ウィルコムは,企業の固定電話とPHS間の通話を定額にするサービスの準備を進めていることを明らかにした。企業の内線網をウィルコムの独自IP網に直接収容することで,定額化を実現するという。ソフトバンクも同様のサービスを試験提供中。今後,固定-モバイル間を定額化するサービスが広がりそうだ。

 IP電話や携帯電話/PHSで一般的になってきた通話定額サービスが,固定電話-携帯電話/PHS間の通話にも広がりそうだ。その先べんをつけるのが,モバイル通話定額サービスで先駆者となったウィルコムである。

 固定電話-PHS間定額サービスの提供開始時期についてウィルコムの喜久川政樹社長は,「早期導入に向けて取り組みを進めている」と7月のワイヤレスジャパン2007の基調講演で発言。早ければ今秋にもサービスの姿が見えてきそうだ。

 ウィルコムのPHS網は,基地局から地域のNTT局舎までをISDN回線で接続し,NTT局舎間は独自のIP網でつなぐ。ISDNからの音声信号をVoIPパケットに変換するため,「ITX」(IP transit exchange)と呼ぶIP交換機を全国約1000カ所のNTT局舎に設置している。

 企業の内線電話とPHSを定額化するサービスでは,バックボーンのITXと企業のPBXを固定回線で直結する。ウィルコムの独自IP網に企業のPBXを収容する形になる(図1)。PBXにつながる内線電話端末の種類は問わないため,企業内では固定電話機のほかに構内PHSも利用可能だ。

図1●ウィルコムが固定電話-PHS間の定額通話を準備中
図1●ウィルコムが固定電話-PHS間の定額通話を準備中
企業のPBXとウィルコムのバックボーン設備を固定回線で直結する。PBX経由でのPHSへの発着信はすべて定額となる。

 ITXとPBXは,BRI(基本インタフェース)でつなぐ。回線の提供事業者は現時点では非公表という。NTT東西地域会社のISDNのほか,KDDIやソフトバンクテレコムの直収電話サービスなどが考えられる。

 料金体系も明らかにしていない。ただしウィルコムが提供している,PBXと独自IP網の接続にPHS回線を使用する「音声定額 on PBX」の月額料金は,PHS通信料の2900円(法人割引適用時は2200円)と関連設備の保守料金の合計となっている。ここから新サービスの料金を推測すると,ISDN回線料とITX接続料を合算した料金になると見られる。独自設備のITXの接続料の設定次第で料金は変わりそうだ。

ソフトバンクも固定-携帯定額を検討

 ソフトバンク・グループも,固定電話と携帯電話の定額サービスを検討中である。テスト・マーケティングとして一部ユーザーに試験サービスを提供している。サービスは,ソフトバンクテレコムの直収電話やソフトバンクBBのIP電話と,ソフトバンクモバイルの携帯電話をセットで定額にしている。

 携帯電話/PHSの通話定額サービスの登場で,社員間の内線通話を携帯電話/PHSで代替できるようになった。そのため,一部にはPBXを廃止する企業もあった。

 だが,「ユーザーからオフィスの内線電話とPHS間の通話を定額化できないかというニーズも多かった」(ウィルコムの喜久川社長)。PBXをそのままであらゆる社内通話を定額にできる新サービスのメリットは大きい。