写真1 東京のホテルで行われた開通式の様子(2009年2月26日)
写真1 東京のホテルで行われた開通式の様子(2009年2月26日)
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 UQコミュニケーションズは2009年2月26日,どこでもブロードバンドにアクセス可能な社会の構築を目指して,「UQ WiMAX」サービスをスタートさせた(写真1)。東京23区と川崎市,横浜市の一部エリアを中心に500カ所あまりの基地局を設置し,無料サービスの提供を始めたのである。約5000人の無料トライアルのユーザーに対し,このサービスを利用するためのデータ通信カードを配布した。これを手持ちのノートパソコンなどに接続すれば,3G(第3世代移動体通信システム)による携帯電話網よりも格段に早いスピードの高速インターネットが楽しめる。今後,2009年夏には本格サービスが予定されており,東名阪の大都市から一年程度をかけて全国の県庁所在地を網羅していく予定である。

 またUQコミュニケーションズは4月3日~12日の日程で,「WiMAX Wi-Fiゲートウェイセット」のモニター募集も行っている。無線LANへの変換機能と,取り外し可能なUSBタイプのデータ通信カード機能から構成されており,屋内では無線LAN経由でWiMAXネットワークに接続が可能になる。たとえば室内に設置しているプレイステーション3を,無線LAN機能によってネット環境化するといったことも可能であろう。そして,野外ではUSBタイプのデータ通信カード単体として使用することも可能である。

 モバイルWiMAXはこれまで,主に米Intelのチップセットを実装するデータ通信カードによるサービスとして,世界の一部の都市で商用化が開始されてきた。本格的な設備投資を行う形での本格サービスの展開は,日本がリードするものといえよう。

 2009年3月30日には,全国サービスを展開するための設備資金としてUQコミュニケーションズは,第三者割当てによる300億円の増資を決議していることも付け加えておきたい。夏のいち早い商用化サービスにより,先行するイーモバイルや、新たな高速ネットサービスを予定するウイルコム等、競合他社との競争を展開するだろう。

実際に通信カードを試してみる

写真2 実験に使用した通信型カード「UD01NA」(USBタイプ,NECアクセステクニカ製)。写真のように,雨戸を閉めると伝送速度が極端に遅くなる場合もあった
写真2 実験に使用した通信型カード「UD01NA」
USBタイプ,NECアクセステクニカ製。写真のように,雨戸を閉めると伝送速度が極端に遅くなる場合もあった
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 3月末現在の使えるエリアは,東京23区と神奈川県東部の一部である。人口カバー率で言うと,日本の全世帯の約一割ということになる。 日本のモバイルWiMAXが使っている2.5GHzの周波数帯は,3Gシステムに比べると周波数が高くなるため,一般的に建物内への浸透性は悪いとされている。オフィスや鉄筋コンクリートなどの建物内では,十分な電波が届かないことが予測される。今回筆者は,「UD01NA」(NECアクセステクニカ製)を試してみた(写真2)。

 本機は,パソコンのUSB端子に挿すだけでドライバとユーティリティが自動的にインストールされる。神谷町のオフィスの窓から1メートルの場所に,NECの旧型ノートパソコン(2001年発売,WindowsXP SP3対応済み)を用意した。地上高約5メートルの大通り沿いで窓も大きいので,十分な受信電界強度を得られると考えた。

 初期設定では,Windowsが起動するとユーティリティソフトも自動起動するようになっている。USBに端末が挿されていて,WiMAXのキャリアを検知するとそのままインターネットに接続できる。旧型機でも平均,約4Mbps程度のデータ通信速度が得られた。そして、窓から3メートル離れて,パーテーションのある部屋に移動すると,1Mbps程度にデータ通信速度は落ちた。ユーテリティーソフトの5段階表示上では,受信強度は「1から時々2」である。やはり,オフィスや鉄筋コンクリートの建物では,使用場所を考える必要があるものと考えられる。