機種の主なスペック
機種名 X02HT X01T Advanced/
W-ZERO3[es]
メーカー 台湾のHTC 東芝 シャープ
販売する
通信事業者
ソフトバンクモバイル ウィルコム
Windows
Mobile 6の
製品エディション
Standard Edition Professional Edition Classic Edition
通信方式 W-CDMA/
HSDPA/GSM
W-CDMA/
HSDPA/GSM
PHS/
W-OAM
最大通信速度 1.8Mビット/秒 3.6Mビット/秒 204kビット/秒
ディスプレイ 2.4インチQVGA
(240×320ドット)
3.0インチWVGA
(480×800ドット)
3.0インチWVGA
(480×800ドット)
外部接続 無線LAN/Bluetooth 無線LAN/Bluetooth/
赤外線
無線LAN/赤外線
本体サイズ
(幅×高さ×
奥行きmm)
63×114×13.9 61×119×21.5 50×135×17.9
重さ 120g 198g 157g

 3機種は,同じWM6を搭載してはいるものの,端末によって搭載する機能や操作性,性能には違いがある。特にX02HTはタッチ・スクリーン入力に非対応,ウインドウを閉じるボタンがないなど,ほかの端末と異なる点が多い。

 こうした違いに最も大きく影響しているのは,WM6のエディションである。WM6には端末のコンセプトに合わせて,音声端末向けのStandard,データ通信向けのProfessional,PDA(携帯情報端末)のような使い方を意識したClassicという三つのエディションがある。3機種ではそれぞれ,音声端末としての利用を想定したX02HTがStandard,データ端末として位置付けたアドバンストエスがClassic,X01TがProfessionalを採用。結果として,X02HTはタッチ・スクリーン入力に非対応になっている。

 もちろんほかにも違いはある。例えば,操作方法や画面構成,設定項目といった点である。X01TとアドバンストエスはOSのエディションは異なるが,機能や画面構成,使い勝手に大きな違いはない。アドバンストエスに搭載されたClassicには通話機能がないが,ウィルコムとシャープが独自開発したソフトを組み込んだ。

iPodによく似たセレクタも

 3機種はハードウエア面でも違いがある。例えば入力デバイス。X02HTとアドバンストエスはそれぞれ特殊なセレクタを持つ。X02HTは,端末の側面に「JOGGR」と呼ぶタッチパッドを搭載する。指を上下にスライドさせることで選択カーソルを動かし,タップすることで項目を選択できる。一方のアドバンストエスは,円形の十字ボタンを指でなぞることで選択カーソルを動かす「Xcrawl」を搭載する。米アップルの携帯音楽プレイヤー「iPod」に近い感覚のセレクタだ。

 通信方式は,X01TとX02HTの2機種がW-CDMA,HSDPA(high speed downlink packet access),GSMに対応。最大1.8Mまたは3.6Mビット/秒の高速な通信速度に対応するため,大容量ファイルを扱いやすい。海外ローミングにも対応する。一方,アドバンストエスの通信方式はPHSで,通信速度は最大204kビット/秒となる。

通信速度はSBの端末が2倍以上高速

 性能の違いはどうか。編集部では,試作機を使ってブラウザ起動やファイル読み込みにかかる時間を実測した。その結果が図1である。

図1●Windows Mobile 6を搭載したスマートフォンの体感速度を比較
図1●Windows Mobile 6を搭載したスマートフォンの体感速度を比較
参考としてW-ZERO3 [es]のデータも測定。機種ごとに3回計測し,平均値を算出した。PDF表示ソフトは,X02HTが「Adobe Reader LE」,それ以外は「Picsel PDF Viewer」を使用した。ブラウザは,X02HTが「Internet Explorer」,それ以外は「Opera」を使った。
[画像のクリックで拡大表示]

 まず,Web閲覧の体感速度の目安として,ブラウザが起動するまでにかかる時間を測った。それぞれに搭載されているブラウザは,X02HTが「Internet Explorer」,X01Tとアドバンストエスが「Opera」である。

 これらのブラウザの起動速度は,ソフトバンクモバイルの2機種がアドバンストエスに比べ2倍近く高速だった。アドバンストエスと同じOperaを利用しつつも,X01Tの方が高速な起動を実現していた点が目立った。

 次に,通信速度の影響を含めた体感速度を知るために,ブラウザのブックマークから特定のWebページを選び,そのページを表示するまでにかかる時間を測った。

 結果はHSDPAを利用できるX02HTが最も高速でアドバンストエスより約2.5倍速く表示できた。PHSとの通信速度の違いが明確に出た格好である。ウィルコムが用意する「高速化サービス」を利用すると,アドバンストエスの体感速度は大幅に改善。Webページの表示速度は,X02HTとほぼ同等の水準まで高速化できた。高速化サービスは,通信プロトコルを最適化し,網側でデータを圧縮してやり取りするサービスである。データ圧縮によって画像データは劣化する。ただ,パソコンに比べればディスプレイが小さいため,あまり気にならない。

PDFの表示速度で大きな開き

 1MバイトのPDFファイルを開くのにかかる時間を測定してみると,アドバンストエスとX01Tがほぼ同程度だったのに対し,X02HTは2倍近い時間がかかった。これは閲覧ソフトの違いによるものと思われる。X01Tとアドバンストエスは英ピクセル・テクノロジーの「Picsel PDF Viewer」を,X02HTは米アドビ・システムズの「Adobe Reader LE」を搭載している。

 ただし,X02HTの方が必ず遅いというわけでもなさそうだ。今回の検証で利用したPDFファイルの内容は,図表で構成された1ページのポスターだった。同サイズのPDFファイルで十数ページの論文を表示した場合は,X02HTの方がX01Tやアドバンストエスよりも高速だった。